心を鎮める歌(abelest、諭吉佳作/men、ninoheron、Urakami Kevin Family)

DJミックスの合間に聴く音楽、並べてみると心を落ち着かせてくれる歌が並んでいた。

abelest - Alzheimer
11月のマルチネ放送室βにてトマドさんの紹介。AT THE CORNER 未来才能全員集合祭に出演された2017年当時の曲は響かなかったのだけど、この曲は1回で気に入った。「ヒャ・ク・ド・メノ(100度目の)」等、鍵盤を叩いて音を出すように飛び跳ねる歌い方、「パソコン/スクリーン/焦点が/近い」は1拍1ワードでリズミカル。「眼科の看護婦」は歌詞を確認するまで、「カンカン(に怒っている)の看護婦」だと思っていた。ご本人活舌を気にされてるようだけど、逆に「カンカンのカン護婦」と韻を踏んでいるよう。歌詞をしっかり発音して伝えるよりも、リズムと音が優先されて、それが個性となっている。アルツハイマーという病は理解されにくい。記憶ができなくなるだけで、表情を読み取ったり思考し議論することはできるのに、赤ちゃんのように何もわからなくなると誤解されがち。アルツハイマー患者側からの視点を描くのは非常に難しいはずだが、物悲しくも美しい詩のように優しく表現されている。アルツハイマー病を患った私の祖母は、キラキラと光るクリスマスイルミネーションをいつまでも見続けていたのを思い出す。記憶がぼやけていく中でも「綺麗だな 」と感じることができるひと時があると理解した上で、このような歌詞にされたのだろうか。


abelest + Takeshi Fuwa - 睡眠
2018年年末に先行リリース。EP3曲の中でこれが一番気に入った。Alzheimerと比べると、こちらは跳ねるより伸ばす歌い方と繰り返しが特徴的。「たーーーくわえーーた」「エベエベエベエベレスト、ノボノボノボ登ろうかな、ドリョドリョドリョ努力はしてきた」、むしろ活舌よく滑らかに転がるように歌われている。「白い息ニキャ(に消える)」「ドーパミン カプセル(が見せる)」とここは逆に単語がはっきり発音されていないが、want toをwannaと音を繋げる英語的。「次会うときはいつになるのかな」のところからは歌い方は少し声色が変わりAlzheimerより声の表現の幅が広い。瀧廉太郎の『お正月』から始まり、シューベルトの子守歌で終わるのも面白い。
人間がハイテクを使い冬眠するという近未来的な想定でありながら、「近所に挨拶と、データの整理」と身近で現実的。春に無事目覚めることができるのか、「極楽」という言葉や歌い方は怖さも感じる。冬の寒い朝には特にこのまま布団の中で冬眠したいと誰しもが考えたことがあると思うが、自分の思いも併せて想像を膨らませることができて面白かった。

歌詞や制作後記

諭吉佳作/men - 別室で繭を割った (abelest Remix)
機材やマイクも使わずiPhoneiPhoneに入れたGarageBandで音楽を作る静岡の中学生。Maltine Recordsから出たEPの曲「運動」は凝った作りで歌も素晴らしかったが、好みなのはこちら。年齢で評価すべきではないが、15歳でこの歌詞、歌い方、作曲ができてしまう才能。この前好きな人への想いを書いた高校生の時の自分の日記が出てきて、表現も言葉遣いもあまりにイタくて頭抱えた。15歳の頃なんてもっと薄っぺらい言葉でしか表現できていなかっただろう。abelestさんのremixは諭吉佳作/menさんの歌い方の良さを邪魔せず、さらに諭吉佳作/menさんの声をサンプリングしたり加工したり生かしている(イントロ、2:05、3:05、3:37)。体の器官が出てくる歌詞の少し不気味でグロテスクな世界が、remixによりより深く表現されている。remixはその人の音楽の捉え方がよく出ると思う。オリジナルの良さを破壊して、ぐちゃっと雑に賑やかにしたremix、あれはマジでやめてほしい。

ninoheron - MOON
group_inouのcp氏のソロ。私はgroup_inouのファンではないが、力の抜けたような不思議なラップはクセになる。この曲はギター一本とボーカルのみ。展開も少なく繰り返しも多い。「悲しくはないんだ。なんだかやるせないんだ。」の歌詞に共感はするが、なぜこの曲を繰り返し飽きずに聴き続けてしまうのか、自分でもさっぱりわからない。group_inouの活動停止理由は知らないけれど、imaiさんファンの間でこの曲はあまり話題になっていないのはなぜが気になっている。

Urakami Kevin Family - 未熟な夜想
SUKISHAさんのお薦め。多重録音で宅録している学生の方らしい。今まではアカペラのカバー作品を公開されていたが、オリジナルも始められたそう。オリジナル2作目のこの曲が気に入った。高めの澄んだ声。「時の」の歌い方とか特に小田和正みたい。過去の話の歌詞のときは声もlo-fiというように声のトーンが展開し、様々な楽器の音も出てくるので単調にならない。

面白かったのは、試みや制作過程のパーツまで公開されているのと、ご自身で歌詞・コンセプト・鳴らしている楽器を書き出して公表されていること。
【実験】打ち込みドラムにおけるグルーヴ感の探究 (16th-note groove 編)

「ふるさと」リハモ&アレンジの過程

楽しい。ど素人の私でさえ、なんとなく理解できる。才能と教える能力は別という人もいて、確かにそういう天才もいるのだろうけれど、やはり自分が理解していなければ人に説明できない。感覚で作っている人と比べ音楽理論をわかって作っている人は、当たり外れがなく質が安定するんだろうなということを最近実感し始めている。

鳴らしている楽器を書き出して下さっているのは非常にありがたい。楽器の音が知りたくても膨大な時間がかかり、結果に辿り着けないことも多い上、正しいかどうかの保証もない。楽器がわかると他人とも語り易くなるし、語るためにさらに深く音楽を聴こうとする。甘やかしと批判する人はいるかもしれないが、聴き手を育てそれが豊かな音楽ファン層を作ると思う。ボーカルはClean/Distorted/Modulatedの3種類か。ここはWurlitzer、Hammond Organキター!グロッケンはどこで鳴った?Tubular Bellsってどんな音?てな感じで聴くことができ、とても楽しい。
構想の元となったご本人の思い出も素敵なお話。淡い恋なのか、それとも家族に近い安らぎなのか。終盤キーも上がって音楽も盛り上がり、少し間をあけてためた後、最後どんなメッセージがと思って耳を傾ければ「数年間、得をするのさ」。えっ、3年間電気代がお得みたいな?損得の話なの?歌詞を書いたことのない私が言うのもだけど、もうちょっと違う趣のある表現があるんとちゃいます?「数秒間、佇むのさ」も。音楽の作り方もとてもロジカルな印象を受けるので、具体的に「数秒間」というのはこの方らしい気もする。

以上

複数アーティストをまとめて1つのエントリに書いているのは意図的なんだけど、気付いてくれてる人いるのかな。目当て以外もついでに読んでもらえたり、タイトルから名前だけでも目にしてもらえたらと思って。長くなっちゃうし、分割した方が記事数もアクセス数も稼げるんやけどね。

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