土岐麻子 『美しい顔』あらゆる猫の毛の模様を美しいと思うように

中学生のとき、同級生に毛深い女の子がいて、恐らく剃って処理するのが難しいから脱色していた。脱色した毛は金色でフサフサになって、陰でライオンとか言われていた。今思い返すとひどい話だ。眉もまつげも濃くて、くっきりした顔のとても美人だった。
最近は、男性もすね毛を脱毛しないといけない風潮らしい。剃る生やすの自由があって選択したならいいと思うが、毛のないスネが美しいと思うのは本当に自分の価値観なのか、周りの価値観に影響されていないか。毎日のように目にする脱毛・ダイエット・シワ取り・増毛の広告。胸毛やへそ毛は、セクシーさの象徴だった。そういえば、髪の薄い男性もあまり見かけなくなった気がする。良くなるどころか、ますます生きづらくなっている。

土岐麻子さんによるナタリーの連載記事。ご自身の経験を赤裸々に語り、歌に込めた意味を解説しておられた。

私はあの女性の泣き顔から、脅迫された人のパニックを連想した。世間の美の価値観とは、そう、ときに脅迫的で暴力的である。「あんたつまらない顔ね」「若いのにさー。メイクさん、この人のほうれい線なんとかしてあげてよ」「なんでこんな顔で写ったんだよ? 俺がどれだけがんばってこの雑誌の仕事取ってきたかわかるか!」全部私が20代前半、仕事関係の人たちから言われた言葉だ。

その言葉にも腹が立つし、あの場で正当な主張ができなかった自分にも腹が立つのだ。私が反抗しなかったことによって、彼ら彼女らは無自覚のまま、私のあとにも、同じようにまた別の誰かを傷付けたかもしれないからだ。自分の中から生まれた価値観ではなくて、誰かから突き付けられて脅された刃物のような価値観によって、毎日が生きづらくなること。私は自分を含めたすべての人が自身の価値を信じて、それぞれの尊厳を保てるような世の中になるべきだと願っている。

そういう思いから、去年の秋に「美しい顔」という曲を書いてリリースした。あらゆる猫の毛の模様を美しいと思うように、あらゆる人の持って生まれた姿を当たり前に尊重する世界が、もし100年後にあったとしたら。100年前の祖母の姿を見て思いを馳せる女の子の曲にした。

MAMAMOOから学ぶ、生き方の構え | 大人の沼 ~私たちがハマるK-POP~ Vol. 2 - 音楽ナタリー

土岐麻子 『美しい顔』

邦楽でも、これくらいメッセージ性のある歌があるんですね。しかもavexから。

土岐麻子 『Gift~あなたはマドンナ~』

一方、こちらは2011年の歌。サビの「あなたって不思議だわ あなたっていくつなの?」で、美魔女を称えるアンチエイジングの歌だと思い込んでいたが、フルで歌詞も読んでみたらだいぶ印象が変わった。(私は、アンチ・アンチエイジングで、加齢を受け入れられないのは、かっこ悪いことだと思っている。)

その土岐麻子さんが、K-POPについて語る連載も面白い。K-POPはメディアが分かれているから、総合的な大衆音楽メディアで、ここまでがっつり詳しいファンが語る記事が珍しい。K-POPメディアは、ファンが読むので、ファン以外が読むにはつらい。話は女性割礼にまで及んでいて、以前から音楽ナタリーは時々良い記事があるとは思っていたけれど、かなり攻めたなと。推しの見た目、歌やダンスを褒める記事はいくらでもあるが、推しから影響を受け学ぶということを書いている記事はめったにない。私も、Dorian Electraから気付きや新しい視点を得て、それについて熱く書いてきたので、同じような音楽や文化の楽しみ方をしている人がいることがとても嬉しかった。

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