Stray Kids 『神메뉴』 見る側の目線を追求した映像

彫刻は見る角度で印象が変わって、360度から楽しめるから好き。家には、ついつい集めてしまった仏像とか動物のフィギアが並んでいる。人間や動物の形って美しいと思うんだよね。目が大きくて、顔が小さくて、手足が長いとか、そういうことじゃなく。ダンスや振り付けは、人が動いて形を作り、その形が次々に変化する。だから、目が離せない。

KPOPは全く興味がないので、Stray Kidsも全然知らなかった。映像切り替え・カメラワーク・振り付け・ダンスのクオリティが高く、釘付けになった。

映像切り替え

急に切り替わるのではなく、メンバーが手で振り払うようなしぐさをすると、動きと方向を合わせて画面がスワイプする。メンバーがカメラを手でふさぐパターンも。後は、視線を上下させたり、ゆっくり後ろを振り向くように、カメラを振って切り替える。切り替わった後も、振り付けとメンバーの位置が連続している。視聴者が見たい、その映像の主役が、必ず中心に映し出される。ブレずにぴったり真ん中。視線をキョロキョロ動かして目で追う必要がない。
急に切り替わるのではなく、切り替わるタイミングが事前にわかり、連続しているので、疲れない。ただ、踊る方も、映像を撮るのも編集するのも難しそう。

カメラワーク

大胆に動いたり回り込んだりするのに、ピタッと止まる。ピントがぼけたりしない。正に人の視線で。ファンの人は、お顔にズームインしてしっかり見たいだろうし、更に目線ももらえれば最高なんだろう。そのニーズを酌んで、叶えてあげている。人間の目は優秀だからパッと視線移したりできるけど、カメラでは大変なのでは。

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振り付け・ダンス

ここの少しずつ手や体の角度を傾けて回転させていく振り付けが面白いのだけど、振り付けに合わせ映像も傾いていくのが気持ち良い。確かにカメラが回転せずに固定したままだと、地味で物足りなったかも。

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ミュージックビデオのサムネイルにもなっている、左手は前に出し、右手を後ろで振り上げる振り付けは、ROSALÍA & Travis Scott 『TKN』でも似たのがあって、奥行きと立体感が出て良い。生け花みたいなもので。
振り付けのパターンがてんこ盛り、振り付けを考える方も、それをこなす方もすごい。手や足の稼働範囲がめちゃくちゃ幅広いのに、体の軸がブレない。足をかなり高く上げるところでも、肩の高さが全く変わらない。まとまりや統一感が出る。
人の動きに加えて、更にフォーメーションも動く。中心から外への広がったり、前後が入れ替わったり。それも、激しい振り付けをこなしながら。
MIKIKO先生の振り付けも独自性があって素敵だと思うけど、全部MIKIKO先生になっちゃう。この『神메뉴』の振り付けを考えた人や、ROSALÍAの振り付けを担当しているCharm La'Donnaはすごいと思うわ。

リリース後間もなく日本語訳も出ていて、人気を実感する。ただ、歌詞はめっちゃアイドルだった。私は重くてシリアスな歌詞や、IC3PEAKくらいの社会派でちょうどいいのでね。曲については、KPOPお決まりのセオリーなのかもしれないけど、バラードやラップのパートが挟んであって次々に展開していくので、冗長にならずテンポがよく、あっという間に終わる。もう1回聴こうかなとなる。

比較してどっちが良い悪いというのではないが、日本のミュージックビデオを見てみると、『神메뉴』の影像がいかに、見る側のことを考えて、手の込んだ作りをしているのかがわかる。
King & Prince『Mazy Night』


・不意に短い間隔で映像が切り替わるので疲れる
・離れた距離からで、人の映像が小さい
・フォーメーションを組んで踊っているのと単独で歌っている映像が関連がなく繋がらない
SixTONES(ストーンズ) - JAPONICA STYLE

・離れた距離からで、人の映像が小さい
・中心がずれる(映像の主役が右寄りや左寄りに映る)
・カメラが追えてない感じ(そういう演出なのか)

日本で売れている人の海外進出を見ていると、そうじゃないといつも思ってしまう。国内市場だけで十分なのかもしれないけど、せっかくアジア人で母国語でも勝負できる時代だから、うまく強みを生かして海外でも活躍する日本人が増えるといいな。

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