Live Nationの独占 経済的理由によるツアーキャンセル

今年はCoachella FestivalやJimmy Kimmel Liveにも出演を果たしたバンドLawrence。そのボーカルClydeがThe New York Timesに寄稿した記事が公開された。

Opinion | Taylor Swift’s Live Nation Issues Are Only the Beginning - The New York Times

具体的に書かれているところをかいつまむと、
チケット販売のTicketmasterとプロモーターのLive Nationは、2009年に統合し、現在はLive Nation Entertainment という同じ会社。2010年代、Live Nation Entertainmentは、プロモーターを含む多くのライブ関係企業を買収し、主要なチケット販売とライブイベント会場の市場70%を支配している。Live Nationの会場でライブをする場合、TicketmasterとLive Nationのプロモーターを使う必要がある。
Live Nationが所有する会場で30ドルのチケットを完売した場合、チケット毎のアーティストの取り分は30ドルの内、12ドル。しかし、客がTicketmaster払ったのは42ドル(記事に記載はないが、変動制による価格ではなく手数料)で、アーティスト側の取り分は客が支払った額の半分にも満たない。アーティスト側は、その12ドル分の約半分を宿泊・交通費など必要経費にもっていかれるため、利益は6ドル分となる。バンドメンバーは8人なので、その利益を8で割り、各個人はそこから自分の健康保険なども払う。Lawrenceが話した他のアーティストもだいたいこのような状況。
ライブ終了直後に、Live Nationから今回のライブはあまり儲からなかったことをほのめかす決算書が渡されるが、Ticketmasterの多額の手数料・バーの売り上げ・物品販売などが抜けており、それらはたいていLive Nationが所有する会社に渡る。Live Nationの会場でアーティストが物販をする場合、Live Nationに物販売り上げの20%を支払うのに対し、Live Nation側は、固定費として会場代を受け取った上に、人気アーティストがライブをしたことで得られたチケット手数料・バー売り上げ・手荷物預かり料・駐車料金も得るが、その一部をアーティストに支払うことはない。
ライブ後に汗まみれの衣装のまま決算書の数字とにらめっこし、時に1時間以上計算し直し、古いメールを掘り起こし、事務的ミスや食い違いについて議論した結果、一回のライブで数千ドルの差が出ることもある。
多くのミュージシャンがストリーミングサービスで配信し、注目を集めリスナーを獲得しているが、ストリーミングサービスで得られるのは1再生当たり1/3か1/2セントなので、収入の多くをツアーにより得ている。

以上のような内容。

ライブの映像を見ていると、恐らく1000人規模のライブ会場でやっている。6ドル×1000人=6000ドル(約82万円)。単純に8人で均等に割ったら、10万円/1人。1000人じゃなくて5000人規模だったとしても、そんなには変わらない。月4回もやれないだろうし、手取りじゃなくて税引き前でしょう。物販やストリーミング収入があったとしても、楽ではなさそう。Coachellaに出演したアーティストなのに。ライブツアーの採算として妥当なものなのか。

Lawrence - Don't Lose Sight (Live On Tour)

35ドルで販売しているTシャツの製造コストは13ドルで、さらに管理コストもかかっている。箱は場所代として売上の20%を得るが、これは利益の30%を上回る。

場所代を取るなとは言わないけれど、よく売れたからって場所の掃除や維持管理が大変になるものでもないから、売上に連動するのは違和感がある。しかも利益じゃなくて売上にかけてくるのは。固定が妥当では。

少し前に話題になっていたチケットの変動制については、私は肯定的で、需要があれば価格を上げてアーティストに還元するのは良いことだと思っている。チケットシステムを構築・維持管理するのにお金がかかるのは理解するけれど、確かに手数料が高すぎる気も。NY Timesの記事にあるように、問題なのは大手一社のほぼ独占により、価格や質(利便性)の競争が働かなくなってしまっていること。

Lawrenceは、実力があって、ライブでよりその魅力を発揮する。全力のライブの後、くたくたになりながら、夜中まで決算書とにらめっこし、ストレスフルなやりとりを強いられているかと思うと気の毒だ。

日本はどうなんでしょう。チケット会社はいくつかあると思うけど。チケット会社の手数料って、アーティスト側も支払っているものなのだろうか。物販の場所代を払ったり、高かったりするものなのか。

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