音楽の評価に男女差はあるか?データ集計結果

経験的に男女差はあると感じているけれど、それをフラットに検証する方法を考えていた。まず体の作りが違う、音の聴こえ方、注意が向く音の違い、歌詞の解釈と共感、その他外的要因(「これを聴いているのがかっこいい。」という見栄とか)。論文やデータも少しはあるが、いろんな要素が絡み合っているので検証するのは相当難しい。

そもそもの懸念は、性別や年齢が偏った人たちが選ぶ音楽が、ベストとして権威づけられることで、消費者が質の良い多様な音楽に触れる機会を損なうことだった。実際に差が生じるかどうかやってみればいいという意見をもらっても、そんな権限も伝手もないし、女性評論家やライターはいっぱいいるっていうなら、そちら様でやってくれよと思っていた。

忘れてたよね。The Guardianは個人ごとに選んだ作品名までオープンにしてくれてるから、男女別での投票結果出せるじゃん。ということで、早速集計してみた。日頃から幅広いジャンルの音楽を聴いておられて、音楽を評価する視点もたくさんお持ちの方々が投票した結果がどう出るか。

元データ:Guardian albums and tracks of 2019: how our writers voted | Music | The Guardian

アルバム

5票以上入ったアルバム。上から得票数が多い順。数字は順位。左と右、どちらが男性女性でしょう?

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右の数字は順位ではなく、今度は得票数であることに注意。女性側にしかないものをオレンジ、男性側にしかないものをブルーに色分け。Ariana Grande、Taylor Swift、Charli XCXは女性側だけ。Tyler, the Creatorの良さは全く理解できなかったし、票の開きに納得。SolangeもLizzoも男性側だけというの、わかるなぁ。

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ついでに、全員が男性だったThe Sign Magazineの年間ベストも並べてみた。

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シングル

4票以上入ったシングル。上から得票数が多い順。数字は順位。左と右、どちらが男性女性かわかりますか?ヒントはLizzoとLil Nas Xの順位、Vampire Weekendの有り無しかな。

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Lizzo『Juice』の票の開きが興味深い。私もLizzoよりCharli XCX『Gone ft Christine and the Queens』だな。Hiphopは男性のファンの比率が多いし、男女別のジャンルの傾向を出せたら面白そう。こちらも、右の数字は得票数。

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このデータを根拠に「ゆえに、男女差がある」とは言うはずもない。入手できるデータを集計してみたらこうだったという一つの事実。
これまた絶対、サンプル数が少ないとか、The Guardianだからとか言ってくる人がいるんだけど、日本の音楽メディアでベスト選んでる人の方がよっぽど少ないし、納得がいかないならご自分でも調査してみればいいと思う。但し、自分の音楽仲間内で調査しても、趣味趣向が似ている人だから、フラットな検証にはならないけど。先日、第12回CDショップ大賞2020に、女性ファンも多いパソコン音楽クラブと長谷川白紙が入賞していて、投票者のジェンダーバランスがどうだったか気になるところ。

年間ベストでも、影響力のあるストリーミングのプレイリストでも、(男性の選んだ)右側だけを見ているとしたら?左側だけにしか出ていない音楽の存在はどうなる?更にフェスのブッキング、音楽賞の審査は?というか日本はそうなってる懸念が、私には大いにある。「今時性別とか言う方が(差別)。」とか、男性が根拠なく「差はないと思うけどな。」と言ってしまうと、存在するかもしれない差(ギャップ)を覆い隠すことになる。

これだけ話題になったのだから、来年はどこかのメディアがジェンダーバランスの取れたベストをやってくれるはず!(と信じたい。)性別や年齢別の傾向を分析したら、きっと面白い記事になりますよ。

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