ファンを分け合う、フックアップする
海外でもそうだし、日本でも若い世代ほど、当たり前のようにライバルでもあるアーティストを、フックアップして(引き上げて)いる。フックアップすることで尊敬も集め、お互いのお客さんを分け合うことが、マーケットを大きくして活性化することになり、結局自分の利になることが自然とわかっているのだろう。
尊敬される
Aphex Twin
Aphex Twinが曲をかけたことで話題になり、有名になったアーティストへのインタビュー。私はAphex Twinの音楽は好きではないけれど、マイナーだったDJ Seinfeldの音楽まで掘って聴いていて才能を見抜いたのは、さすがかっこいいと思った。
What is it like when Aphex Twin plays your music? - Features - Mixmag
フックアップされたDJ Seinfeldが、日本人アーティストをフックアップしてくれている。
tofubeats
tofubeatsは、HARD-OFF BEATSやTHREE THE HARDWAREという自主企画はもちろん、大きな仕事であったはずの地上波テレビドラマ『電影少女 -VIDEO GIRL AI 2018-』の主題歌と劇半でも後輩を起用し、自身の連載でも公私混同になるのではと心配になくらい後輩を紹介している。後輩のリリパにも出演してあげている。フックアップされた後輩は自然と、更に無名のアーティストをフックアップしている。自分の知名度を惜しむことなく後輩に分け与えている姿勢は、tofubeatsのファンも、tofubeatsにフックアップされたアーティストのファンも見ている。きっと何倍にもなって返ってくると思う。
崎山蒼志
人気知名度共に十分、大物アーティストとのコラボとか、ちょっと無茶な我儘も叶えてもらえそうなセカンドアルバム。コラボに選んだのは、君島大空、諭吉佳作/men、長谷川白紙という若手アーティストたち。いやぁ、崎山さん、ようわかってはるわ。大御所アーティストと組んだとしても、大御所アーティストの年齢層の高いファン層しか取り込めないし、目の前の利は少なくても、若手と組んだ方が将来性がある。もし単純に、本当に好きなアーティストを選んだだけで、それが崎山さんの我儘だったとしても、それはそれで好感度が上がる。
マーケットを大きくする
Charli XCX、Dorian Electra、100 gecs
どう考えてもCharli XCXの方が有名だが、私は変な掘り方をしているので、先にDorian Electraを知った。YouTubeが関連動画としてCharli XCXのミュージックビデオを薦めてきたことで、Charli XCXを知った。コラボの大きなメリット。YouTubeのそのあたりのアルゴリズムは優秀。コラボしてくれたおかげで、Dorian Electraだけでなく、Charli XCXも聴くようになった。更にCharli XCXのコラボアーティストも聴くようになり、聴く曲数が増えていってる。Dorian Electraの曲は限られているし、ずっとは聴けない。なので、Charli XCXを聴くようになったからと言って、Dorian Electraを聴く量は減らない。
今年のCoachellaにも出演する100 gecs、以前SNSのタイムラインでみかけて、1回だけ聴いたときは理解できなかった。Dorian Electraを聴きまくった後、コラボ企画で名前を見て、もう一度聴いてみたら、以前の印象とは違う。好きまではいかないけど、なるほどそういうことかとわかった。音楽の聴こえ方、解釈が変わるのって面白い。
ファンを共有する
崎山蒼志、sasuke、KEEPON
崎山蒼志(17歳) 初の自主企画『人間旅行』の出演者に選ばれたのは、sasuke(16歳)とKEEPON(16歳)。年齢はほぼ同じだが、音楽の種類や経歴が異なるので、ファン層がそれほどかぶらない。ただ、経験や年齢にこだわらない音楽好き、若手を応援しているという共通点がある。3アーティストのファンを集めて共有し、共演者のファンにもなってもらおう、そこまで狙っていたかは知らないが、実際そうなったのでは。
初めての自主企画「人間旅行」ありがとうございました!!
— 崎山蒼志 (@soushiclub) 2020年2月7日
KEEPONさん、SASUKEさん 素晴らし過ぎるお二人に出演いただき(ライブも"超絶"に素晴らしかったです……感涙) 本当に感謝感激な1日でした pic.twitter.com/V5710VTFSW
自分が17歳だったら、絶対同じテイストの人で組んじゃうな。sasukeさん、KEEPONさんとはね。KEEPONさん、知ってます?
家ついて行ってイイですか?でとんでもない企画やってる。これ新しい新宿のユニオンやん。おれも家来てもらっていいからレコード買ってもらいたい pic.twitter.com/6dXjtGkJy5
— 渡瀬賢吾 (@yolakengo) 2018年5月9日
歌詞にユーモアがあって、個性的で男性らしい美声。歌の表現力が豊か。演じるようにというか、浪曲、ストーリーテリング的な。
浦上想起、松木美定、MON/KU、浜本談子
浦上想起、松木美定、MON/KU、浜本談子らも、一人一人のファンはそれほど多くなかったと思うのだけど、去年の5月くらいに実際に対面されたみたいで、そのときにSNS上でそれぞれのファンが共有された感があった。私も、浦上想起は知っていたのだけど、松木美定、MON/KU、浜本談子を知ったのはそのタイミングだった。
松木美定にTOWER DOORSから6つの質問――ジャズの影響下でポップスを生み出す異才メロディーメイカー | Mikiki
今は限られたお小遣いで、どっちのCD買うかを死ぬほど悩まなくてもいいからね。自分より上手いアーティストを紹介しても、そっちにお客さん取られちゃう心配が少ない。そいう背景もあるかも。
スイミー
CYK、Negative Cloud
音楽家もDJも、一人でやるより集団の方が見つかり易い。CYKやNegative Cloud、一人一人のDJの実力や個性が飛び抜けているのではないけれど、若くしてコンセプトを持ってやってることで目に留まり易い。
Maltine Records
Maltine Recordsというレーベルも、界隈の人として認識されることで、知名度を得やすい。互助会とか内輪ノリにならないように気を付ける必要はあるけれど。例えば今どきR&Bやってる少数派とかね、どんどん繋がって大きくできれば、多少は存在感を示せると思う。
VJ概論、NOBUAKI KAZOE
VJ新年会。DJはこういう横の繋がり、無理ですかね。KAZOEさんみたいなリーダーがいないから。
毎回同じ場所でやってて今年で3年目になる #VJ新年会
— NOBUAKI KAZOE (@nobuaki_kazoe) 2020年1月14日
2018年23人
2019年70人
2020年115人
で完全に場所のキャパを超えてしまった集合写真 pic.twitter.com/f2vHL1IDY7
中高年専業DJが、他ジャンルを見下したり、若手をメインステージに立たせなかったりすぐマウントしたりとか、そういうやり方してきた結果が、今の状況。
音楽はいいのに評価されていない人を思い浮かべたとき、やっぱり繋がり方がとても下手だと思う。もったいない。