ONUKAのバズから考える音楽プロモーション

日本人の洋楽離れは私も実感している。お気に入りの曲を見つけて、SNSで検索してみても、日本人で聴いている人はほとんどいない。フェスでも外タレの会場がガラガラだったとか、観客が曲を知らないなんて話も去年目にした。洋楽のヒットチャートやグラミー賞を気にしてるのも、多くは中高年層なのではという気がしている。日本人はこんなに音楽が好きで、今はYouTubeSpotifyでタダ同然で世界中の音楽が楽しめるのにね。

そう思っているところで、ONUKAを紹介したツイートがバズっていた。

 去年、英語圏以外の海外のアーティストもたくさんブログで紹介したけれど、ONUKAがウケるとは。現時点、"いいね"が2.1万越え。ツイートがバズってるだけかもとも思ったが、ちゃんと聴いてみた人が感想を添えて自分のフォロワーにシェアしたり、アーティスト情報を求めてか検索までしている。(GoogleやYahooの検索からの私のブログへのアクセスも、一気に増えていた。ONUKAについて、ウクライナ語からの情報もひろって載せているのは私のブログくらいなので。)早速音源を買った人までいた。ツイート1つでこんなにバズって、あの手この手で必死でプロモーションしている音楽関係者にしてみれば、何やねんって感じだよね。洋楽離れはあるかもしれないけど、親切丁寧なプロモーションを、響く層に、影響力のある人が投下すれば、ちゃんと良さがわかって聴かれるってこと。たとえウクライナ語であっても。

ツイートの主は、フォロワー1.6万人。アンティークやゴシックテイストのアート・ファッション・カルチャー情報をセンス良くキュレーションし発信されている様子。「読んでみて」「これは買い」「やばすぎる」「売れる」などの言葉はない。音楽の発信はそれほどされていない。一般消費者目線で、ツイートを読んでみよう。
YouTubeのおすすめ動画に上がってきた」自分で音楽を掘っている、知人にPRを頼まれたのではない
「エンドレスで聴いている」自分自身が気に入っている
ウクライナエレクトロニカユニット」アーティストの端的な説明
「MVの世界観も素晴らしい。」音楽以外の鑑賞の視点
「きっと私のフォロワーさんにはこういう音が好きな方が多いと思うの。」親切心、コンシェルジュ的リコメンド
さらにフォロワー層にウケそうな写真が2枚添えてある。すごい情報量が1ツイートに。バズるのも理解できる。というか単純にフォロワーに親切丁寧。

ターゲティングと、ターゲティングの好みに訴える伝え方は大事やね。ONUKAのようにクラシカルでアンビエントな音楽でも、ターゲティング次第だとわかったのは大きい。やっぱりどう考えても、Native RapperさんのX'mas Nightは、TREKKIE TRAXの層じゃないもの。

それとやっぱり、ビジュアルの訴求効果。日本のアーティストはもう少し考えてみるといいと思う。お金をかけるということではなく。縮小する日本の市場だけでなく海外も視野にいれるならなおさら。日本語の歌詞で伝えられない分、視覚で補うこともできる。直近のブログエントリで繰り返し書いているように、音楽理論だけでなく、視覚表現やテーマも含め作品を評価する時代になってきている。Billboardアメリカのチャートには、YouTubeの再生数もカウントすることになった。なぜその衣装なのか、どういう場所なのか、光は何を表すのかなど。海外のアーティストはこだわりをもってミュージックビデオも作っているので、何を意味しているかわかると何倍も楽しめる。そう思って私のブログでは書いているけれど、日本の音楽メディアでは音とか音楽についてしか説明がなかったりして驚くし、がっかりする。

プロモーションの手段も多様化してしまって、何が正しいやり方かセオリーがなくて、色んな方法で数打たないといけないのは理解するのだけど、手あたり次第で雑な告知も多いように感じている。一般消費者として。ツイッターもインスタも宣伝ばっかりになっちゃってと言ってる人がいて、そう感じているのは私だけじゃないんだなと。元Spotifyの松島功さんのnote、ツイートの仕方に関してはPR色が強すぎて、私は全部無理だな。フォローしているアーティストが、毎日誰かしら「サブスクで一日5回フルで毎日聴いてください 拡散もお願いします」「〇万回再生されました!」とツイートしてたら嫌になる。YouTube再生回数1000万回とか、本当に大きな節目だったら一緒に祝いたいけど。
全アーティストのための音楽ストリーミング基礎講座|Ko Matsushima / 松島 功|note

可能ならば、布教はファンがやった方がいいよね。どのくらい愛されているかわかるし。seihoさんのgigが増えすぎてご本人が把握しきれなくなったときに、ファンの人がすぐにgig予定の一覧の送ったり、imaiさんがライブ終わりに次のgigがすっと出てこなくて、最前列のファンが代わりにすらすらと告知したり、そういうのを見て、私がパソコン音楽クラブのライブ予定をまとめたりし始めた。

アーティストへの要求でもなんでもなく思い出話として。長谷川白紙は、ピアノ即興演奏をPeriscopeで配信してくれたり、毎日ツイッターに自撮り上げてたり、好きな音楽紹介してくれたりして。パソコン音楽クラブは夜な夜なビンテージ機材鳴らしてくれたり、ライブ前は長谷川白紙も加わって大喜利始まったり。なんともまぁ、贅沢だったねぇ。結局あれは「長谷川白紙」「パソコン音楽クラブ」というブランディングになっていたように思う。意図せずに。

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