理想の企業コラボ(Mom(マム)×Chupa Chups、C.A.C×ダイキン)

テレビを見なくなって、もう3年くらい。どうしても見たい番組は、録画してCMを飛ばす。センスもユーモアもないお年寄り向きのCMは、もう見ていられない。でも、観て楽しくて、企業のブランドイメージも良くなって、若手インディーズアーティストのチャンスとわずかでも収入になる企業コラボなら大歓迎。

Mom / ハッピーニュースペーパー

PLAYGROUND以降、そっちの方向に行っちゃうのかって感じだったんだけど、またPop寄りに帰ってきた。こういうの待ってた。

Mom:最近、自分が作ってた曲がちょっとドープ過ぎて「これはマズいぞ……」と思ってたんですよね(笑)。「ちゃんとポップな曲を作らないと……」と思ってたタイミングで、チュッパチャプスさんからタイアップのお話も頂いたので、そのイメージと擦り合わせて、1曲作ってみようと思ったのが“ハッピーニュースペーパー”。だから自分のポップな側面と言うか、特に1stで自分が持たれていた印象に近いサウンドになったとは思いますね。

Momが現代に鳴らす警鐘。大衆化が進む社会の無邪気さに抱く疑念 - インタビュー : CINRA.NET

この作品は、Chupa Chupsとのコラボ。Chupa Chupsは、なんとなく外資のP&Gやユニリーバのイメージがあったけど、日本ではクラシエなのね。Chupa Chupsの名前を口にしたり、極端に大写しにならないのが良い。
Chupa Chupsの黄色と、対照的な淡いブルーで、最初から最後まで色が統一されている。色補正や着色しているのだろうか、それともロケハンの成果?最初から最後まで、この2色が映像のどこかに入っている。青空、夕焼けのオレンジ、空の色までも。古めかしい遊園地とlo-fiな映像。古着をおしゃれに着こなす、Momさんの雰囲気とぴったり。ちょうどよいスピードで、前に進む映像と後ろに引く映像が混じっていて、バランスが良い。タワーに並行して垂直に上昇し、タワーの高さを超えた瞬間、浅草景色が広がる瞬間が気持ちよい。Momさん、Chupa Chupsが似合う。Hiphopだからって、別に葉っぱ吸わなくてもいいじゃんね。海外にはない日本らしい遊園地、カタカナ(世界でも日本の省略しない漢字とカタカナは人気がある)、日本らしさを感じる浅草の下町の風景、シンセの琴の音。文化の盗用と言われずに、堂々と使えるのは日本人アーティストだけだし、日本を手放しに称賛するのではないけれど、自分の国や地元の景色に誇りをもって愛することは良いことだと私は思う。愛国=右翼=差別主義者みたいな、ステレオタイプの思考の人が多いから。
2年前くらいにSNSをフォローしたときは、「早く俺を見つけてくれよ。売れてー。」みたいな感じだったけど、この曲のインタビューでは、説明が上手だしタイムリーなメッセージもすごく良かった。音楽制作だけでなく企画やプロモーションまで全部自分でやってると、苦労も多いけどその分成長せざるを得なくなるのか、それとも、元々考えていたことを表に出すようにしただけなのか。

――「おめでとう人類/よくやったぞ人類」なんかは本当に強烈なラインですよね。
Mom:スケールがでかければでかいほど、残酷な歌になると思ったんですよね。普段生活をしている中で同世代の人たちを見ていると、あまり考えないというか、ずっと無邪気なままだなって思うことがあって。例えばSNSのタイムラインとかもそうですけど、流れてきた情報に対して疑問を持ったり違和感を感じたりしてないんじゃないかって。気持ちはわかるんですけど、ワンテンポ置いて、自分の頭で考える。そして自分の意見を吐き出す。それをやらない人が多いなって思うんです。そういう能天気さが怖く感じられて、このままだとリリックにあるようにめちゃくちゃなことが起きちゃうかもしれないよって。

――流れてくる情報や、自分の置かれている状況に対して思考停止している人へ警鐘を鳴らしていると。
Mom:あと、最近のSNSには揚げ足を取る風潮や、息苦しさも蔓延していると思うんです。でも、それを当たり前だと思わないことが重要なんじゃないかなって。そういう状況に対して、「おかしくない?」っていう気づきを与えられような曲が作りたいと思っていたので、「ハッピーニュースペーパー」がそういう風に機能してくれたら嬉しいです。

INTERVIEW / Mom|Spincoaster (スピンコースター)

Mom:「みんなそんなに無邪気でいいの?」と思うんです。世の中の動きだったり、なにか起こったことに対して、そこに一斉に群がっていくっていうのが、あまりに無邪気過ぎるなって。「そんなに踊らされていいの?」「自分の頭で考えるってことを忘れてるんじゃない?」って思うことが最近多いんですよね。

Momが現代に鳴らす警鐘。大衆化が進む社会の無邪気さに抱く疑念 - インタビュー : CINRA.NET

イメージとしてはニュースペーパーをぱっとばらまいて、そこに群らがる無邪気な人達みたいな。それを俯瞰で見ているっていう印象。伝えたいことは、”踊らされるだけの馬鹿になっちゃだめだよ”っていう、本当にそこだけなんです。それを騙くらかす要素を沢山入れてます(笑)。

Q16:同世代に対して思うことや感じることはありますか?
自分も普段生きててすごく感じるんですけど、情報が都合良く入りすぎてるなって感じます。それを鵜呑みにしないで、ワンテンポ置く感覚がみんなすっぽ抜けてる感じはしますね。感覚が馬鹿になってる。

Q17:Momさんがワンテンポ置くために意識してることは?
何にしても無関心は良くないなって思ってて。例えば誰か悪いことして、それに対してみんながこう槍投げてるみたいな状況でも、そこを多角的に見なきゃ駄目だと思う。冷静に物事の色んな面を知ろうとする姿勢は常に大事だなって思っています。

【21Questions 】「今の時代のパンクを作りたい」 Momに聞いた21の質問 - 60MAG(SIXTYMAGAIZNE)

右左や良し悪し、どちらか一方でなく、「物事一歩下がって俯瞰して多角的に見てみようぜ!」という説教臭くも受け取られ兼ねないこのメッセージを、飴ちゃんなめながらポップなフローに乗せて、堂々と伝えられる22歳の大学生Momさんはかっこいい。虚勢を張ったハリボテではなく、地に足のついた本当の強さを感じた。

C.A.Cx DAIKINx TRIQSTARx TOULIVER

C.A.Cは、ベトナムの有名なダンス集団。BLACKPINKなど流行りのダンスミュージックのダンスをコピーしたり、そこにオリジナルの振り付けを加えたりして、YouTubeで動画配信している。そのC.A.Cが日本の企業ダイキンとコラボ。
C.A.Cx DAIKINx TRIQSTARx TOULIVER - OHAYO VIỆT NAM (おはよう、ベトナム
100人の労働者とTOP6アジアの有能な人材によるプロジェクト

C.A.Cはダンス技術のレベルの高さ、振り付け、ダイナミックなカメラワーク、長回しのワンカットが特徴。大胆に寄って引いて、周りをグルっと1周、180度方向転換、振り付けとフォーメーションが全て頭に入っていないと撮れない。カメラの人の空間認識と身体能力はどうなってるんだ。
[QUẨY DÂN TỘC CỰC SUNG TRÊN PHỐ ĐI BỘ] ĐỂ MỊ NÓI CHO MÀ NGHE - HOÀNG THÙY LINH Dance Cover by C.A.C

ダイキンとのコラボ映像に話を戻す。日本のダンス集団、Triqstar Japanも参加している。Triqstarのチャンネルでの再生回数は380回(C.A.Cは43,000回以上)。現地ベトナムのC.A.Cを主役にした方が、ベトナムの方の印象も良かったのでは。Triqstarは出演しなくても。
180度振り返るカメラワークは、C.A.Cらしい。素晴らしいのが、ドローンの空撮とマスゲーム。エアコンの表示を表しているのかしら。空撮から地上への切り替え映像も上手くて、よく見ていないと連続したワンカットかと思う。C.A.Cは初の企業案件だったらしく、アイディア出しから、振り付け、練習、撮影にいたるまでC.A.Cが行ったらしく、実績を積めたのであれば良かった。ベトナム語での好評価のコメントが多いし、ダイキンのイメージも良くなっているといいな。

企業は、というか代理店はになるのかな、若手インディーズアーティストを積極的に活用すれば、文化の支援になりブランドイメージも向上させられると思うので、こういうコラボ案件増えてほしいな。

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