『あいちトリエンナーレ』 別の見方で

『あいちトリエンナーレ』や『表現の不自由展・その後』の議論は、少女像や検閲に関する内容が多いように感じている。私は別の観点で見ていて、キュレーションや特にガバナンスの方について理解を深めることができるとても良い事例だと思っている。

『あいちトリエンナーレ』に関して最も課題だと思っているのは、芸術に関する専門知識がない津田大介氏が、多くの作品を自分で選びその作品に関係する人に税金が支払われ、それにより選ばれなかった作品があること。例えばもし、百田尚樹氏が芸術監督で、芸術の専門家であるキュレーターが選んだ作品を却下し、日本を賛美する作品ばかり選んだとする。自分や自分の応援するアーティストの作品がキュレーターには選ばれていながら、監督のお気に入り作品を展示するために外されていたとしたら?代わりに日の丸や特攻隊を称賛するような映像作品、それも芸術性が評価されていない作品が展示されていたらどうだろう。芸術監督が自分のお気に入りアーティストを選んで、金額の大きさの問題ではなくそこに税金が流せたのだから、それは大きな問題だと思う。

津田大介氏のインタビューと検証委員会の中間報告を見ていく。

アップリンク 浅井隆氏による津田大介芸術監督へのインタビュー

あいちトリエンナーレ津田大介芸術監督インタビュー|平和の少女像問題、そして「組織化したテロに屈した」という発言の真意語る - 骰子の眼 - webDICE

──ということは、津田さんから「こういうアーティストを入れたい」ということをキュレーターたちに言ったのですか?
津田:実際にキュレーター会議で推薦もしています。美術展の66作家いるなかで、3分の1弱は僕がキュレーター会議で推薦したアーティストですね。その後キュレーターに割り当てられたアーティストもいますし、僕が直轄でやっているアーティストもいます。

──具体的には、どのアーティストなのですか?
※津田氏の校正により19名の作家名を削除

津田:これは強調しておきたいですが、僕は2015年の不自由展を見て感動したんです。アートに興味を持っていたけれど、ジャーナリズムとアートの交差点がここにあると思った。

──では、大浦信行さんの作品「遠近を抱えて」については、僕は映像作品「遠近を抱えてPartII」を見ていないですが、これだけ新作ということですよね。これも、キュレーションがブレているのではないかと感じました。
津田:キュレーションの問題として、その批判は受け止めざるを得ないですね。

津田:大浦さんは「ふたつで完結するものだ」と強く主張され、それを不自由展側が了解して、僕も了解したという流れです。この判断が正しかったのかどうかは、僕もわかりません。

──お聞きしても詭弁ですよね。新しい映像作品では天皇陛下の写真が焼かれているのですか?
津田:大浦さんが自作の版画を燃やして、灰になったのを踏みつけています。

【補足】
『表現の不自由展・その後』のコンセプトは「新たに公立美術館などで展示不許可になった作品を、同様に不許可になった理由とともに展示する。」と作品説明にある。新作は展示不許可になっていないのでこのコンセプトに反する。

津田:「表現の不自由展・その後」参加の中垣克久さんが怒ってしまったんです。中垣さんと直接電話で話したら「自分は不自由展から呼ばれてあいちトリエンナーレに参加すると言っているのに、トリエンナーレのホームページに名前がない。自分が一作家としてまったく尊重されていない」、さらには「自分が作っているのはファインアートであるけれど、少女像はファインアートではない。それと並べられることに不満がある」とおっしゃっていました。

──世界的な問題になっているなか、1600円の入場料だとして、作家が1割いなくなって見られなくなったとしたら、値段を安くするとか払い戻しという話になりますが、入場料はどうするのですか?

──前売券を買っている人には対処しなければだめだと思う。でもこれからチケットを買う人には、この展示がないことを了承してもらったうえで、その値段で買うか、買わないかなので。展示作家の中止・中断が発表されているので、トリエンナーレ自体が壊れていっていますよね。そのような展示がどう変わったかも美術手帖のサイトでしかわからない。公式のサイトでは触れていない。

あいちトリエンナーレのあり方検証委員会 中間報告

あいちトリエンナーレのあり方検証委員会 中間報告 - 愛知県

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社長が自分のお気に入り企業と勝手に交渉して、自分のポケットマネーで支援し、何かあったら自分が責任取るからと保証して契約。仕様変更をお願いしたけれど、緩い契約にしてしまっていたので拒否られ、相手の要求を飲む。上場企業だったら考えられないし、それを公金を使った事業でやれてしまう。自分を早稲田大学教授に推薦してくれた東浩紀氏をアドバイザーにしたり、ゲンロン カオス*ラウンジ新芸術校の方の作品が選ぶこともできた。芸術やデザインの世界は数字で評価できないので、親しい人を選ぶのはよくある話なのかもしれないけれど。『表現の不自由展・その後』実行委員会は芸術家ではなく活動家なのに、そこに税金が渡ってしまってるのもいいんだろうか。右翼の活動家に税金が流れていたら、左派の人怒ってたんじゃない?

「文化を殺すな」の署名をした人は、中間報告書は読んだのかな。今回問題になって注目されたから色々明らかになったが、公的な芸術祭や文化芸術活動への資金援助施策はたくさんあり、おかしなところにも税金が流れ、本当に評価されるべき芸術家の多くが生活するのにも苦労しているのかも。

天皇像をアートにすることを誰も議論しないというようなことを東浩紀氏もつぶやいていた。多くの人が同じ切り口でしかこの件を議論していないこと、例えばちょっと検索すれば出てくる大浦信行氏のインタビューも読んでいない人が多く、自分で調べず既存の選択肢に乗ってしまうこと、それがとても怖い。

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