ZAIKO株式会社 取締役 Lauren Rose Kocher(ローレン・ローズ・コーカー)①
ceroのオンライン有料ライブ配信を成功させたZAIKO株式会社、その取締役であるLauren Rose Kocher(ローレン・ローズ・コーカー)氏の経歴が興味深かった。彼女は内閣知的財産戦略本部、構想委員会 コンテンツワーキンググループメンバーでもある。こんなに生き方や考え方が共感できる人が、国の施策に関わっていることに、僅かながら希望が持てる。
Lauren Rose Kocher(ローレン ローズ コーカー)
1986年アメリカ生まれ。2008年シカゴ大学卒。同年に来日し、翌年コンサート・プロモーターの株式会社キョードー東京入社。
2013年から株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントにて新規事業や渉外を担当。在任中は、洋楽アーティストの物販やキャンペーンの他、日本での国際音楽カンファレンス「Tokyo Dance Music Event」をプロデュースする。
現在はオランダの音楽ディストリビューション会社「FUGA」でJapan Business Development Representativeをしながら、多言語対応電子チケットプラットフォーム「ZAIKO」で取締役COOとして従事。2019年より内閣府知的財産戦略本部「構想委員会」委員に就任。Lauren Rose Kocher – Artists - MUTEK.JP - 電子音楽 × デジタルアートの祭典『MUTEK』
Zaiko K.K.
会社概要 | ZAIKO
有料ライブ配信の裏側とその可能性 カクバリズム×ZAIKOインタビュー
https://mag.digle.tokyo/interview/topics/74213
知的財産戦略本部 構想委員会 コンテンツワーキンググループ
以下、これまでの経歴がわかる、昨年8月のインタビューの和訳。
「Lauren Kocherは自分の道のために音楽業に従事します」
Lauren Kocher trades music for her own path - Japan Today
東京―アメリカ人のLauren Kocherは、挑戦から退くような人ではありません。音楽業界の企業の階段を登る準備ができているように見えたとき、彼女は飛び降りて、スタートアップのパラシュートを開き、会社を共同設立しました。
彼女は、現在、イベントのチケットプラットフォームを構築するZaiko PTE Ltd.の最高執行責任者です。このプラットフォームは、個人・コミュニティ・企業が使用できます。
彼女の経歴を振り返ってみても、彼女の起業家としての旅路が来るのが早かったのか、それとも彼女がリーダーシップの役割に手が届く方が早かったのかは、わかりません。それにもかかわらず、彼女はそうしました。
リードしたい欲求
Kocherが、大企業よりスタートアップのほうがいいと決心した瞬間はありましたか?そうでもありません。むしろ、彼女が目にした、何か新しいことをするのにまたとない機会であったというのが正しいようです。
「Zaikoがアジア市場で何をしようとするのに、これ以上良いタイミングはありませんでした。それは、データを元にした、多言語のホワイトラベルのチケットソリューションのプラットフォームを提供することです。」
(ホワイトラベル:ある企業が生産した製品を、他の企業が自社のブランドを使って販売すること)
そして会社員生活は概ね楽しいものでしたが、リスクを嫌うことは大企業の本質であるとKocherは信じています。挑戦が好きな人にとっては、スタートアップがふさわしい場所のように思えました。
「もう少し大胆なことをする時期が来たと感じました。自分の会社を経営するような、より大きなリーダーシップを取れる立場に本当になりたかったのです。」
それでは、リーダーシップは彼女がずっと望んでいたものなのでしょうか?そうです。
「自分にとても合っていると思います。しかし、企業の(出世)階段を登っている場合、キャリアのかなり後の方になるまで、そのような(リーダーシップが取れる)立場になることはまずありません。私はいつもボスになるために意欲が旺盛でした。多くの野望がありました。」と彼女は告白しました。
しかし、意欲だけで、リードしたいという欲求を十分に説明できますか?おそらくそうではありません。Kocherは、2つ目であるが同じくらい重要な説明をしました。
「最初の仕事をしてからずっと、私はエンターテインメント業界での仕事を楽しんでいます。この世界にはたくさんの性格や個性があるので、自己検閲(他人の感性や好みに合わせること)の必要はありません。」
エンターテインメント業界では、時として攻撃的であったり野心的な姿勢が報われることがあり、形式ばったものはあまりないとKocherは言います。強烈な個性が成功できます。「私はそれが好きです。」
さらに、音楽業界には、アーティストだけでなくマネージャーも含め、多くの女性ロールモデルがいます。ゲームのトップにいる女性がいても、驚くことではありません。
波風を立てる
シカゴから1時間ほど離れたインディアナ州の小さな町で生まれたKocherは、シカゴ大学に通い、日本語と歴史を専攻しました。
卒業して間もなく、彼女は日本に移住し、1年間英語を教えました。それは2008年でした。その後、ツアーやコンサートを含む音楽のプロモーションをする会社である株式会社キョードー東京に転職しました。
「ビートルズを日本に連れてきたことで有名で、海外と日本のアーティストのコンサートからダンスまで、あらゆるものをプロモーションしています。」
キョードー東京では、Kocherは海外アーティストの訪日に責任を持つゼネラルアシスタントを務めました。彼女はまた同社の会長を補佐していました。
「私は数年そこにいて、私の最初の音楽業界の仕事でした。私が基本を学んだ場所です。」
そうは言っても、それでもKocherは一人で進むことを恐れませんでした。彼女が企業の世界に慎重に足を踏み入れるやいなや、フリーランサーになると決めました。
「特に音楽業界のクライアントに、テレビ番組や企業の会議におけるゲストや訪日アーティストの付き添いの通訳として雇われました。多くは制作やイベント関係のでした。」
一回限りで、彼女は日本の音楽制作会社も支援しました。しかし、古くからの知り合いに、業界での経験と日英バイリンガルの能力を要するソニーミュージックでのポジションを薦められたとき、Kocherはそれを受け入れました。
「通常のアルバムリリース以外にも、One Directionのような国際的アーティストとのプロジェクトに取り組む機会がたくさんありました。」と彼女は思い返します。
6年間のソニーミュージック コーポレートマーケティング部門での役割は、日本における国内外アーティストの権利買収・マーチャンダイジング・宣伝・コミュニティ構築を含む、事業開発や新規事業を展開することでした。
しかし、Kocherは昨年末、再び実業界を去る決断を下し、今度はZaikoを共同設立しました。
乗車券
Zaikoのプラットフォームでは、サードパーティが独自のチケットサービスを作成できます。イベントの主催者であれば、それをホワイトラベルのサービスとして利用し、カスタマイズされたブランディングで独自のWebサイトを作成できます。
「APIを介してデータを制御し、我々の分析プラットフォームを利用して、ユーザーまたは顧客をより理解することができます。」
イベントを作り、認知度を高め、参加者に料金を請求する代わりに、Zaikoは、主催者が顧客とユーザーのデータを制御できるようにします。
そこで疑問になるのが、Zaikoはどのように収益を生み出すかです。
「お客様がチケットを購入すると、販売手数料がかかります。ただし、他の企業とは異なり、イベント主催者はユーザー料金の額をコントロールできます。」と彼女は付け加えました。
Zaikoの顧客には、個人や企業内イベントだけではなく、メディア企業や音楽フェスの主催者も含まれます。劇場、ファンクラブ、ソーシャルメディアのインフルエンサーもこの流れに乗っています。
夢を紡ぐ人
ザイコはまだ創業1年目です。とはいえ、これまでスタートアップを共同設立した中で、Kocherにとって最もやりがいのあったのは何でしょうか?
「ゼロから企業文化を創造する機会を持つこと。」
自分の会社を設立しようと考えている人、特に企業の(出世)階段を登ろうとしているように見える人に、飛び込むことを勧めますか?
「事務用品の購入、清掃、カスタマーサポートの提供など、全て処理しなければならないため、中小企業は簡単ではありません。私の生産性を大きく低下させるこれらのタスクについて甘く見ていました。」と彼女は言いました。
しかし、それはほんの始まりにすぎません。スタートアップは資金や収入の流すことを必要としています。ですが、適切な資金レベルが明確であることはめったにありません。起業前への資金提供は十分ではないようであり、連続した資金調達により、会社の維持管理能力について評判を落とすかもしれません。
「日本では、具体的には、企業のベンチャーキャピタルの選択肢は山ほどありますが、約束通り利用し相乗効果が得られることはめったにありません。時として、両方において最悪です。
「潜在的なクライアントは、あなたに大きな後援者がいることを知っており、それが理由であなたを信用していません。しかし、その後援者は1回限りの財政支援を提供するだけであり、ビジネスを推進したり、専門知識を共有したり、収益に貢献したりしません。」
挑戦する彼女
Kocherは、特に女性の創業者に対してのアドバイスとして、自らの価値を知ることを勧めました。
「自分の会社を始める前に経験を積む必要はありません。あなたは、今、始めることができます。全世界で自信があるふりをして。」
より多くの経験を得ようとする代わりに、女性にもっと多くの支持者を獲得するように勧めました。「特にあなたが若い場合、残念ながら投資家や潜在的なクライアントが、他の人ほど真剣に受け止められることはありません。したがって、100%あなたの味方になって、あなたが躍進するのを支えてくれる、その分野で尊敬されている著名な業界人がいるのは良いことです。」
そして、迷いがあるときは?「その気持ちは無視してください。それは家父長制が言っていることです。」