パソコン音楽クラブ 2ndアルバム 「Night Flow」

褒める内容ではないので、そういうのが嫌いな人はこの先読まずにこの頁を閉じて下さい。

Invisible Border (intro)
柴田さんが好きなやつですね。Local Visionsのコンピに提供した「조개」に似ている。得能直也氏マスタリングでツンツルテンになってないかが一番心配だったが、lo-fi感が残っていてまずは一安心。

Air Waves
「クラブミュージックってこういうやつでしょ。」とポキ山さんが解釈している音楽だと思う。パ音にはまってクラブに行ってみて、テクノやハウス専門DJによるDJミックスも大量に聴くようになった。結果、見えるようになったことがある。tofubeatsさんのDJも選曲の偏りはあるし繋ぎ方も個性的、TREKKIE TRAXが定義するダンスミュージックってものすごく狭い。クラブイベントではハウスっぽいライブセットにしてるつもりに見えるけど、だいぶ違うねんな。

Yukue
柴田さんかな。パソコン音楽クラブ感はあまりないけれど、以下のような制作もされてきたのでやりたいことができたのかなと。音楽も素敵なので歌無しバージョンも聴いてみたい。

reiji no machi
これもマスタリングし過ぎの心配をしたけれど、ポキ山さんが好きな茶碗を重ねた音のような張り切りハイハットと、OLDNEWTOWNのイントロと同じベースは消されず、しっかり鳴っていてニンマリ。イノウエワラビさんの歌は、個性がなくて無機質で前に出てこなくて印象に残らないのが良い。無個性なのに機械のように下手にならないのは、声の質がよくて歌う技術が高いからだと思う。私はパ音の初期の曲とまほちゃんの歌への執着しているので、イノウエワラビさんがこういう風に歌ってくれて良かった。MVの誰もいない真夜中の街の風景を観ていたらら、ふと大好きだった「朝が来るまで終わる事のないダンスを」のMVを思い出した。同じTao Tajimaさんの映像だった。小文字にしたのはレイ・ハラカミさんの影響か憧れだったかツイートしてた気がするんだけど見失った。

In the eyes of MIND
真っ先に思い浮かぶのは「SHE IS A」。これを作った経験を作品に昇華したのかな。ちなみに「SHE IS A」はプロがマスタリングしてないので、ノイズが楽しめる。

hikari
夜がテーマのアルバムの最後、夜が明けて朝日をイメージした曲だろうか。元気いっぱいのイントロが「綿の中」や「肌色の川」を思い出させて、いきなり長谷川白紙らしさ全開。00:50あたりから静かに鳴り始める馬がツッタカ駆けるような音も白紙さんらしい。白紙色が強すぎてパソコン音楽クラブ味は感じない。ゆめ胞子太郎のときもyuigotの色が全然見えなかったし、コラボして両方の味を生かして新たな味を作るのは難しいタイプなんじゃないかな。パ音の「Express 25」を聴いた白紙さんが感動し、高まったままベッドルームで耳コピした「Express 25」を弾いている動画がとてもとても良かった。鍵盤の左についてるダイヤルみたいなのをウニウニーッとしながら音揺らしていた。耳コピだけでなくアレンジされていて、音楽家というのはこういうことができてしまうのかと甚く感動したものだった。SAKANAMON「ミュージックプランクトン」 の白紙さんのカバーは、本家とはまた別の憂いに満ちた美しさで素晴らしいし、そういうコラボが向いているのでは。気になってるのは歌。声も出なかったり音程もあんまり安定しないなー(たまに外れる)、でも学生さんやし、段々うまくなるだろうと思っていた。本来は実演奏に不向きな曲でも生で弾きながら歌っているのだし、ゆるい歌い方または個性なのかもしれない。ただ、歌い方が違うとは言え、「綿の中」や「肌色の川」の方が正直上手かった。17歳でしか出せない声、20歳でしか出せない声がある。学業に制作にライブに寝る時間もないことだろうけれど、声の表現が豊かになれば生み出せる作品の幅も広がるかもしれないし、せっかくその美声で生まれたのだから、ボイトレもやってみて最高の状態で作品を残してほしいと私個人として願う。

曲を聴いてどちらかのお顔が浮かんでしまうし、アルバムを聴いていた世代としては、流れとか一体感は感じられなかった。全部良い曲だと思うし、今のパソコン音楽クラブを表現したアルバムなんだろう。でも、私が大好きなあの名曲もその名曲も入っていなくて、それを超える感動はなくて、いつアルバムに入るか今後入るかどうかもわからない、複雑。in the blue shirtさん、Native Rapperさんのアルバムもそうだったんだよな、一番期待して1年以上待っている曲が入ってなかった。

アルバムの紹介文、確かアーティスト自身がレコード店に提供しなくてはいけないのはわかってるんだけど、「マスタリングエンジニアには、tofubeatscero石野卓球等を手掛ける得能直也」って何ですか?スマホや一般家庭のスピーカーで聴いても、比較するものがないし、マスタリングの良さはほとんどの人がわからない。その文字数分で伝えるアルバムの良さはないんかいな。(無い訳あらへん。)立派な人にマスタリングしてもらったから、ちゃんと名前も出して感謝してる感が出ていてうざい。マスタリングされたきれいな音が売りなら、実機なんかで作らず、最初から復刻シンセで作ったらええんとちゃう。前はMVだってわざわざVHSに落としてダメージ与えて映像作っていたくらいなのに。
アーシャ(アーティスト写真)も。アーシャと向き合ったのは一歩前進。CZ-101もええ音するけれども、そこは鍵盤のないSC-88ProMU128抱えてほしかった。FedExのパーカー着て。マロンちゃんというマスコットがいながら、何でどこぞの知らん白い小型犬抱えてるんだか。パソコン音楽クラブのことも良さも文脈もよく知らず、リスペクトも愛もない人が撮った写真。

 映画みたい。柴田さんが生まれ育った町には、こんな素敵な路地があるのね。抱えてるのはラックシンセと思いきや、折り畳み簡易テーブルなところまで、ほんまに完璧で最高。ハブさんにしか撮れない温かい目線の映像。有名な人に頼まなくても、身近にこんな映像が撮れる人がいるのに。

 パ音に限った話ではなくて、マスタリングは得能直也氏、MVはTao Tajima氏、フライヤーはスケブリ氏、レーザーはheuz、写真は横山純氏など、マルチネ界隈標準化されてしまったらつまらなくなる。せっかくある多様な個性が失われている気がする。「冬セッション」「夏セッション」こんな個性豊かな音楽とMVを作れる才能があったのに、どんどんつまらなくなっていってる。昔のライブ動画見直していたら、毎回違う凝ったエディットや、何十年も前のドラマからのサンプリング、ライブでしか聴けない「4つ打ち講座」、上手さに思わず唸るような繋ぎなどあって、こんな面白いライブを毎回やってたんだなと改めて思った。クラブのDJミックスぽくを理由に最近手を抜いていませんか?何だこの面白くてかっこよくて手の込んだライブセットは。

毎ライブ逃すまいと必死だった。ライブの回数は増えたけど、ライブ自体楽しそうでもないし、ライブ後の方が楽しそうだし、行かなくてもよかったなと思うようになった。パ音が今後どういう活動の仕方をしようと私には関係のないことだし、私はこれからも、感動すれば音源を買い、興奮しながらブログにしたためていくだけだ。

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