DJは、懐石料理の板前みたいなものかと

DJ mixを聴くようになった。というより、たまに自分の好きな曲単体で聴くくらいで、最近はDJ mixばかり聴いている。

DJなんて、シュワーって音入れたり、スクラッチしたり、踊れるようにピッチ上げたり、原曲を汚してるくらいにさえ、思っていた時期もある。海外の有名DJのremix聴いても、良さがさっぱりわからなかった。海外のDJのストリーミング、Mixcloudで、気に入ったものがないか探してみたりもしたけれど、見つからなかった。ネットに転がっていたokadadaさんのをDJを聴いたときも、「なるほど、これがUSTで2000人集めた伝説の」とまでは感じることはできなかった。

2016年12月のLost Decade 9に行ったMiiiさんが、okadadaさんがかけた曲として、Crackazat - Somewhere Elseをツイートしていた。こんな曲もあるんだと、とても気に入ってずっと聴いていた。Lost Decadeの動画も上がって、okadadaさんのDJを通しで聴くことができた。なるほど、めちゃくちゃ良い。全部いい曲だなと思って、1曲1曲、なんという曲か調べた。ところが、1曲ずつ単体で聴くと、何か物足りなくて、DJセットで聴いたときの輝きがなくなってしまう。ハウスの曲は、クラブDJでかかること前提で作られてていて、単体で聴くものではなかったからかもしれないけれど、単体との聴き比べをするようになって、DJセットで聴いた方が、ずっと魅力のある曲に聴こえることがあることを実感できた。

リリースされる音源は、曲の作り方も、レコーディングもマスタリングもこだわって、最高の状態で出荷されているはず。塩も醤油もつけなくても、そのままで、おいしく食べられる状態と思っている。DJで音をさわるのは、生でおいしく食べられるものを、焼いたり、たっぷり醤油をかけるようなものだと思っていた。腕の良いDJというのは、一般に知られていないような珍しい素材も仕入れ、素材の味が生きるように調理し、美しく器に盛りつけ、客の状況を見ながら、最も美味しく食べられる順に出してくれる板前さんみたいなものだと思えるようになった。

音楽や絵画の価値は、一人一人が体感して気持ち良いか、そうでないかが全てで、解釈を聞いてから変わるような評価は偽物だと思っている。その一方、ちょっとした"よく聴かせるための技術"を知ると、聴き方が変わって、何倍も楽しめることもある。自発的に知ってこそ楽しいものだと思うけれど、DJの人も、今日のDJプレイはこんなことしてみたんだけどって、ちょこっと教えてくれると、より楽しめる人が増えるんじゃないかと思った。食べ終わった後に、板前さんがこっそり隠し味を教えてくれるように。それは客を甘やかすことにはならないんじゃないかと。転換DJとか、DJをBGMをかける人だと思っている人がいるのは残念だけれど事実。DJの価値を見せつけるだけの力と、加えて、価値をわかってもらうための少しばかりの働きかけは、あってもいいのかなと思う。簡単に曲は検索できるようになったけれど、ミックスしてあったり、データベースになかったりで、検索できないこともある。踊ることを楽しみたいときもある。なので、個人的には、セットリストが提供されるとうれしい。出会うことができた素敵な曲を、帰った後も楽しむことができる。


気持ちよく踊っているときは、この曲のつなぎ方がどうとかまで聴けないし、それより踊りたいから、じっくり聴き直して、何度も味わえるアーカイブは本当にありがたい。そんなことを考えていたら、こんなインタビュー記事が出て、アーカイブ動画の録音方法や公開している目的が。

記事を読む前に、Lost Decade 10の動画を見ていて、WHAT YOU GOTのところで、オーディエンスの歓声が入っていることに気が付いていた。マイクで録音してるにしては、音楽の音がクリアと思っていたら、tofubeatsさんのコメントが。「ミックスしてます。」って、さすが"アーカイブおじさん"のこだわりは、半端ではない。

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