ROSALÍA - Aute Cuture フェミニズムとファッション

Latin Grammy 5部門にノミネートされ、New York TimesBillboardでもがっつり取り上げられているのに、未だ日本では。日本のソニー・ミュージックエンタテインメントも全くやる気がなくて、2018年11月から1年近くも情報が更新されてない。私はROSALÍA大好きだし、彼女のプロデュースする音楽や映像は力を与えてくれるので書きますよ。

ROSALÍA - Aute Cuture 
煌びやかなファッションに身を包んだ女性ギャング集団が登場するMVで、女性のパワーやファッションについて歌っている。Con Alturaも共作したEl Guincho (Pablo Díaz-Reixa)と他のアーティストのために曲を作っていたが、とても気に入ってしまったので自分たちの歌にしたという作品。

歌詞

ROSALÍA本人による歌詞の解説。ネットにスペイン語と英語の歌詞はあるけど、歌詞は比喩だったり文化を理解していないと意味が取れないから翻訳は難しい。日本語の歌詞でさえ、本人の意図とは違って解釈してしまったりするもの。「Verified (検証済み)」というシリーズは本人による解説で英訳までされているから助かる。ROSALÍA自身が解説する歌詞のキーポイントを知ってからMVを見ることで、女性の精神的な自立、女性の強さとファッションについて、この作品で表現されていることがわかる。
ROSALÍA "Aute Cuture" Letra Oficial Y Significado | Verified 


[Verse 1]
Te conjuro y te dejo prenda'o
Encima del stage yo olvido lo' peca'o (Sí)
Y que to' lo' santo' tienen su pasa'o (Chao)
全ての聖人に過去があります。(解説:過ちを犯さない人はいない。完璧な人はいない。聖人でさえも。)
Yo te bendigo si te tengo al la'o (Amén)
Su nombre en el cora' ya no está clava'o (Nah)
私の心の中にあなたの名前はもはやネイルされていない。忘れてしまったので。(解説:私は恋の病だったが、もう大丈夫。)
Mano' en el aire si te lo han rasga'o (Uf)
Que yo lágrima' solté un puña'o
(解説:"Que yo"はどこから来た言葉か知らないが、リズミカルで音楽的に思えて音が好きです。)
Olé yo, ¿y qué?
それがどうしたの?私がここにいる。(解説:スペイン南部の人がよく使う言葉。)
[Chorus]
Esto está encendío, na, na, na, na
燃えています。(解説:私たちは活発で、活性化されている。)
[Refrain]
Tacones, lunares para matar, bájale
Los flecos, la' trenzas para matar, bájale
Eyeliner, leopardo para matar, bájale (Que)
Madre mía, Rosalía, bájale
(解説:自分はとても心配性でいつも何かしている。周りの人から"bájale (落ち着いて)"とよく言われる。あなたのいとこが出かけるところを想像してみて。髪を整え、まつげ・口紅・ジャケット・ジュエリー・ヒール・バッグを一遍に身に着けようとする。「リラックス、落ち着いて、クールダウン。」と言うと思う。)
Tacones, lunares para matar, bájale
Los flecos, la' trenzas para matar, bájale
Eyeliner, leopardo para matar, bájale (Que)
(Madre mía, Rosalía, bájale)
[Verse 2]
Aquí to'a la' niña' tenemos tumba'o (¡Tra!)
Aute cuture, todo regala'o (Buah)
オートクチュール、全て私に与えられた。(解説:彼らは私に与えたいから与えた。デザイナーが私に与えたいから。それは力でもある。)
Uña' de Divine ya me las han copia'o
Que te las clavo, niño, ten cuida'o (Cla)
私はネイルをする。少年よ、気を付けて。(解説:これらのネイルは武器のようなもの。気を付けて。とても美しいと思うでしょう。でも武器のようなもの。私も気を付けている。)
Cuando llamo al toro, ya lo he domina'o
Voy cargá' de oro, espérame senta'o (¡Jah!)
私は金(ゴールド)を積もうとしている。座って待て。(解説:これはイメージです。私はたくさんの(ゴールドの)チェーンを首に着けている。とても重い。ゴールドは本物なので重い。チェーンや指輪、イアリング。すると、穏やかになる。私に金(ゴールド)が積まれると。私はそこへ行こうとする。少しずつ、自分の場所へ。だから座って私を待っていて。時間がかかるので座っていて。)
Que el de arriba nos ha señala'o (Bless)
(解説:サインを示した上の階の男は、ちょっとしたユーモアを交えて神について歌っている。「神に触れた」と言っている感じ。この場合、私と少女達は強い女性グループのイメージ。神は我々を気にかけ、守って下さる。彼のおかげで我々は強くいられる。)
Y es que el de arriba nos ha señala'o (¡Eh!)
[Bridge]
Sonando en la' peñas y los Hamptons
(解説:2つの場所はとても離れている。同時に(離れた)2つの場所に存在することができる。la' peñasはフラメンコ好きが集まって音楽を聴いたりライブを観る場所、フラメンコの伝統を象徴するとても美しい場所。(NYの)Hamptonsは私の出身地からとても離れた場所。)
Sangría y Valentino
(解説:サングリアは私の出身地の伝統的な飲み物。私はREDValentinoが好き。Red(赤)は私の映像や写真に常に存在している。私が好きな色。たくさんの強さを持っていて、だから使っている。)
En el Palace y en el chino (Eh, eh, eh)
[Chorus]
Esto está encendío, na, na, na, na (Sonando)

MV

世界中のMVをチェックしているけれど、良くも悪くも低予算でも作れそうなMVが増えていて、よほどの大物アーティストでなければ脚本・衣装・セットを作りこんでできない時代だと感じている。その中で、世界観があり、脚本もセットもしっかり作りこまれ、相当なこだわりを感じるオリジナルの振り付けと一人一人違う豪華な衣装。最初のロゴも。最後のクレジットに細かく名前が載っているので、どれだけ多くの人が関わっているかわかる。
f:id:senotic:20191014060349j:plain
振り付けはMadonnaBritney Spears、2018年のKendrick LamarのGrammyでのパフォーマンスも担当したCharm La’Donna。

私は彼女(Charm La’Donna)と私が当時フラメンコを習っていたバルセロナ出身のフラメンコダンサーAna Nuñezを一緒の部屋に入れて、フラメンコと都会の音楽からインスパイアされたライブをどう作るか考えたかった。
当時少ししか資金がなくそれを音楽とライブにつぎ込みたかった。なのでinstagramを介して彼女にコンタクトし「私が支払えるのはこれです。」と言った。彼女はYesと言った。私があったこともないこの女性(Charm La’Donna)はスペインに来て私と仕事をした。リハーサルの約5日後、私の姉妹と私は彼女に聞いた。「あなたレベルの人が私たちのところに来る可能性はどのくらいあるのですか?」彼女がそこにいる必要があると神に言われた気がしたと言った。私たちと一緒に仕事をしたら何か起きると直感したようです。

引用元:Billboadのインタビュー

ROSALÍAのこだわりを実現できる人を厳選した結果、このクオリティに仕上がっているのではないだろうか。
ROSALÍAはお気に入りのネイルアーティストが何人かいて、日本人もいる。先の尖ったネイルをよくしている。Billie Eilishが長い付け爪をし始めたのも、Coachellaの後だからROSALÍAの影響かななんて。マスクもね。
フラメンコのハンドクラップが上手く取り込まれていて、でも伝統的な音を鳴らす手元には大胆なデザインの現代的なネイル。la' peñasとNYのHamptons、サングリアとValentino、伝統と最新のファッションという対極とも言える組み合わせがあちこちに組み込まれている。
f:id:senotic:20191014060316j:plain
普段より濃いめの肌の色はスペイン人を前に出しているようにも受け取れる。Billboardのインタビューで初めて男装でフラメンコを歌った歌手Carmen Amayaの名前を挙げている。
f:id:senotic:20191014060302j:plain
このコンセプトに近いMVとして、DE AQUÍ NO SALESがある。スペインを代表するような風車の風景、ROSALÍAの好きな乗り物(バイク)、エンジンとガソリンを想起させる黒い液体。火を放ち、覆面をして逃げる女性ギャング。バイク音とアカペラのカンテだけの音楽。音楽もパフォーマンスも映像も素晴らしい。
ROSALÍA - DE AQUÍ NO SALES (Cap.4: Disputa)

ネットで見れるライブは全部チェックしている。MTVの2019 Video Music Awardsでのライブがいつも以上に気合が入っていて良かった。

血管切れそうなくらいの気迫と、女王の風格が漂う凛々しさと美しさ。そして、さすがMTVのVideo Music Awardsだけあってカメラワークが凄い。3:00あたりクレーンで吊るされたカメラが高速で上がっていくのが確認できる。ステージ前からと後ろから上からの俯瞰と映像を上手く切り替え、平面でありながら立体的に伝えてくれる映像。一番上がるのは低空飛行するドローンが近づくような映像。フロアの映像も消してあって、反射してこの映像が撮れること計算されてるってことかしら。神々しい。テレビはもう見ないし、日本のテレビの歌番組はどうなっているか知らないけど、このレベルが見れたらいいですね。
f:id:senotic:20191014153845j:plain

フェミニズム

ROSALÍAは左太ももにタトゥーを入れている。

このタトゥーは、アーティストのValie Export(太ももに)が初めて彫ったタトゥーです。 そして、それは家父長制における女性の客観化を批判するような仲間のブローチです。 彼女は自分の体を見せると決めるのは自分だと主張します。

調べてみると70年代に割と過激なアートパフォーマンスをしていた女性アーティストらしい。

体の入れ墨は、儀式と文明の関係を示しています。タトゥーに取り込まれた、かつて奴隷制を意味するガーターベルトは、抑圧されたセクシュアリティを象徴する下着であり、我々が自己決定することのできない女性という属性です。身体的ニーズを隠す社会的儀式であることが暴かれ、肉体に対する我々文化的対立が公になる。条件行動を求めた階層の一員であったことの印として、ガーターベルトは思い出の品になります。女性が自分の存在を自律的に定義できる人間の世界に達するために、女性の世界ではなかった世界の痕跡を女性体から剥がし捨てます。
1970年7月2日にフランクフルトのステージで行われたValie Exportの公開タトゥーは、彼女のフェミニストアートパフォーマンスの過激性を示しています。性的対象としての女性の客体化と社会的役割、および男性による社会的決定を反映しています。同時に、芸術は彼女の体に取り消しできない形で刻まれています。

引用元:Media Art Net | Export, Valie: Body Sign Action

Valie Exportというアーティストを知っているという教養の高さ、またそれを選ぶところがROSALÍAという人を表していると思う。

Copyright © 電子計算機舞踏音楽 All Rights Reserved.