DJ SODEYAMA 4つ打たないテクノの繊細
このミックスを聴いたとき、なんて繊細で表現豊かなんだろうと思った。冷たく固めの音を軸にモノクロで統一された感はあるけれど、音とリズムの種類が豊富。人間ついつい好みのものを選んでしまって似たようなものを多く持つが、音選びの幅の広さがミックスに反映されている。DJの聴き方楽しみ方でも例として挙げさせて頂いたように、常に細かく変化していて耳が離せない。聴くたびに発見があるので、繰り返し聴いても飽きない。
00:00 Sledge - HEXA
02:03 Sebastian Mullaert - Every Moment, I Am
04:45 Rhine - Het Meer
10:54 The Abstract Eye - The Unseen
14:50 Orbe - Visceral Terror
18:00 DJ NOBU - Wwww
21:00 Kryss Hypnowave - Pandora
22:00 Archivist and Fugal - Far Horizon (Acronym Remix)
28:15 SHXCXCHCXSH - Stämma #5
35:00 Benjamin Damage - Binary
40:20 DJ SODEYAMA - I WANNA DANCE
47:35 Developer - Infinite Numbers
53:00 DJ SODEYAMA - Test Pttrn 014
セットリスト作ってもどうせ誰も読まないだろうしなーと思いつつ、曲名洗い出してみてよかった。思ったよりも複雑に長めにマッシュアップされていた。Orbe - Visceral Terrorは、The Abstract Eye - The Unseenの曲の途中にかぶせてある。Developer - Infinite Numbers自体マッシュアップされたような曲で、その上にリズムを無視したような音が重ねてあり面白い。3月にリリースされたSODEYAMA さんのI WANNA DANCEとTest Pttrn 014は単体ではシンプルで、ミックス上ではいかに手の込んだかけかたをされているのがわかるし、SODEYAMAさんの曲の活かし方のお手本みたいなミックス。1時間かけての上げ方が自然で、最後気付いたら最初とは全く違う雰囲気に変わっていた。他のミックスでも歌ではない話し言葉が重ねてあって、選び方のセンスと載せ方の妙も聴きどころ。
最新のミックス。クラシックで始まりストリングスで終わる。Kölschのエッフェル塔でのDJもストリングスから始まっていたし、TomorrowlandでもSymphony of Unityというオーケストラが今年も出演していて、個人的にはクラシックとの融合や幅の広がりは選択肢が増えるので大歓迎。このミックスもお気に入りで、やっぱりSODEYAMAさんのこと早く書かなきゃと思わせてくれた。
Acid Jazzはジャズじゃないとか、テクノDJはこうあるべきみたいなのは、目的が見えなくて知識のマウントようのように見えて苦手。ジャンルは柔軟でありながら、DOMMUNE 「DJ Plays "電気グルーヴ" ONLY!!」出演の判断など独立性を保ち、流されない芯の強さ。
良くも悪くも自分は中途半端な音楽を作っていると思っている。ちょっと古臭い感じもあるけど、かといって今ありがちな音楽かって言われたら、そうじゃない自信がある。BPMもバラバラだし。それでもダンスミュージックとして成立していると思う。俺はDJセットで何でもプレイする感じだから、結果アルバムにも自分らしさを出せていると思う
俺はDJじゃない人にも作品を聞いてほしい。パーティーもそうだけど、DJばかりが集まるパーティーにはしたくないし、DJじゃないお客さんにもクラブに来てほしい。
単に好みの問題だけなんだろうけれど、Ellen Allien、Amelie Lens、Charlotte de Witte、どこが他のDJと違ってどの点が優れているか私にはわからない。意図していることが違うかもしれないけれど、Nina Kravizも「電子音楽には何年も新しいことは起きていない」と話している。テクノってどんなものか、有名だからといって彼女たちのDJを最初に聴いていたら嫌いになっていたかも。王道とは言えないSekitovavaさんのDJを聴いて「ほう、これがテクノか。」と思い込んでいて本当に良かった。ハードなテクノを聴いてみて「ちょっとな。」と思った人、特に女性にSODEYAMAさんやSekitovaさんののDJをお薦めしたい。テクノやハウスは今やもう多数派でもなく、更に地味テクノは少数派。初めてDJミックスを聴く人がこういうDJに出会える可能性はとても低いけれど、出会ってほしい。
女性男性と分けて話すことは時代に逆行しているように思われるかもしれない。傾向として時代に関わらず、女性が着たいと思うファッションと男性が女性に着てほしいと思うファッションは違う。音楽についても性別や年齢によって好みの傾向はあるはずだが、音楽業界は批評家等の関連業界も含め一般企業より男性社会で年功序列が残っている状況が見えてきて、聴き手がアクセスできる音楽の偏りがあったのではと考える機会が多い。音楽プロデューサー、レーベルの新人発掘担当者、イベントのブッキング担当、音楽評論家、音楽誌編集者に、実際若い女性がどのくらいいるんだろうか。
以前音楽はレコード業界のゲートキーパーによってキュレーションされていた。彼らは大抵中流階級の中年の白人男性だった。今は一般大衆によってキュレーションされている。
YouTube users can't stop streaming Latin Pop - BBC News
Billlie Eilishが最初のレコーディング契約にサインしたとき、レーベルは本物のスタジオに場所を移し、よりベテランの作曲家やプロデューサーとコラボさせようとした。彼女は楽しくなかった。「私はそれがとても嫌だった。」と彼女は言う。「昔から "大ヒット曲" を書いていたのは50歳の男性だった。最悪。『あなたは100年前にこの曲を書いたんですね。ウゲッ。』みたいな感じ。私は14歳で女の子だったので、誰も私の言うことを聞いてくれなかった。誰も関与しないOcean Eyesを作った。」
Billie Eilish and the Triumph of the Weird: Rolling Stone Cover Story – Rolling Stone
もしBilllie Eilishが大物プロデューサーと組んでいれば、今ほどのヒットはなかったかもしれない。Powder、Rosalía、Hoàng Thuỳ Linh、独立した女性プロデューサーが作った音楽は私が求めていたものだった。男性には理解されず、日の目を見ることなく消えていた音楽があるかもしれない。中年男性を敵視しているのでは決してなく、バランスが取られれば選択肢が広がり音楽を聴く人がもっと増えると思っている。
DJに関してもそう。力業で踊らせたり、理屈っぽいのが多く感じてしまう。DJって星の数ほどある音楽の中からたった数十曲だけ選び、順番考えて繋いで自分の表現をする、レゴブロック以上に無限の組み合わせがあるわけで、他の動物にはできないめちゃくちゃ知的な遊び。DJ聴くだけなら体力関係ないので一生楽しめる。女性や長時間の音楽作品に慣れ親しんでいるクラシックの愛好家にもDJをもっと聴いてみてほしい。