まさかの桃子だから桃 Powder - New Tribe

Streaming DJのことを調べていたら、DJMagの記事が一番情報が多く面白かった。楽しくなってきちゃって、他はどんな記事がと見ている中見つけたのは、日本人女性プロデューサーの話。AC部の新作としてタイムラインによく流れてきたあの曲の話だった。女性を表すのにピンクの桃?強調されたバスト、この時代に制服?正直苦手で、1回見たままでスルーしていた。
Powder - New Tribe (現時点17万6千回再生)
記事を読んでみれば、長崎県出身プロデューサー桃子さんの楽曲ために作成されたMVで、映像の主人公ハートだと思ってたは桃。なんと桃子さんだから桃だった!そしてストーリーも桃子さんのリアルな人生。

Powder’s unifying instinct | DJMag.com(2019年の記事 英語)
RA: Breaking Through: Powder(2016年の記事 日本語)
生い立ちから現在まで2つの記事の内容をまとめると、
長崎で生まれ育つ。10代の頃はDinosaur JrJamiroquaiTLCのCDを借りてカセットテープに落として聴いていた。その後、子供の頃音楽を聴く場所として憧れたCDレンタルショップでバイトを始める。当時自分のパソコンを持っておらず、市内にナイトクラブがあることも知らない。ある日客に誘われて行った隣町のライブでNo Waveに出会いはまる。バンドを始めたかったが地元には仲間がいない。自分一人で作れるダンスミュージックの制作を始める。バンド演奏の合間にプレイするDJに興味を持ち、ターンテーブルとパソコンを買う。佐世保で定期的にDJをするようになる。長崎はテクノが強かったのに対し、佐世保は disco dub/ electro clash/indie rock/deep house/euro dance/Hi-NRGが入り混じっていた。
東京でDJをしに行った際、Samo Forsbergにデモを渡したことがきっかけで、SamoのレーベルBorn FreeからEPを出し、海外でもDJをするようになる。Powderという名前にしたのは、国籍や性別が判別できないようにするためと、勤めていた会社が特殊な金属の粉を扱っていて、Powderという言葉という言葉に魅了され粉という形状も気に入っているから。

“When I started to put music out to the world, I intentionally hid who I was ? nationality, gender, everything. Not at all to promote myself as a mysterious, anonymous character, but after making many tracks and listening to them myself for a while, I got curious to see people’s reactions and to hear what they really thought about it.”

(私が世界に音楽を出し始めたとき、故意に私が誰であるかを隠しました - 国籍、性別、全部。神秘的で匿名のキャラクターとして自分を宣伝するためではなく、たくさんのトラックを作ってしばらくの間は自分で聴いた後、人々の反応を見たり本当にどう思ったか聞くことに興味があったのです。)

7年前に東京に移り住んでからは、早朝から21時頃まで残業しその後制作。

「超平凡な場所」と表現するMokoの勤務先は精密機械を取り扱う会社で、新宿のコマーシャルエリアにたたずむ超高層ビル内の43階に位置する。窓無しの部屋がMokoの所属する部署のオフィスだ。社員全てが同じ制服を着用し、職場のBGMとしてキーボードをタイプする音と電話の受け答えをする声が入り混じる。 

彼女の1日の救いは、手製のオニギリとヘッドフォンを持って中庭で過ごす昼食の時間だけだ。「ピースフルタイム」と呼ぶこの時間は、主に前夜にスタジオで作成したデモを聴く時間となっている。 

そういう人生を経てのあのMVだったんだ。もう一度MV観たら泣いてしまった。全国で頑張っているtrackmakerの人たちの顔も浮かぶ。

かずんずBAR | 事情ラジオ  #064
ゲスト:AC部 『Powderのおはなし』
「Powderさんが主役。本人が書いたものすごい文章量ライナーノーツ、自分の生い立ちとかも書いてありそれが面白くて元にして作った。」「AKIRAから始まる2000年初頭の日本のアニメがすごいと言われていた黄金期、あの頃のめちゃくちゃかっこつけた感じを引き継ぐ。退廃的な世紀末感は今観てもかっこいい。アニメ業界も角が取れてかわいい女の子が中心になってる。かっこいいアニメは主流ではなくなったがずっと続いてほしい。」

コメントを見るとAKIRAだと言ってる人が多い。作品だけで伝わってるのが凄い。

 新鮮だったのは「いつ歌が始まるのかと思いました。」みたいなコメント。映像のおかげで普段テクノを聴かない人も知らずと曝露された訳だ。Youtubeを見ながら自然と縦にリズムを取った人もいるだろう。

自分の生まれる場所・国籍・性別は選べないし、いくらRapやKPOPが流行ってもテクノDJが他ジャンルに転向するのは難しい。工夫やアイディア次第でできることを、Powderさんは背中で示してくれている気がした。

そして今日FFKT'19出演決定のニュース。昨年のTAICOCLUBでのライブミックス。1:00:00 New Tribeから最後までが特に良かった。

PitchforkのBest New Musicにも選ばれてました。

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