坂本龍一 with 高谷史郎|設置音楽2 IS YOUR TIME @NTT ICC

f:id:senotic:20180222155356p:plain

 

 作品は撮影禁止。奥に被災したピアノ、50cm四方くらいのディスプレイとスピーカーがセットになったものが両端に5台、奥の壁面と手前にスピーカーが1セットずつ。床に大きな古いラジオが1台。照明はディスプレイの光と、被災したピアノを照らすライトのみ。床はカーペットが敷かれていて、足音がしにくい。ディスプレイは白単色、荒いドットで雨粒のような動画が表示されたり、全面が光ったり逆に消えて暗くなったり。スピーカーからは雅楽の笙のような音が流れているときと、ピアノの単音が流れている時間が長かった。シャベルで砂利をかくような音も少し流れていた。被災したピアノの鍵盤をたたく装置があり、ときどきピアノの音がする。リズムはなく、単音をたたく音だけ。インスタレーションは、10分くらいの作品が繰り返し展示されることが多いが、どうも作品の時間が長いようで、長時間いなければ全てのパターンを鑑賞できないのではないかと思った。「椅子が欲しかった」、「床に座って鑑賞した」というのを目にしたが、寝転がって体の力を抜いて音と光に体をゆだねてみたかった。スピーカーは高い位置にあるので、立って歩きまわることを想定しデザインされていたのかなと思う。

日を選んで楽器生演奏と朗読も鑑賞。スピーカーからの音は消え、4名が楽器を演奏しながら展示スペースを歩き回る。音楽というより、4人が一つの音を何秒間か出し、また次の音を出すのを繰り返す。リズムはない。弦楽器も管楽器も、歩きながら同じ音を均一に出し続けるなんて、苦行みたいだった。どこで鑑賞してもよいとのことだったので、遠慮せず真ん中に。目の前やすぐ後ろを生の楽器の音が通り過ぎる感覚は心地よく、そこに突然被災したピアノの音が重なり合うのも面白かった。背中越しにクラリネット生音を初めて聴いたが、優しくこんなにも深みのある音だとは知らなかった。ヴィオラの方が花粉症なのか、鼻をすすっておられたのも、生身の人間だからこそ。朗読は、ランダムに並んだ1、2、3の数字を読み上げるというものだったが、聞いているうちに自分も参加したい衝動にかられた。鑑賞者全員で、1、1、2、3、3、2、3とぶつぶつ言いながら動き回ったら、楽しそう。(書いた後、3、1、1(3.11)と言っていたんだろうなと気が付いた。「楽しそう」と書いて不謹慎かもと悩んだが、率直な感想で震災に対してそういう気持ちはないし、悲しい気持ちになるのが正しいことなのかわからない。盆踊りとかもあるし。)

池田開渡(ヴィオラ),大石俊太郎(クラリネット),上運天淳市(バスクラリネット),古田泰一(ヴィオラ

生演奏の日というのもあってか、平日だが人は多かった。私は作品を体験して特に何も感じなかった。坂本龍一という名前を隠したとして、この作品をどれだけの人が評価するのだろう。

Copyright © 電子計算機舞踏音楽 All Rights Reserved.