ファンとライブストリーミングで音楽を作る Dorian Electra / HANA

音楽は、寝室で一人でDTMする時代から、クラウドへ。海外で人気の曲の作詞・作曲・編曲のクレジットを見ていると、複数の名前が並ぶ。アーティスト同士の協業のさらに先、ファンの力を活用した事例とそのメリットとは。

ファンと作る Dorian Electra

Dorian Electraがライブストリーミングでファンと一緒に曲を作る企画、1月18日に2回目をやっていた。Dorian Electraの音楽仲間(Dylan Brady, Count Baldor, umru, Clarence Clarity, Socialchair)が集合、ストリーミングでファンに、BPM・楽器の種類・タイトルなど、相談しながら作っていく。Dylan Bradyは100 gecsの一人、umruはCharli XCXにも曲を提供している。時代を先駆けるアーティストが一堂に会した企画とも言える。ステムファイルも公開していた。
http://www.mediafire.com/folder/v8xmp5nen7gj7/FLAMBOYANT_(DELUXE)_STEMS

BPM200とか無茶なこと言うファンもいて、オープンにやるのはやはり大変そうだった。Dorian Electraは、コメントも拾いつつ、自身も考えながら、チームをまとめて進行していた。リーダーシップがあって、できる人だという印象。
We Made a Song Using Only Your Comments - "Thirsty (For Love)" - Dorian Electra

出来上がった曲がこちら。特に好きではないけれど、制作プロセスを見ていたので愛着が湧く。
DORIAN ELECTRA - Thirsty (For Love)[Written w/ Comments over Live Stream]

Dorian Electraは、有名になりたいとか売れたいという感じが一切ない。セクシュアリティに悩んでいる子供の力になりたいとか、そういうモチベーションで動いていて、立派な作品を作るよりアイディアに溢れたイノベイティブなことをやろうとしている様子なのがとても魅力。今回の企画も、作品の質よりもファンと一緒に楽しんで作る過程が大事で、DTMに興味をもってもらう教育的な目的なのかなと思った。

4週間でアルバム HANA

HANAというアーティストは、ゲーム配信で有名なTwitchで制作過程を配信し、4週間でアルバムを作った。以下、抜粋と和訳。
How HANA Created "HANADRIEL" on Twitch in Four Weeks - PAPER

HANAは今、一人だけの音楽の作業が負担になっていたと認めています。彼女は言います。「頭の中で判断を重ねるたび、そう(一人での作業が負担に)なっていきました。パソコンには何百曲もの未完成の曲がありました。昨年、ようやく音楽に対し新たな興奮を感じ始めました。もっと明るい曲を書く実験をしていました。『We Appreciate Power』のリリースの後、新しいシンセをいくつか手に入れ、私はギターを弾く活力を取り戻しました。
活力を取り戻し、新しい仕事に飛び込む準備ができたので、彼女はリスナーを一緒に参加させることを決めました。HANAは、歌詞の作成とミキシングとマスタリングの数日を除き、歌のコンセプト化からボーカルを生成し配置にに至るまで、編集や制限無しでスタジオ内のほぼ全ての瞬間をライブストリーミングしました。

「人々は私が作業しているときに質問してきました。そのプロセスを心から楽しんでいるようでした。そのアイデアをどこまで推し進めることができるか、私は考えさせられました。期限は、自分自身の一種の実験的なチャレンジでもありました。自分自身にゴールを設定すれば達成できると、私はわかっていました。」
Twitchで彼女のプロセスを明らかにしたことは、HANAが彼女の音楽の制作に関わる誤解を正すのにも役立ちました。 「面白かったのは、私が歌を書いたり歌ったりするのと同じように私が制作していることを、多くの人々が認識していなかったことに気づいたからです。私自身が多くの作業をしていることを、人々の脳裏にしっかりと焼き付けました。これが本当に大きなことだとは思いませんが、人々が、私がプロデュースしていると信じていない、もしくは協力者がほとんどの作業をしていると思っていることが、面白いとわかったのです。」

不快感や自意識を感じた場合は、チャット上に別のウィンドウをドラッグするだけで、見えなくなります。 それはチャットを負担に感じるときに、いつも使えるテクニックでした。私のビューからそれを非表示にするだけで大抵、ゾーンに戻ることができます。 歌詞を書いたときは、主に気を散らさないために、私は自分のビューからチャットを隠しました。

ライブストリームで遭遇した最大の課題は何でしたか?
正直なところ、私はこの経験をとても気に入りました。4週間友人やボーイフレンドにほとんど会えなかったこと以外は、チャレンジだと思っていません。ミキシングとマスタリングが最大の課題だったと思います。最後の配信の後、このアルバムをできるだけ早く出したかったのです。視聴者の記憶が新鮮なうちに出したかったので。恐怖に打ち勝ち、期限を設定し、意思決定を行い、自分をそこに置くための練習でもありました。私は完璧主義者なので、何かを出す瞬間は大きな不安を引き起こしていましたが、これはより多くの音楽を頻繁にリリースする流れに乗るための練習でした。残りの人生、私は音楽を作り続けていくので。滞らせたまま埃をかぶったハードディスクドライブに置いておくより、世に出した方が良いです。

視聴者の参加はアルバムにどの程度影響しましたか?
視聴者は判断に非常に役立ちました。 (彼らは)私が捨てていたであろう歌に取り組み続けられるよう(私を励まし)、それらは私のお気に入りの歌になりました。例えば『Black Orchid』のように、しばらくの間ゴミでしたが、わずかな人々はそれが彼らのお気に入りであると言い続けました。彼らはまた、テーマについてもたくさん助けてくれました。最初の日、私たちは大きなブレーンストーミングセッションを開催し、その場で彼らは私から何が聴きたいかを話してくれ、多くのキーワードとアイデアをくれました。トラックリストについても、彼らはすごく助けてくれました。そして、とても頑固(笑)。

アルバムにフューチャーやコラボレーションはありません。 その意味で鎖国状態の作品です。 けれども、あなたのファンにとって、完全に透明化された状態でファン参加で作られたものでもあります。そのパラドックスをどう見ますか?
これは最も魅力的な部分だと思います。 私の仕事が全てではありますが、私のファンがくれた細かいものや断片に影響されました。 毎日私と一緒にいた人たちは、歌が彼らのものになるのを見ました。 強くに関与したり、たくさん見てくれた人は、その経験を長い間覚えていると思います。 最後は、キャンプの最終日のように感じました! どう考えても私はストリーミングを続けますが、あのプロジェクトは(今は)完了しています。それは、本当に感動的でした。 ここ数日、私は(幸せな涙を)たくさん流しました。

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