Coachellaブッキングの秘密 Paul Tollettのインタビューから

フェスに全く興味のなかった私が、Coachellaはあれほど楽しめたのはなぜだろうと考えていた。答えは全てCoachella創設者Paul Tollett氏のインタビューにつまっていた。

Tollett氏は、世界中から何十万の人がアメリカ以外の音楽も聴きに来ると確信し賭けに出た。競争力のある国際的なアーティストを求め世界中を旅し、南極大陸以外の全ての大陸のアーティストをブッキングした。
BLACKPINK(韓国)/Perfume(日本)/Nina Kraviz(ロシア)/Christine and the Queens(フランス)/Rosalía(スペイン)/Mr Eazi(ナイジェリア)/J Balvin(コロンビア)/Mon Laferte(チリ)/Calypso Rose(トリニダード・トバゴ)/Tame Impala(オーストラリア)
Nina Kravizはシベリア出身。モスクワの大学に進学し歯科医になり、DJとプロモーターも兼業。宇宙飛行士の歯の治療をするまでになったが、その後世界的にDJになる。Nina KravizはCoachellaにこれまでも過去2回出演していたが、Tollett氏はこういった経緯を今回初めて知った。(Paul TollettにNina Kravizがモスクワを案内する様子も)


Tollett氏は78歳のCalypso Roseの名前と3曲を知っていたが、最初ブッキングしていなかった。フランスにいたときにある人から見せられたCalypso Roseの映像がとても良く、既に埋まっていたブッキングに追加することにした。Tollett氏はトリニダード・トバゴに足を運びCalypso Roseの話を聞き、彼女を紹介する映像を撮って出演の前に流すことにした。
Coachellaのカラフルな塔は、西アフリカ ブルキナファソのFrancis Kéréの作品。彼は酋長の息子でベルリンに留学して建築家となったが、帰国後村のために学校を建てた。以前村では誰も読み書きできなかったが、今では学校で二等辺三角形を学んでいる。

音楽の収益化というよりは、アーティストのストーリーを表に出すだけのこと。フェスのポスターを見ると150の名前がぼやけていて、次は誰だかわからなくなる。彼らがCoachellaに出演を果たすまでに何をしなければいけなかったかを見せる。
Tollett氏は20年前、レイブやヒップホップやパンクといった様々なジャンルの音楽のオーディエンスが混じり、一つの大きなオーディエンスになるというコンセプトを持っていた。今は音楽ジャンルではなく国という観点で同じようなことをしているが、例えばアメリカで収益を上げていないロシアの音楽をアフリカの人たちと楽しむことができるかという問いについて、Tollett氏はお金が全てだとは思っていないと。国境はなくどこの国の人でもCoachellaに出演したりCoachellaに来て楽しむことができる。ストリーミングを聴いているとき、どこの音楽かは気にしていない。

インタビューからCoachallaブッキングの主な特徴は3点。
①多様性(性別/年齢/ジャンル/国)
②チャートに囚われないブッキングの目利き
③アーティストを人として捉える
グローバルチャートのトップには出てこないポップソングや、EDMだけではなくテクノやハウスDJも多く組まれていた。Glastonburyには、Janet JacksonKylie Minogueが出ていてそこまで古い人が出るのかと驚いたが、CoachellaはサプライズでJustin Bieber、Katy Perry、Selena Gomezが出て来たくらいで、私が知らないだけかもしれないが往年のビッグアーティストに集客を頼っていない。集客やどれだけ人気のアーティストを呼べるかを超越し、最高峰のアーティストパフォーマンスを見てきたプロが提案するラインナップ。ビジネス目線だけではなく、アーティストがこれまで歩んできた人生まで見ている。

日本のフェスも配信したりブッキングについて少しオープンになってきていることは歓迎するが、日本の音楽シーンだけから見ても偏っているように感じてつまらない。女性に人気のジャニーズや韓流アイドルは契約が難しいかもしれないが、例えばディーン・フジオカ菅田将暉らはブッキングされないのだろうか。

SNSで話題になったりんご音楽祭主催の「RINGOOO A GO-GO 2019」のことも調べて驚いた。「チケットノルマ費は参加費というよりも、集客リスクのシェア」って、オーディションというより普通にライブやって審査員の交通費・宿泊費を負担したら見に来てくれるみたいな仕組み。「10年くらい前までは地方都市を含め、どこのライブハウスにも来ていたメジャーレーベルのスカウトマンが、経済的な理由などで、大幅に減少しています。」?実力のあるバンドは音源も良いはずだからある程度音源を聴いて絞り込めるし、ビジュアルやパフォーマンスが売りのバンドは動画でもチェックできる。フェスオーガナイザーやブッキング担当者って、自分たちの経費でライブに足運んで発掘するのが仕事ちゃうんかいな。
「関東・関西・東海地区の1次審査」
持ち時間 20分 チケットノルマ 2000円×15枚=3万円
恵比寿 BATICA 12組 3万円×12組=36万円
恵比寿 BATICA ホールレンタル費 土日・祝日 ¥100,000以降 100%BACK
恵比寿 BATICAの場合、36万円-10万=差額26万円
(スタッフの1日の経費6万を引いて)20万円×1次審査40箇所開催=800万円
2次審査費用の補填、広告費や他のバンドのライブ動画制作費としてもそんなにかかる?協賛もたくさんついてるのに?バンドの方々、ノルマに慣れすぎだと思うわ。自分たちでライブ動画作ったりレーベルの人招いたり、ネットで音源配信した方が安くついて費用対効果が大きいと思う。結局「りんご音楽祭」という名前で金払ってくれるなら審査して宣伝してやってもいいよみたいなことで、日本の音楽の将来のために自分たちが何ができるかなんて考えてなさそう。

Coachellaのような考え方のフェスが日本でも増えてくれればきっと行きたくなると思うし、Coachellaをアジアでも開催してほしいな。

Coachella後のInstagramフォロワー数とSpotifyリスナー数の変化(2019年6月18日時点)この後Perfumeがインスタライブをすることになり、6月29日にフォロワー数を確認したところ3千人増加していた。BLACKPINK、Perfumeのリスナー数が減っているのは、Coachellaからの揺り戻しか。f:id:senotic:20190704215602j:plain

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