受け止める強さ Lucky Kilimanjaro

家の近くで大きな落雷。急いで、PCやwifi等、冷蔵庫以外の家電の電源を抜く。こういう時、ラジオが聞ける携帯音楽プレイヤーが役立つ。ちょうどokadadaさんとtofubeatsさんがDJしている時間。最近はラジオもネットで聞いているから、ラジオ局の周波数なんて覚えていない。ザッピング。
ある曲が流れ、歌詞に引き込まれて手が止まる。

Lucky Kilimanjaro「光はわたしのなか」

何もなければ恵比寿Liquid Roomでワンマンだった、その週に出された新曲。この現状でしか生まれない歌だ。厳しく先の見えない現状を詩的に、乗り越えるための方法はユーモアを交え、「僕はこうするよ。」と強いることはない。踊り方を忘れても大丈夫、無力感に苛まれても落ち込まなくてもいい。聴き手への思いやりが優しい。喪失感に押しつぶされそうになるが、この先の夏を心に思い描くだけで、少しは前向きになれる。確かに、隠れて見えないだけで、未来を失った訳じゃない。今できること、失っていないもの、楽しみな未来に目を向けさせることで、人を元気にする。言葉の力。

Lucky Kilimanjaro、名前は知っていた。the oto factoryの神納さんが、SNSで大瀧真央さんの名前をよくつぶやいていたから。ちらっと曲聴いてみたかもしれないが、シティポップのバンドだと思い込んでいた。何曲か聴いてみたら、アップテンポなダンスポップな曲も多いのね。熊木幸丸さんの歌詞が良い。

Lucky Kilimanjaro「HOUSE」

1年後を予見したかのような、Stay Homeにぴったりの歌があった。演出・振付・パフォーマンスもよくできたMV。

いわば部屋のプロフェッショナル
泣く子も黙るインドア派
外では恥ずいけどここでは踊り放題
骨を埋める覚悟よ

BPM125
部屋で爆音のミュージック

Lucky Kilimanjaro「ひとりの夜を抜け」

歌詞が刺さって、明るいうちから、おいおい泣いてしまった。昔の自分にこの曲があったら、救われただろうな。自分自身が救ってあげられなくて、過去に置き去りにしてきた気持ちを回収できた気がした。寝付けず、夜の街を散歩するようなMV。ロケ地、アングル。何気にソーシャルディスタンスが完璧で、笑っちゃった。

インタビューも、共感できる点が多い内容だった。単に楽天的で明るいのでなく、人の痛みやコンプレックスも受け入れた上での前向きさを感じた。

熊木:僕は、シーンがどうこうってことにあまり興味がないのかもしれないです。どういうバンドが今のシーンを席巻しているかって周りに目を光らせることは重要じゃない。それは、すぐに変わっていくものだから。

それよりも僕らの音楽を聴いたお客さんが、どんなふうに踊ってくれてるかのほうが大事なんです。毎日踊ってほしいし、毎日を楽しんでほしい。そのためにどんなことができるのか。そっちに注力したい意識が強いですね。

Lucky Kilimanjaroの所信表明。怒りを捨て、自分の人生を踊れ - インタビュー : CINRA.NET

熊木:今って「多様性」という言葉がよく使われますけど、突き詰めると「他者を尊重する」ってことが大事だと思うんです。ただ、無暗に「尊重しよう!」みたいに言うのは違う。まずはその人が何を思っているのか、どういう生活をしているのか、それを知ることによって、やっと相互理解が生まれると思うんです。そういう考え方は、僕らの活動の根底にあるものだと思います。

Lucky Kilimanjaroの所信表明。怒りを捨て、自分の人生を踊れ - インタビュー : CINRA.NET

他人に合わせて自分を変える必要はないが、自分とは違う考えを理解して受け止めるって、とても難しい。それができるのは本当に強さだと思う。

メロディも歌詞も気に入ったのだけど、編曲っていうのかな、少し物足りなさを感じた。変化や厚みのない、音数が少ないメロディがループしている部分が多いような気がした。シンプルなボーカルを引き立てるために、わざとそうしているのかもしれないけど。メロディや歌詞を一から生み出す方が難しくて、リミックスやアレンジが得意な人はたくさんいると思うので、その人たちに任せたらどうなるか聴いてみたい。

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