Rosalía 『Hentai』女性主導女性目線のセックス観 全裸監督

『Hentai』というタイトルと、リリース前に公開された部分の歌詞のわからなさから、最も警戒して臨んだ曲だったが、愛に溢れた美しいバラードだった。エロというと身構えてしまうが、男性向けポルノとは正反対の女性観点のセックス観。共感し、安心して身を委ねることができる。カルチャーや娯楽作品における女性のセクシーの評価軸がいかに男性に求められるかであるのに対し、『Hentai』では、自分が主体性と主導権を持ち、どうしたいという欲望が歌詞表現されている。男性を悦ばせるために奉仕するのとは違う。女性がセックスを描くとこうなるのかという衝撃と、それを味わったことで、今までの性表現がいかに男性目線かということが相対的に認識できた。歌詞全てが実体験に基づくものではないとしても、Rauw Alejandroとの関係が良好でなければ、こういった愛に溢れた歌を書く気になれないはず。ちなみに『Hentai』は、Rosalíaのお母さんのお気に入りの曲の1つでもある。

ROSALÍA - HENTAI 

『Motomami』のテーマは、強さと女性らしさの二面性。『Hentai』では、ディズニーのような優美なバラードと、本人曰く過激な歌詞という相対するものを組み合わせている。音の面でも、優しいピアノとRosalíaの歌声に、後半荒々しい機関銃の銃声を加わる。機関銃の音は、なんとレゲトンドラムで再現されている。通常はレゲトンビートを刻むクラシックなレゲトンドラムの音を、思いもよらぬ斬新な使い方をしている。
機関銃の銃声で表現するのは、女性側で感じるオルガズム。吐息でも喘ぎ声でもなく、銃声で。銃声のビートの間隔と波のように寄せては返す強弱の波が、正にオルガズム。『Hentai』を聴いていて、それがわかりハッとした。体験したことのある女性だけが気づき、共感できること。

歌詞には、セクシュアリティや官能性についての皮肉で生々しい話もたくさんあります。 Lil' Kimは長い間ありのままの歌詞を作り、ビョークはインスピレーションを与える曲を作りました…セクシュアリティは人生の一部だと思います。それについて曲を作るのはとても自然なことです。 そして、誰かのためでなければ、それに慣れなければいけないでしょう。女性は常にかわいくフェミニンなことだけを歌にするのではなく、作りたいものを作るからです。

Rosalía, en exclusiva con Teleshow: “Se tendrán que acostumbrar a que las mujeres hagan canciones de lo que les apetezca” - Infobae

主に男性目線のポルノを指す『Hentai』という言葉をタイトルに持ってきて、中身は思い切り女性目線にするというアイロニー

Rosalíaは、『Hentai』を作りにあたり影響を受けた曲として、Lil' Kim『Magic Stick』やBjörk『Venus As A Boy』等を挙げている。

🦋❤️🏍INSPO$ MOTOMAMI🏍❤️🦋 - playlist by ROSALÍA | Spotify

『Motomami』は2020年頃に制作されている。Rosalíaは日本のドラマ『全裸監督』がお気に召したようで、2020年7月に、黒木香のシーンをインスタ ストーリーズでシェアしていた。日本では黒木香さんの同意なくドラマ化されたことが議論となっており、Rosalíaを含め世界的に消費されていることを残念に思っていた。
ドラマは見ていないので、トレーラー映像から。
「わたくしは、日本の風潮に問題があると思っております。女性から欲してもいいと思っております。」

『Hentai』は、女性主導で女性目線のセックス観であり、女性の欲求を描いている。2年近くを経て、繋がった。

“Moto in Japanese means harder. Mami the figure of the mother, women as a power of creation, as a creative force, ”she said.
「Moto(もと)は日本語で、harderを意味します。Mamiは、創造力としての女性や母親の象徴です。」と彼女は述べます。

Rosalía brings together the duality of women in 'Motomami' - El Americano

「もっと」は「more」で「hard」の意味は含まないのだけど、「Rosalía、何言ってんだ?」と引っかかっていた。『全裸監督』のことを思い出し、謎が解けた。確かに、『全裸監督』の「もっともっともっと」は、「harder(もっと激しく), harder, harder」だ。

ラテンガールズグループANGEL22によるアカペラカバー。

 
 
 
 
 
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やはりコーラスの合間の空白の間が効いている。一言一言重みをもって話されるスピーチのよう。Frank Sinatra『My Way』と同じ手法。Rosalíaは一緒に制作をしたPharrell Williamsに、若干Frank Sinatraに影響を受けた歌を作りたいと話した。通常、カンテ フラメンコでは長い間を設けないが、Rosalíaは作曲家として違うことをしたいと思い取り入れた。

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