Coachella 2022 wk1 配信視聴メモ (The Hu、88rising、Rina Sawayama、Pabllo Vittar、Stromae、きゃりーぱみゅぱみゅ)
The Hu
初日チャンネル2での最初の配信は、モンゴルのロックバンドThe Hu。ホーミーや馬頭琴を取り入れたロックで、音楽だけではなく視覚的にもモンゴル文化が取り入れられていた。
ホーミーって、言わばヒューマンビートボックスなのね。
今回のCoachella、PAが上手くいっていなさそうな場面が何回かあって、最初は馬頭琴の音がほとんど聴こえなかったが、途中から改善された気がした。オレンジの服の方が、ホーミーと馬頭琴を担当されているようで、特にかっこよかった。
俺たちのバンド名は決してイギリスのザ・フーから取ったものではないんだ。もちろん同名のバンドがいることは知っていたけど、それ以前にTHE HUというバンド名に託したいメッセージがあったんだ。“hu”とはモンゴル語で“人間”という意味だ。知性を持った人間すべてを指しているんだ。偶然だけど、英語でも人間のことを“hu”manと呼ぶだろ? あらゆる人間を結びつける音楽をやりたくて、この名前を付けたんだよ。
The HUが語るモンゴルの誇り、伝統とモダンの融合、BABYMETALへのシンパシー | Rolling Stone Japan(ローリングストーン ジャパン)
来日前のTHE HU 日本語でメッセージ
88rising
楽しみにしていたMILLLI、一瞬たりとも目を離すことができない濃密なパフォーマンスだった。期待を大きく上回り、また一段と好きになった。まだ19歳でまだそれほど海外公演の経験も少ないはずのに、ベテランのアーティストもひるむ大舞台で、観客から目をそらすどころか、Doja Cat並みの目力。ソウルフルな歌・高速ラップ・ダンス、いずれも間違いなく上手い、そのことが確認できたパフォーマンスだった。
BIBIは口パクが下手過ぎて見ていられなかったが、韓国の女性ラッパーレジェンド윤미래(ユン・ミレ)が出てきて、気持ちが上がった。生でラップできるのに、慣れない口パクをやらされた結果、口パク失敗していてかわいそうだった。
queen yoon mirae. that’s it. that’s the tweet.#88rising #88risingCoachella pic.twitter.com/b88ITbMdBy
— jay 🥡 (@krnbhhours) 2022年4月17日
윤미래(ユン・ミレ)は、韓国における女性ラッパーの先駆けで、日本での活動名TASHAで、2002年にDJ HASEBE・DOUBLE・SAKURAが参加するアルバムをリリースしている。
そして、宇多田ヒカル。顔見せ程度、ちょろっと歌うだけだと思っていたので、『First Love』と『Automatic』が聴けるなんて夢にも思わなかった。宇多田ヒカルのアメリカ進出には、相当な人が関わってお金もかかっていたはずで、それでも今のKPOPブームには及ばずだった。その当時の歌を、今アメリカの巨大フェスで歌っている。現在の実力で勝ち取った場ではないが、昔描いていた夢が違う形で叶ったかのような感動。90年代のブラックミュージックにどっぷりはまり、そういう耳を持ったリスナーが、これなら本場アメリカでも通用すると認め、自分たちの国のR&Bだと誇りに思えたのが『Automatic』。そして、『First Love』はソウルバラード。
Rich BrianはCoachellaのインタビューで、子供のころアメリカで成功するインドネシア人俳優に憧れ、自分もそうなりたいと嫉妬したから、今度は画面の向こうにいる当時の自分と同じような子供たちに、アジア人アーティストが活躍しているのを見せたいというようなことを力強く語っていた。そういう大事な場で、宇多田ヒカルやユン・ミレを出してくれたのは、結果は失敗であっても過去のアジア系の先人の挑戦を認めてくれたからのような気がした。88risingはヒップホップが核なので、『First Love』と『Automatic』がセトリに入るのは自然だと思う。宇多田ヒカルの『First Love』は中国でも聴かれていたし、Karol Gが、1950年代から過去の世界的なラテンヒット曲を流して振り返る演出をやっていて(Gloria Estefan、Miami Sound Machine『Conga』で小さな女の子が踊るなど)、それの超簡易版という受け取り方をした。90年代2000年代前半の曲は、今のティーンにとっては両親が好きで子供のころ聴かされた曲だったりする。レトロなものとして当時の音楽要素を上手く取り入れてくれているアーティストも少なくない。宇多田ヒカル、ユン・ミレとMILLIはちょうど20歳差。
『First Love』って、松嶋菜々子が女性教師役で、滝沢秀明が男子高校生役の教師と生徒の禁断の愛を描いたドラマの主題歌、当時の女子高生や若い女性の失恋ソングだった。日本が誇れるR&Bシンガーや、若い女性の共感ソングを歌ってくれる存在が、いつのまにかオタクの方々の中で神格化されてしまって、何をしても特別な意味に解釈される感じが、実は今までちょっとしんどかった。今回のCoachellaでも音をはずしたら「あの子は、大きな会場は苦手だから(スタジオでは上手いです)」みたいなフォローが入るとか。ソングライターやDTMできる女性はいくらでもいるし、宇多田ヒカルのやっていることを他のアーティストは本当にやっていないのか、宇多田ヒカルの名前がついていなくても、本当に同じように評価したのかなと。宇多田ヒカルは誰のものでもないけれど、あの2曲を歌ってくれたことは、一時でも私たちの宇多田ヒカルを返してもらえたような気持ちだった。
88risingのステージは、Weekend1と同じでいくのか、入れ替えるのか。入れ替えなら、Double HAPPINESSの出演者からではと予想。2か月前という直近の88risingの推しのラインナップになっているはずだから。WOOSUNG出演しないかな。
Rina Sawayama
ちょっと覗くだけのつもりが、巻き戻して全部観た。Rina Sawayama、イギリス育ちなのになぜか日本語っぽい平たい英語の発音、Soul/R&B好きからすると地声の発声が、どうしても苦手で、曲自体をよく聴いていなかった。(Rita Oraみたいな発声が、自分の中では歌の上手い人なので。)今回Rina Sawayamaのライブを観てみて、ミュージックビデオよりライブの方だと思った。まず、MCが上手い。単に「コーチェラ」と叫んだり「楽しんでますか?」と問いかけるのはなく、自然と次の曲に入り込める内容を話す。
Rina SawayamaのCoachella最高だった…。私も「I'm gonna love myself! Cause I don't need anybody else!」ってコールしたいし、「SAY!!GAY!!」 コールからの竹内まりや『PLASTIC LOVE』イントロオマージュで自身のカミングアウトソング『Cherry』に入るの最高すぎた…リナの日本公演待ってます😭🙌 pic.twitter.com/ua5Az4XSaL
— azami⁷💐 (@shirominnn) 2022年4月17日
SAY! GAY! SLAY! SLAY! #RinaSawayama pic.twitter.com/YCXvuEeTD8
— Butt Muncher (@kojiro_joestar) 2022年4月17日
Are any members of LGBTQ community?
Are any members of LGBTQ community here?
LGBTQの人はここにいますか?
You know, I'm very proud of queer, Japanese, British and Asian.
ご存じの通り、私はクィアで、日本人で、イギリス人で、アジア人であることをとても誇りに思っています。
Recently there’s been some not so slay legislature.
最近、あまりイケてない州議会が存在しつつあります。
Legislature, not slayture.
Targeted queer and trans people in this country.
この国のクィアやトランスの人々に的を絞った
Some reasons they don't want us to say the word "gay".
彼らは私たちに「ゲイ」と言わせたくない理由が
Do you think we should tell that word and think about that?
私たちはその言葉を口に出して、それについて考えるべきだと思いませんか?
So when I say "Say", you say "gay".
だから、私が「Say(セイ)」と言ったら、「ゲイ」と言って。
通称「ゲイと言ってはいけない」法案反対のメッセージを、こんな楽しいやり方で伝え、聴衆を巻き込むなんて。これがRina Sawayamaかと、興奮した。
反対派はこの法案を、「ゲイと言ってはいけない」法案と呼び、LGBTの当事者やこの問題に烙印(らくいん)を押すことになると警告している。
'Don't Say Gay': Biden denounces 'hateful' new Florida bill - BBC News
Coachellaのライブ前から唯一好きだった『STFU!』は、女性ギタリストの方の生演奏が聴けて満足。
ミュージックビデオがよくわからなくて食わず嫌いしていた『Bad Friend』の美しさが、ライブを聴いて理解できた。
Rina Sawayama - Bad Friend
発音と発声が苦手だった『LUCID』も、DJも出演するCoachellaにぴったりはまっていて好きになった。普通に話しているときは、イギリス英語なので、歌うときはわざと日本語訛りっぽく歌っているのかも。
Rina Sawayama - LUCID (Extended Reality Video)
最後、バンドメンバーも紹介していてよかった。
Pabllo Vittar
ドラァグクイーンとして初めてラテングラミー賞にノミネートされたPabllo Vittar。MCによると、PablloがCoachellaに出演する最初のドラァグクイーンがとなるらしい。
Lollapaloozaでは、ダンス系は口パクのアーティストもいる中、アクロバティックな激しいダンスを踊りながら、ハイトーンで最初から最後まで歌いきっていた。喉も体も鍛えているとして、とんでもない身体能力。
Coachellaでは、緊張からなのか、Lollapaloozaチリ/アルゼンチン/ブラジルと終えた後のツアー疲れか、Lollapaloozaの映像と比べると声が出ていなかった。
Coachellaの直前に、Rina Sawayamaとのコラボ曲をリリース。ということは、ステージでも?と期待していたが、当たり。カメラが、ステージ脇のRina Sawayamaを見つけて興奮する聴衆を見つけ、映像を抜いて飛び切りの笑顔を配信したのが良かった。Rina Sawayamaは、やはりライブの人。この曲は、Rina Sawayam色が強くていまひとつだと思っていたが、ライブで聴くとまた印象が変わった。ブラジル拠点南米中心のPabllo Vittarと、イギリス拠点のRina Sawayamaが共演できるのは、Coachellaならでは。ドラァグクイーンの方の一部には、女性に対して対抗意識を持つような発言をする人がいるが、Pabllo Vittarの表現にはそういうものを感じなくて良い。
Pabllo Vittar - Follow Me - Live at Coachella 2022
(仕込みの俳優さんじゃないのと疑ってしまうくらい、観客がRIna Sawayamaを見つけた時の歓喜の表情を、カメラがきれいに抜く。)
最後は側転や開脚で着地したりアクロバティックに動いた後、ステージに倒れこんで泣いていた。パワフルで隙のないパフォーマンスと対象的で、かわいかった。
Stromae
巻き戻して、合計2回観た。自分をキャラクター化したアニメ映像、暗闇を生かした照明と自然をモチーフとした神々しいVJ映像も組み合わせなど、コンセプチュアルで芸術的だった。ロボットの犬に上着を持ってこさせたり、リモコンで動くソファに乗ったり、テクノロジー好きというよりはマシン好きが視覚化されていた。『Fils de joie』のオリジナルアニメVJが軍隊の行進で、この状況下でそれはどうかと思っていたが、持っているのは銃ではなく傘にしてあった。
歌はもちろん生歌。途中MCは挟むものの、基本くずさずCDのように正確に歌う。ユーモアのあるダンスを交えながらで、歌声には穏やかで温かみがある。大観衆を目の前にしても落ち着きつつ、控えめではあるが、その表情からはブランクを経てからの復帰の喜びが読み取れた。
バンドメンバーの紹介は、どのアーティストより丁寧で、サウンドエンジニア、映像、衣装の方の名前まで紹介していた。もちろん、ヨシ・マスダさんも。
きゃりーぱみゅぱみゅ
ベストヒットメドレーみたいなセトリで、意外と楽しめた。『ふりそでーしょん』が入っていたら私にとっては完璧。「きゃりーぱみゅぱみゅ」というよりは、中田ヤスタカが透けて見える。Perfumeに続いてきゃりーぱみゅぱみゅをブッキングって、絶対中田ヤスタカが好きでしょう?だったら、バックDJで出演くれたらいいのに。全身タイツでカラフルなウィッグのダンサーの方は、Tempura Kidzだったらと熱いな思ったが、違ったようだ。ステージセットも、増田セバスチャンじゃなかったのかな。Stromaeのように、チームを紹介するのは、やはり良いこと。
Kim Petras
最近のパフォーマンス映像を観ていると、テレビや授賞式で1曲披露するだけでも、息切れして苦しそうだった。Coachellaでも、歌は息切れし、ダンスも動けていないし、動きが雑。ダンサーのレベルが高いから余計に目立つ。生歌で歌おうとするのは評価するけど、プロの仕事としては残念。健康問題とかでないといいのだけど。
ちらっと覗きはしたMåneskin、良さそうだったのに、他のアクトでお腹一杯になって見るのを忘れていた。今週末配信があったら見てみよう。
"Free Ukraine, Fuxk Putin".
— ヨシダコウヘイ (@tele1962) 2022年4月18日
ManeskinのDamiano David、ラスト曲の前にチャップリン『独裁者』を引用、
「独裁者が消え失せれば、平和が訪れる。君たちは機械じゃなく心ある人間だ。傷つけ合うのでなく共に助け合おう」
と訴え、最高にHARDなROCKをブチこんだ。#Coachella pic.twitter.com/t9sBD5xK7i