Re:planter 植栽家 村瀬貴昭 個を愛しみ光を当てる @ GRADATION 代官山

取り壊しが決まっている元TENOHA代官山で開催されている展示、GRADATION 代官山に行ってきた。展示数は少ないが、建築ショールーム・事務所・レストランであった内装をそのまま生かした作品や展示もあり、とても楽しかった。

GRADATION 代官山
2019年11月22日(金)~12月15日 (日)
水曜 - 土曜 OPEN 12:00 / CLOSE 23:00
日曜 OPEN 12:00 / CLOSE 21:00
料金 当日大人 3,000円、前売り 大人2,000円 学生 1,000円、中学生以下無料

一番の目当てはRe:planterさん。DJ田村正樹さん→WWFM KYOTO→Y gionの順番で、1年前にY gionで個展を開催されたことがきっかけで知った。その後もKYOTO BALでの展示や法然院でのインスタレーションなど、何度もお名前を拝見するように。

人型植物体プロトタイプ 「環 - TamaKI 」KYOTO BAL

インスタレーション「electronic evening 2019 電子音楽の夕べ」法然院

写真を眺め続けて約1年、ようやく実物を見ることができた。天井から吊るされた丸いボール状のガラス瓶に、盆栽のように植物が植えられている作品。少し照明を落とした部屋に、15から20個くらい、目線の高さで宙に浮いている。ほんのりとした光に吸い寄せられるように近づく。

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瑞々しい苔の緑が鮮やか。中心に植えられた植物は、たわわに実をならせた木、食虫植物、立派な枝ぶりと様々。しかし、美しいものや奇妙に目立つものだけが主役ではない。たった1輪の弱々しい桜を咲かせた枝や、今にも朽ち果てそうな幹も中央に鎮座して、見る人を魅了する。人々が見過ごし価値を見出さないものにも、スポットライトを当て美しさを引き出す。私がブログでやろうとしていることだ。

「今にも朽ち果てそうな幹」に見えたものは、盆栽店の棚下から"救助"したものとのことだ。十分な栄養を摂らせて身だしなみを整えて、立派なお家に住まわせるけれど、薬を飲ませて花を咲かせたり、色水を飲ませたり、装飾をくっつけたりしない。根という足が美しいから、その美しい足が見えるように根を張らせる。それは、ありのままの美しさ。それぞれの個体と愛しみを持って向き合い、変えるのではなく、他人に良さを理解してもらえる見せ方/魅せ方を考える。

じっくり見ていると、小さな虫もいたりする。そして苔の種類の多さに驚く。種類と配置のバランスは、とても自然であり且つ巧みにデザインされたようにも感じる。ご本人がいらしたので伺ってみると、ある程度作る前にデザインをしていて、敷く土の種類により生える苔が変わるそうだ。土!基礎となる土台が作品を作るということか。俗世から離れ、日々植物と向き合う気難しい方ではと勝手に想像していたが、とても物腰柔らかく親切に説明して下さった。基本的に壁の前に置かれることの多い盆栽と異なり、人が立った目線にあり360度全方向から観賞することができる。地面に這いつくばることなく、地面に生えた状態が目の前に照らし出される。それにより、普段見過ごしている植物、特に苔の美しさ、そして植物の形状の面白さに気付かされる。

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少し背伸びをしたり、少ししゃがんでみたり、角度を変えることで表情を変える。細かい水滴でガラスが曇っている作品もあったが、息をしている正に生きた造形作品である証拠。照らされたことで絡み合った幹は影を作る。太陽光の下では見ることができない影の美しさ。部屋は暗くガラス瓶の中に照明があることで、ガラスの内側に植物の像が反射する。反射した虚像と実像との組み合わせ。蓋の隙間を少し開けて、空気の入れ替えができるようになっている。蓋に六角レンチが刺さっていた。そう、ねじ山はつぶれたりするし、ドライバーのデザインは大抵ダサい。やっぱり六角レンチよね。

<まとめ>
・見向きもされない個体の魅力を引き出す
・地面から目線の高さへ
・壁際の盆栽から360度鑑賞のアートに
・照明によりできる影
・ガラスの反射による虚像と実像

最初の写真の右手奥にワインセラーが写っているが、レストランスペースであった場所。カウンターの向こう側、暗闇に目を凝らすと、モザイクタイルでデコレーションされたピザ窯が。もう使われることはなく、取り壊しを待つ厨房の奥で、ほのかに1作品が光を発していれば、幻想的だったかもしれない。

興奮を抑えつつ、かぶりつきで存分に眺めることができて大満足だった。長くなりそうなので、他の作品は次回。

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