DJはライブペイント、聴き方楽しみ方

「DJってどう聴くの?」って言われても「音楽ってどうやって聴くの?」と同じくらい難しい。かける音楽のジャンルは様々でアニソンや民謡までもあり、さらにジャンルをミックスすることも。音楽を聴かせるというよりスクラッチとか技術を見せるスタイルもあるし、DJブースを飛び出してお客さんの顔にケーキ投げるのが人気の世界的DJだっている。

DJのミックスを聴き始めた頃、どういう風に味わえば良いかわからなくて、ルール知らずにサッカー見てるような気がしてた。好きな音楽が鳴ってて十分楽しいけど、わかればもっと面白いはず。DJは奥が深くてまだまだ入り口にいるんだろう。私の楽しみ方をシェアすることで、DJの楽しみ方を知らない音楽好きの方に少しでも知ってもらえたら。客はDJなんて聴いてねぇと思ってるかもしれないけど、私みたいな聴き方してる人もいることを伝えたい。私の楽しみ方を「その聴き方はなってない。」と怒るDJ警察がいたとしても歓迎。あなたの楽しみ方をどんどん教えてくれ。

・選曲
DJの選曲は、友達の車に乗せてもらって日頃運転しながら聴いてるお気に入り音楽を聴かせてもらう楽しさがある。「ほおぉ、そんなのを。」とニヤニヤしてしまう。
皆が知っていて踊れるヒット曲や人気アーティストの新譜を一早くかけるスタイルのDJもいるんだけど、私は知られていない良い曲をかけてくれるDJが好き。有名DJに何をかけたらよいか相談しているDJの方もいて驚く。かけたい曲がいっぱいあるからDJやってるんじゃないんだ。DJのために探すんじゃなくて、digせずにはいられない人は良い曲かける。有名無名/既存の評価/新旧関係なくフラットな視点でdigしてる人、その人が探し当ててかける1曲1曲はかけがえのないもので、大切に聴いている。
80年代のアイドル曲/日本のジャズ/7inchのシングルレコードのみ等、ジャンル/年代/媒体/国など様々な選曲の"しばり"があると、普段はあまりかからない曲が選ばれ、思いもよらない素敵な曲に出会えることがある。音楽の知識があると楽しめる選曲をされている方もいて、沖野修也さんの場合、楽器の演奏者が同じ曲や同じレーベルから出している人の曲を選ぶことがあるそう。クイズや暗号みたいね。一方で音楽の良さは、子供や障害により知識を得られない人も文化や言語も超えて一緒に楽しめることだと思っているので、知識がなくても楽しめるミックスも尊い
私は友達の曲をかけないDJが好き。世界中の音楽の中からその日のDJに最適と判断して選ぶんだったらいいけど、その後もずっとかけ続けていないということはそうではないのだと思う。DJミックスは芸術作品だと思っているので、そこに宣伝要素が入るのは好きじゃない。
世界の祭りをテーマにしたSEKITOVAさんのDJは楽しかったな。大舞台でなくてもその日のためにテーマを決めて選曲しエディットまで作る。そこまでしてくれるDJはなかなかいない。

・繋ぎ
私が最初にDJをDJと意識して聴き出したのはtofubeatsさんで、DJではないけれどin the blue shirt アリムラさんのライブミックスも熱心に聴いていた。お二人ともマッシュアップがめちゃくちゃ上手い。アボカドと醤油でトロの味がするみたいに、意外な組み合わせで別物を作ってしまえる名手。最初がそれだったので、繋ぎこそがDJの腕の見せ所だと思っていた。繋がないスタイルがあると知ったときは驚いた。JPOP/アニソン/ラテンの歌もの等はイントロから最後まで聴きたいお客さんががいるかららしい。このDJさんはどうやって繋ぐのかなぁとブースににじり寄って行ったら、スーッと音量絞ってフェードアウトさせた後次の曲の音量をじわっと上げて始まってしまって、何だか気まずかった。
toward morningとInner Blueのマッシュアップ

 川西卓さんのレクチャーで、同じ楽器や音色を繋ぐという技も知った。小西康陽さんの技、ラムのラブソングのサビをクリスタルキングの大都会で置き換え。繋ぎでこんなに人を笑わせるなんて凄い。

 シームレスに繋ぐだけではなく、音数も音量も最大限に盛り上がった後、逆に少ない音で静かなイントロを持ってきてメリハリをつける井上和洋さんのDJも好き。接続面がものすごくシャープだからこそ。(39:00あたりから)

・長さ
テクノやハウスは繰り返しの音楽なので、同じ繰り返しが気持ちよくなりかけたところで終わったり、逆に長過ぎると退屈。感覚がピタッとあうDJのミックスはあっという間に感じる。
DJ SODEYAMAさんのこういうの聴いてしまうと、単調な繰り返しが長く続くDJが聴けなくなってしまう。1時間があっという間だし、何十回も聴いてるけどまだ飽きない。

・構成(順番、時間配分、ピーク)
このあたりのセオリーを語るDJや説明された文章は見たことがなくて、懐石料理に例えてみたこともあるんだけどあながち間違ってなかったと思う。私が物心ついたころ家にあったのが有名な曲だけを集めたクラシック全集のレコードで、ダイニングの椅子に上って順番にかけていた気がする。交響曲とかって、フルートだけで凄い静かだったりオーケストラの楽器ほぼ鳴りまくって賑やかだったり物語のように抑揚がある。90分以上のDJミックスは特に、交響曲を聴いたり小説を読むのに近い感じで構成を楽しんでる。テクノやハウスは静かに始まって徐々に上げていくスタイルが多い。ELLI ARAKAWAさんは2時間かけてじっくり上げている。見事に右上がりの曲線。じわじわと徐々に上げるには、スキルのみならず忍耐も必要なのでは。

2つ3つのジャンル横断ならそれぞれのジャンルで盛り上がりのピークがあってもいいかもしれないし、地味なテクノで始まって派手なジャズで締めるなんてのもあるのかもしれない。
若手でハウスの上手いDJはごろごろいらっしゃるんだけど、プレイ時間が1時間以下のイベントが多いからか、BPM高めで一気に駆け抜ける感じの方が多い印象。BPMの違いで濃淡がつけられる人は上手いなぁと思う。

・見た目(動き、服装)
私はVinyl DJを見るのが大好き。茶道のように一つ一つの動きに美を感じる。レコードの扱い方はその人のレコードへ愛が出る。針を落とす場所、BPMを変えるのも目に見える。シャシャシャってレコードを選んだり、かける予定のレコードを飛び出させておいたり、特にかけてる曲のジャケットをブースの前に刺してくれるの、あれすごく気持ちが上がる。
私はDJに派手なパフォーマンスは求めてない。でもこの動画見ると楽しくて元気湧いてくる。okadadaさんのこういうDJ、たまにでいいからまた見れたらいいな。

スーツDJと言えば、BUDDHAHOUSEさん(この動画久しぶりに観た。)、白スーツのDJ EVANGELIONさん。

 スーツDJの新星、Leo Gabrielさん。

男性の和装DJも素敵だった。DJが良ければ服装は何でもいいんだけど、DJに対する気合やお客さんに対する姿勢の表れだと思っているので、敬意を払いたい。

DJが凄いのはこれらを現場でやっていること。以前DJを板前に例えたがライブペイントの方が伝わり易いかな。事前に構図は考え材料は用意するが、お客さんの熱も取り込みながらその場で作品を完成させる。DJ/お客さん/場所、全てが同じことは二度とない。完全に再現されることはない。お客さんの感動と高揚感、時として温かな幸福感が溢れるフロアの空気を思い出しちゃった。また体感できるといいな。

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