Akiko Nakayama 中山晃子 MNF in JOIN ALIVE DOMMUNE

DOMMUNEで北海道から生配信された、中山晃子氏のライブパフォーマンスが素晴らしかった。絵の具を流していく様子を映像にして、タカハシクニユキ氏のマシンライブの背景にVJとして流すというもの。液体を流すパフォーマンスくらいにしか認識していなかったが、想像を超える面白さと美しさだった。

パターンが多い
何か所かに色を置いて徐々に混じっていくだけと思い込んでいたが、パターンの多さに驚き。まず泡がある。液体が水と油のように撥き合ったり逆に浸透したり、通路の間を流れ固形物が漂う。(下の動画は5月のパフォーマンス)

 色鮮やか
実際の絵の具の色数は少なく、混じることで多く見えるのかもしれないが、目にしている色の数が多い。グリッターが混じった粘度の高そうな液体もあった。下手に混じると汚くなってしまいそうだが、どの瞬間を切り取っても何か月もかけて色を重ねて描いた絵画のように美しい。白っぽい黄色地に鮮やかな色が点在する様はクリムトの絵の一部を想起させた。油絵のようにバランスを見て加えることはできず、落とした液体は瞬時に動くので吸い取ってやり直しできない。それをスポイトでコントロール。カメラの映像が引いたとき、どれほど小さな面積で起こってる現象を見ていたかわかって驚いた。とても繊細なアート。サカナクションのアルバム『834.194』のジャケットをイメージしただろう青に、DOMMUNEで視聴していた魚民も沸いた。

気持ちよさ
子供の頃、澄んだしょうゆラーメンのスープに浮かぶ油をお箸で繋げるのが好きだった。泡が弾ける瞬間を待つのはワクワクするし、水が流れているのを見ているのは気持ちがいい。流しそうめん、みんな好きでしょ。浸透圧で一瞬で吸収された黒い液体が、樹木のような形を描くところが特に気持ちよかった。

流体力学スペクタクル
乳化はあったかもしれないけれど、化学反応ではなく流体力学のスペクタクル。界面張力、泡の粘弾性、液体の粘性・比重、浮力、浸透圧、画面の中でいろんな現象起こりまくってる。物理の法則に従って物質が動いているだけなのに、時々生き物のように意表を突いた動きをする。スポイトで勢いよく液体を噴射したり傾けてダイナミックな変化を起こす。

CGでは困難
地球上の海流の動きや雲の動きのシミュレーション動画はよく見る。液体の粘性・比重、界面張力等の情報を入力して、液体の動きをシミュレーションすることは可能だと思う。ただ膨大な時間とお金がかかるのでは。スポイトから押し出す微妙な力加減と液量、液体と会場の気温差、鼻息・風、パラメータが多過ぎる。中山晃子氏ももちろんコンピュータのように予測されているのではないのだろう。落とす1滴1滴はあてずっぽうではなく、ある程度先の先まで予測しておられるのだと推測する。でなければどの場面を切り取っても美しくはできないと思う。(下の動画はCG)

透明感のある映像だったで、OHP方式でガラス板を下から照らしていると思っていたけれど、上からの照らしているだけなのか。風も送ってるんだ。time-based mediaを日本に根付かせたいという美術手帖のオンライン記事を読んだばかりだったが、中山晃子氏のパフォーマンスは後半に向かって絵が完成していくライブペインティングでもなく、演劇よりもさらに再現性がないその時限りの芸術。儚く、それが故により一層美しく感じる。
タカハシクニユキ氏のマシンライブも私得で、TR-808らしきリズムマシン(必死に目を凝らし耳を澄ませたが私の知識では特定には至らず)をその場での打ち込みで良い音を鳴らし、映像も伴って大興奮だった。サカナクションの山口一郎氏も登場し『サンプル』『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』を披露。一郎氏の「(バッハの)旋律を」の歌声を、タカハシ氏がその場でサンプリングしてループ。NFは魚民の方たちにクラブミュージックの良さをわかってもらおうという目的もあったと思うので、タカハシ氏がどれだけ面白いことをやっているかの解説があっても良かったかも。(私が詳しく知りたいだけですが。)

本来北海道しかも山頂までいかなければ見れないライブを見せてもらえて、DOMMUNEに感謝。DOMMUNEは興味の幅を広げてくれるので以前は毎日のように観ていたんだけど、実は最近ほとんど観なくなっていた。日本人の若手DJが出演しないし、昔話で内輪で盛り上がる、対立を煽る、未来の話をしない番組が多い気がして。(無料で配信するにはスポンサーが必要で、番組自体がプロモーションであることはよく理解している。)今回のような内容をドーンと気前よく配信してくれる放送局があって、貧富関わらず芸術に触れることができる意味はきっと大きい。f:id:senotic:20190716011813j:plain

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