多様なカルチャーに染まる白 White Space Lab 渋谷

DOMMUNEHiroshi Watanabeさんのライブを観て気になり、Hiroshi Watanabeさんが定期的にイベントを開催されている場所としてWhite Space Labを知りました。DJバーにしては珍しく、細かい情報までウェブ上にオープンにされていて、私自身が機材愛が強いのでDJブース内飲食・喫煙禁止を明記されているのもいいなと思っていました。
そんなずっと気になっていた渋谷のDJバー White Space Lab、オーナーの山科さんにお願いし、メールにてお話を伺いました。

Q1. インタビューに応じて下さってありがとうございます。早速ですが、White Space Labをどういう経緯で作られたのですか?お店はオープンしてから何年になりますか?
A1. オープンして約5年になります。もっと気軽にDJイベントを開催できるスペースを作りたかったので、オープンしました。クラブシーンに携わって長いですし、ノウハウは蓄積できていたので、勝算はありました。

Q2. クラブイベントは赤字という話をSNSでよく見かけたので、本当かなと思って調べたんです。だからわかるのですが、ライブハウスも含め箱貸しの条件が圧倒的に良心的ですよね。説明もとても丁寧で、具体的なシミュレーションまで。そのようにされた理由をお聞かせ頂けますか?(単に他との差別化しているだけかもしれないですが、イベントをしたい人の応援をしているように感じていました。)
A2. 私は今でも現役のDJであり、オーガナイザーでもあります。現場のことは一番よく分かってるので、イベント開催にあたり、箱代というのは一番のネックになると思います。イベント週末にやりたいけど、箱代10万かーとなると開催する意欲も無くなってしまいませんか?なので気軽に開催できる金額に設定したいと思っていました。その為にスタッフを雇わずオーナー自らがバーテンをして、人件費をカットすることにより実現しています。とはいえ、White Space Labもドリンクの売上でなんとか運営出来ている状況なので、ドリンクを沢山飲んで頂けると助かります笑

Q3. 『ディスコ元年』やサカナクションファンのDJイベントなど若い方たちのイベント開催が増えてきているようにみえますが、実際どのような状況ですか?
A3. 若い方たちに限らず、あらゆる年代、人種の方たちに利用して頂いております。現状としては、非常にリピーターが多いというのはあります。なので週末は2-3ヶ月前くらいに押さえないと空いてないことが多いです。箱を作るにあたって何色にも染まることのできるホワイトをテーマにしたのも、幅広いジャンル、シチュエーションでの利用を想定してのことです。

Q4. 名物はハンバーガーということですが、ご自身で食べ歩きもされるんですか?お肉やパンの仕入れ先は食べ比べて決められたのですか?
A4. 私自身、かなりのバーガーマニアで食べ歩きももちろんしています。お肉やバンズも最高なものを仕入れているので、正直原価率は50%を超えています。一つ作るのに10分も掛かるので、利益に対しての労力も割に合わなかったりします。ただ、私個人のお店なので好きにやりたいというのもあり、頑張って提供しております。お客さんが多くなると作れなくなるので、ぜひ早めの時間帯からお越し下さい。

Q5. 以前は禁煙だった記憶があるのですが、店外での喫煙は苦情が入ったので変更されたのでしょうか?
A5. 以前はフロアでも喫煙可でした。ただ、私自身タバコが苦手で毎日バーカウンターにいるので、さすがに厳しくなってしまい1年前くらいに分煙にしました。現在、フロアは禁煙でトイレの前の喫煙所でのみ吸えます。
つい最近もサーキュレーター2台を導入しフロアに設置することで、暑さ対策とフロアにタバコの煙を侵入させないようにしました。効率よくトイレの換気扇にタバコの煙は流れていってるので、非喫煙者も比較的快適に過ごせるようになったと思います。
有名プロDJの方でもDJブースでの喫煙はお断りしていますので、フロア内での喫煙はその都度注意します。イベントによっては完全禁煙にすることも可能なのですが、どうしても一定数の喫煙者はいるので、そうなるとお店の前で喫煙されてしまいます。お店の前にたまったり、喫煙したりなどは近隣店舗からクレームが出るので、携帯灰皿を渡してかなり離れたとこで吸ってもらうなど工夫が必要です。

Q6. 東間屋、翠月 Mitsuki、YELLOW BLANK MARKETと渋谷のDJバーは増えていますよね。頭バーも移転して来られましたし。White Space Labにとってこれは良いことですか?悪いことですか?
A6. White Space Lab はデイイベ中心ですし、DJバーとはいえ、かなり変わったお店なので、それらのDJバーと競合することはないと思います。個人的意見ですが、かつてないほど渋谷にDJバーが増えていて、同じ土俵で戦うには厳しすぎるなと感じています。そもそも経営方針も違いますし。なので、今後も独自路線でいこうと思っています。
たくさんのDJバーができるというのは、良いことだと思います。海外から遊びに来る人たちの選択肢が増えるのも良いと思いますし、日本の若い方たちにも気軽にDJを聴きに来てもらえると思います。
しかし、シーン自体はそれほど拡大してないと感じているので、お客さんの取り合いになっている現状はあると思います。シーンを拡大していけないと自然と体力が尽きたDJバーから潰れていくことになります。

Q7. ご自身から見てWhite Space Labは他のDJバーと比べてどこが違いますか?
A7. 私自身、朝まで働きたくないというのもあり、デイイベント中心というのが、他と比べて決定的に違うところだと思います。ただ、深夜帯というのはそこまで需要があるとは思えません。当店はほとんどが当店以外の主催者が手がけるイベントばかりなのですが、深夜帯でイベントやりたいと言う人はほとんどいません。しかも渋谷だと深夜帯はすぐお隣のWOMBなど競合店舗も多く、この立地での深夜帯は逆に競合が多すぎて大変というのもあります。深夜帯をやらないとお酒の売上も良くないのですが、人件費を抑えてるのでなんとかやっていけてます。
クラブミュージックを楽しむのに、深夜帯じゃないといけないというのは古い考えだと思っています。今後シーンを拡大する為にも、終電で帰れるイベントの重要性は増していくと考えています。
また、音作りから雰囲気まで、DJ目線で構築してるので、非常にプレイしていて楽しい場所でもあると思っています。

Q8. 今後White Space Labをどういう場所にしたいですか?どういう人が来る場所、何が楽しめる場所にしたいですか?
A8. 今も昔もWhite Space Labは表現者の為のアンダーグラウンドなスペースです。人により表現したい事は違うと思うので、音楽ジャンルによる差別もしたくありません。
演者も、このステージは表現する場という認識で、リスペクトをもってステージに立って欲しいですし、お客さんもリスペクトを持ってDJの表現する音を聴いてあげて欲しいです。演者とお客さん、どちらもお互いにリスペクトし合う空間にしていきたいと思っています。イベントを気軽に開催できるようしていますが、お客さんに対してリスペクトのカケラも感じないようなイベントは次回お断りすることもあります。

Q9. ここまでインタビューを読んだ方だけに、渋谷のお気に入りの場所をこっそり教えてもらえませんか?
A9. お気に入りのクラブでいえば、VENTやContactに良く行きます。特にVENTは私もDJとして良く出演していて一番好きなクラブです。
お気に入りの場所としては、円山町からすぐの神泉駅周辺エリアでしょうか。当店も属するエリアは通称”裏渋エリア”と言われていて、円山町から神泉町周辺を指すのですが、良い飲食店も多く、渋谷中心地よりも落ち着いていて、大人の方にもおすすめです。個人的に新泉にある、”うさぎ”というラーメン店はおすすめですよ。

Q10. メッセージがありましたらどうぞ。
A10. ホームページに掲載しているイベントは、全て当店主催のイベントです。数は多くないですが、クォリティは間違いないので、White Space Labのイベントに行きたいと思っている方はチェックお願いします。
また、毎週木曜日の19:30-23:30で、当店主催のレギュラーイベント”リアルグルーヴ“を開催してます。手軽にDJの音楽や、名物のハンバーガーも食べれるので、来た事ない方はぜひ一度来てみて下さい。

とても誠実にオープンに回答下さいました。自分が正しいと信じることをブログに書いてきたつもりですが、山科さんのクラブカルチャーやDJに対する真摯で誠実な姿勢に、身が引き締まる思いがしました。憤りなどクラブに対するネガティブな話題の方が拡散され易いですが、しっかり経営してクラブカルチャーを愛する人が集まれる場所を守りながら、この先のことを考えてカルチャーが育つ場所を提供している人がいることも知ってもらいたいです。静かにクラブカルチャーを支え、次のカルチャーを育てる土壌を作っている方がいるということを。

f:id:senotic:20190925175810j:plain

Copyright © 電子計算機舞踏音楽 All Rights Reserved.