英語表現 The 1975 Matty Healy "having kittens"
言語は難しい、特に歌詞なんかは。インタビューにある本人による歌の説明も読み、込められた意味を理解しようと努力した上で、よほど自信のあるときしか、ブログには載せないようにしている。難しい分、謎解きの面白さと理解できたときの喜びがある。
先日書いた『音楽業界のジェンダーバランス 2019-2020』でも引用したThe 1975のMatty Healyのツイートでの英語表現について、日本の音楽メディアの翻訳を比較しながら、英語表現を学ぶ。
allies (アライ)
Take this as me signing this contract - I have agreed to some festivals already that may not adhere to this and I would never let fans down who already have tickets. But from now I will and believe this is how male artist can be true allies ❤️ https://t.co/1eaZG2hEze
— 🥾🌍 (@Truman_Black) 2020年2月12日
NME JAPANの訳
「この条項にサインするものとして自分は受け止めるよ。これに該当しないフェスティバルへの出演に既に同意してしまっているし、既にチケットを購入してくれているファンを悲しませることはできないけどさ」
「だけど、これからはそうするよ。それが男性アーティストが本当の意味でアライ(同性愛支持者)になることだと思うからね」
ザ・1975のマット・ヒーリー、ジェンダーの均衡が取れてないフェスに出演しないことを示唆 | NME Japan
Rolling Stone Japan 清家咲乃さんの訳
「この契約にサインしている僕は、こうしたこと(インクルージョン・ライダー)を遵守していないフェスに賛同したことになるし、既にチケットを購入しているファンをがっかりさせたくもない。だけど、たった今から僕は行動を起こすし、これが男性アーティストが真の味方になれるやり方だと信じている」
The 1975のマシューが表明「ジェンダーバランスが不平等なフェスには出演しない」 | Rolling Stone Japan(ローリングストーン ジャパン)
1975's Matty Healey Vows to Add Inclusion Clause to Fest Contracts - Rolling Stone
Laura Snapesの「"ジェンダー比率についてコミットしたフェスのみプレイするという条件"を(契約に)追加して。」という呼びかけに対する、Matty Healyの答え。"as me"とあるので、省略されている主語は"I"ではなく"You"、命令形だと思う。
"Take this as me signing this contract"
この契約にサインしようとしている自分のように"(You) Take this"、つまり他の人にもそうしてほしいという意味ではないだろうか。Rolling Stone Japanの方は、"Take this"の訳が抜けているのでは。
ally(アライ)はLGBTQ+用語で、LGBTQ+を理解しその活動を支援する人のこと。日本でも使われ始めているので、NME JAPANの訳が良いと思う。ノンバイナリーについても言及しているので、同性愛者限定ではないけれども。
have kittens
Yeah fuck knows and I’m sure my agents are having kittens right now but times up man people need to act and not chat thanks for the kick up the arse snapes you’re making a difference https://t.co/ykp2k4kiMx
— 🥾🌍 (@Truman_Black) 2020年2月12日
NME JAPANの訳
「知るかっていうね。今、僕のエージェントはソワソワしていると思うけど、時が満ちたのさ。今こそ喋ってばかりいないで行動すべき時だ。尻をひっぱたいてくれたことに感謝するよ。ローラ・スネイプス、君が変えてくれたんだ」
Rolling Stone Japanの訳
「エージェントは今、子猫の世話で忙しいってわかってる」
「時間切れだ、チャットしていないで人々は行動すべきだ。スネイプス、動機を与えてくれてありがとう。あなたはすごいよ……。
"have kittens"は「激怒する」「とても心配になる」「やきもきする」等の意味がある。The 1975のエージェントに相談する前に、Matty Healyがツイッターで(世界中の誰もが見ている場所で)約束してしまったので、「エージェントはピリピリしている」か「やきもきしている」みたいな意味でしょう。「子猫の世話で忙しい」ではないですよ。
benefit of the doubt
Point is that Reading and Leeds with more women would be honestly the best festival in the world that place is vibeyyy. Let’s not judge people and give the benefit of the doubt that people are going to start to listening ❤️❤️I can feel the change !!
— 🥾🌍 (@Truman_Black) 2020年2月12日
NME JAPANの訳
「重要なのはレディング&リーズがもっと女性アーティストを出演させると、本当に世界で最高の雰囲気のフェスティバルになるってことさ」
「人々をジャッジするのをやめよう。そして、人々が耳を傾けてしまうような疑義に利益を与えないようにしよう。変化を感じるよ」
Rolling Stone Japanの訳
ポイントは、レディング&リーズ・フェスティバルにもっと多くの女性が出演すれば世界で最も良いフェスになるってことなんだ。すごくヴァイブのある場所になるよ。人をジャッジするのはやめておこう。そしてこれから(音楽を)聴き始めようという人を信じよう。変化を感じられるだろう!」
電算機(私)の訳
「要するに、もっと女性がいるReading and Leedsは、バイブスのある真の世界一のフェスになるだろう。批判せず、(人の話に)耳を傾け始めた人々を好意的に解釈しよう。変化を感じられているよ。」
benefit of the doubt :疑わしきは罰せず。疑わしい点を被告に有利[善意・好意的]に解釈すること。
私は、"give the benefit of the doubt"「好意的な解釈を与える」を意訳して、「好意的な解釈をする」と訳した。NME JAPANは否定形のnotはgiveにかかると解釈しているが、違うと思う。
"Let’s not judge people and give the benefit of the doubt"
Rolling Stone Japanの「音楽を聴き始める人」と、音楽に限定する根拠が、それまでの会話にない。前のツイートで「不毛な議論は止めて」と言っているので、「話を聞こうと聞く耳を持っている人に対しては、批判せず好意的に解釈しよう」と解釈すると繋がる。
Rolling Stone Japan、ネットで無料版とは言え、海外在住で生の英語に触れている人に訳してもらった方がよいのでは。だいぶ意味が違うし、紙媒体の翻訳も大丈夫なのかなと心配になる。
動物名の慣用句
"have kittens"が面白かったので、他の動物の名前を用いた慣用句を。
部屋にいる象
知らなくても困らない英語の面白表現 : 英国紳士と国際結婚@ロンドン
The 1975
この件で、The 1975のことを調べていたら、親しみを感じるように。歌詞が面白かったり、ファンからネタを募集したり。全く興味がなかったので、わかっていなかったけど、すごい人気なのね。日本の人気バンドやアイドルが、音楽業界に対して発言したり、行動を起こすなんて絶対考えられないもの。先進的だからこそ、これほどの人気なのかもしれない。
2019年最も多くフェスに出演したDJとアーティストは
Festicket's 2019 Festival Heroes - Festicket Magazine