長谷川白紙の歌が好き

GWに以前よく聴いていた音楽を聴き直していた。長谷川白紙氏が高校生の時ピアノ練習を配信していたのを、無性に聴きたくなった。良かった、アーカイブまだ残っていた。やっぱり歌がいい。すっと体にしみこんできて、ギュッと心臓を握りつぶしてくる。

 

肌色の川 (2016年8月31日リリース)
長谷川白紙氏を知ったのは、もちろんパソコン音楽クラブがきっかけ。鍋好きの鍋川鍋夫だから、パソコン音楽クラブで灰汁取りを担当してたよね。私が最初に聴いた曲はこの「肌色の川」だった。あふれているFuture BassやFuture Funkとは全く違うし、歌い方が上手くて驚いた。彼の声は「ギフト」だと思う。ずっと誰かに例えられないか考えているんだけど、結局ハイトーンボイスのどの歌手とも違う。高い声だが女性っぽくなく、むしろ色気がある。話すときも歌うような声で話すから、地声なんだろうな。作曲や演奏は知識や練習で良くなるけれど、骨格/声帯/鼻腔の形は訓練では変えられない。素敵な声を生かして作品を作ってくれて良かった。
リリース時のご本人の説明によると「同性愛やクラブカルチャーなど自分にとって大切なものに対してメチャクチャ後悔しているので人生終われ~という曲」とのこと。普段よく出てくる言葉で歌詞が書かれているので、聴きながらニヤリとしてしまう。「川」「水」「土」「皮膚」とか、温度や触り心地についての言及が多い。確か雑誌SWITCHのコラムも、水の熱伝導的な内容だったかと。
イントロだけは元気が良すぎ軽やかな音がペラい感じがして、私は苦手。乳糜湯気も横顔 Sもイントロから元気いっぱい、彼の作品の特徴なんだろうか。メロディはどこを切り取っても好き。4:23あたりの「パラッ、パラッ。」とか特に彼らしくて好き。
アートワークは彼の映像作品の中にも出てくるグラフィック。次の映像作品、いつか観れるといいな。

 

綿の中 (2016年3月16日リリース)
「ゲームばっかりやっていちゃダメだぞ!と怒られたので布団の中でこっそり続ける歌」だそう。ほんまか?最後「恋をする」って歌ってるぞ。「埋める、灰をかぶる」とかが彼らしい。土の中が俗世を遮断して安心できる場所みたいなイメージなんじゃないかと、勝手に想像している。軽々しく「天才」とか言う人嫌いなんだけど、16歳の終わりか17歳の初めに作っているんだから、やっぱり凄いよなぁ。飛び跳ねるような軽やかさがあるが、乳糜湯気のように途切れないので聴きやすく、こっちの方が好み。歌い方のバリエーションが多くて声も出ているので、歌の観点で一番好きな作品。Anthem ageHaのでのスローバージョン、あんな感情のこもった歌い方はあまりしないので、生で見れて良かった。

長谷川白紙氏がマルチネからリリースしたとき、「長谷川白紙という才能を発掘したマルチネ凄い」みたいなコメントを目にした。確かにマルチネは、ブランド力や大規模なイベントを頻繁に開催し続けられる力があるし、どこにもない面白いライブを楽しませてもらっているので、尊敬も感謝もしている。ただ、彼はマルチネより先にFOGPAKから出していて、Ano(t)raksのOgasawaraさんも推していた。知られていないtrack makerの作品をコンピという形で出すことは、作り手の目標にもなるだろうし、才能を世に広める役目も果たしている。様々な形で支援する人達にも、もう少しスポットライトが当たり、何かしら還元されるといいな。

 

乳糜湯気 (2017年3月5日リリース)
「他の人のことは知らないから、これはまたぼくのエゴだが、愛している人たちも全員ぼくのエゴに負けるべきだという歌です!」。そうなんだ。ライブの前、難しい歌詞覚え直すの大変そう。7th FLOORでのグランドピアノバージョン、ピアノの音と比較してドラムの音が控えめで良かった。自宅から配信していたときもそうだったけれど、即興演奏しているときは楽しそう。ジャズピアニストのmappyさんはJazz SPOT Introでセッションをやっているらしい。長谷川白紙氏のジャズ喫茶やジャズバーでのライブ、セッションが見てみたい。
ヤコーさんがレーベルオーナーということを忘れがちなんだけど、ええ話やな。



横顔 S (2017年8月6日公開)
初めてこの曲を聴いたとき、蕩けた。「綿の中」や「肌色の川」が正しくきれいに歌っているのに対し、「横顔 S」は荒っぽさがあってエロい。出だしの「術からそう」「充たしましょう」2:50あたりの「術からそう」の歌い方のまぁエロいこと。ご本人も気に入ってらっしゃるようで、SoundCloudのコメント見てニッコリした。狙ってあの歌い方したんだろうか。「造形したい」の繰り返し、カウントしてみたらなんと9回、印象に残る。
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「乳糜湯気」と違って、凡人の私にも想像し自分の解釈ができる歌詞なので楽しい。冒頭の「術からそう 狂い出したから 光を消して 体すり替えて 充たしましょう」と「体躱し 智識を吐き出す音も 許せるようになる」の表現が特に好き。「同じ傷跡並べて そう 霧のような同意浴びたいの」とか、「土」「水」「撫で」る等、彼らしい(私の勝手なイメージ)。最後「ふたりで土を満たそう」、これまでの歌詞にはない「ふたり」でしかも語りかけというのが、良い意味で意外だった。



アイフォーン・シックス・プラス (2017年10月16日リリース)
先行リリースの「横顔 S」からが待った、長かった。「すぐ」以外は高速で、「誰かに追われているの?」と思うくらい急いでる。何回も聴くには疲れる。速いからと言ってハードにもダンサブルでもない。彼は時間の流れが速い世界に住んでいるのかもしれない。「フュー・スタディ P」のメロディはパソコン音楽クラブっぽい。「砂漠で」の歌の部分だけ繰り返し聴きたい。「すぐ」は、映像が浮かんでくる音なので楽しい。ぐにゃりと空気がゆがむ感じの音とか気持ちがいい。「綿の外は」は「綿の中」のアンサーソング的な関連性を期待していたのだが、深読みだったか。声が小さいしぼやっとしていて、作りかけみたいと思った。でも今回聴き直してみて、もしかしてレイ ハラカミの「終わりの季節」のようなイメージで作った曲かもしれないと思い始めた。それにしては、歌ではない曲の部分がシンプル過ぎる気がするが。「きれいな方角を夢見ている まだ 島の土は 気付きは分からない」の部分のメロディはいいな。
最新のメカニカさんのEPにしても、マルチネとしての意見を入れて改変すること無しに、アーティストが提出したものをリリースしてくれてるんじゃないかと勝手に推測している。マルチネっぽさとかがなく、アーティストのやりたいこと個性がそのまま出ているような気がして楽しい。

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