改善する機会を逃したクラブ業界 (口をつぐみ、軽い謝罪を表明し、解散する)

Resident Advisorの特集記事の和訳。

失われた機会:業界観
RA: Missed Opportunities: A View Of The Industry

パンデミックによってもたらされたナイトライフの中断は、黒人コミュニティに悪影響を及ぼしてきた権力構造を再編する貴重な機会です。 過去数週間の出来事は、その緊急性をさらに増大させました。

今月初め、ベルリン拠点のブッキング エージェンシーOdd Fantasticは、10年に亘るビジネスの後、突然の閉鎖を発表しました。 チームに3年間在籍していたブッカーであるEnyonam Afiは、「適切な従業員の資格」がないと解雇されましたが、他のスタッフはドイツの社会保険プログラムのおかげで仕事を続けたとSNSで発言し、ニュースになりました。

Odd Fantasticと契約した3人の黒人アーティストの1人であるCarlos Souffrontは、会社が適切な説明なしに閉鎖したことに憤慨しているとResident Advisorに語りました。 「私は自分のエージェントから閉鎖について聞きました」と彼は言い、エージェンシートップのLisa Gobmeierは、全員に対して一緒に通知すべきだったと付け加えました。「始め、彼女は全てのアーティストにメールを送り、Enyoの発言を真剣に受け止めていると私たちに伝えましたが、エージェンシーの閉鎖については、私たちに話さないことと決断しました。」と彼は続けました。 Resident Advisorはコメントを求めましたが、Lisaから回答はありません。Russell E.L. Butlerも、Odd Fantasticと経験したことをツイートしましたが、この話についてはコメントを控えました。

Odd Fantasticは、ここ数週間で非難された後解散したいくつかのダンスミュージック機関の内の1つです。 アムステルダムのクラブDe Schoolは、パネルディスカッションで人種差別とセクハラの申し立てに対処した後、本日、パンデミックによる財政難のため閉鎖すると述べました。 先月、DJでアーティストのAnuがいじめを非難した後、ロンドンのコレクティブSIRENが解散しました。 Anuはその後SIRENの決断を批判しています。

多くの黒人・先住民族・有色人種(BIPOC)に言わせれば、これらの事件で、より健全なエレクトリック ミュージックのエコシステムへと移行するための機会を失ってしまいました。

ニューヨークのアーティスト、DJ Wawa氏はこう述べました。「好ましくないことを非難されたことに関して、ヨーロッパからの対応は、実際に何が起きたかを考えることすらせず、口をつぐみ、軽い謝罪を表明し、解散することに留まっています。この業界が改善するための機会を逃しています。」

パリを拠点とするDJ・プロデューサー・ライターであるChristelle Oyiri、別名Crystallmessは、こう付け加えました。「業界はこれらの申し立てに公に対応し、公の議論をすることを躊躇うべきではないと思います。透明性と謙虚さが、賠償と同じくらい重要です。なぜか?この数週間、重要な変化や行動を決意せず、口先だけで行われたことが少なからず見られたからです。」

Anuは、Resident Advisorに語りました。「これらの事件は、完全には独立しておらず、彼ら自身の個別の人種差別と組織的にそれに貢献してきたやり方を解決する、組織にとって絶好の機会でした。この人たちは、このBLM運動の大きな波の前に、自身が変化・挑戦・教育する機会を何度も与えられていました。より多くの目が向けられるようになり、今は気にしているだけです。」

7月のイベントでは、オンラインとオフラインの両方で、有害な振る舞いを非難されたとき業界が考えたことをどう対応するかについて、真剣な話し合いに火が付きました。広く議論されてきた大事な要素の1つは、重要な役割の人が傷つけた人たちと関わり、どのように過ちが起きたかを正確に理解する必要があることです。

20年以上DJを続けてきたデトロイト出身のCarlos Souffrontは、こう語りました。「権威のある人々は、非難されたとき、構造的人種差別と性差別の問題に加担してきたことを認めるべきです。それをすることで、自身の行動により共謀するのと同じことになってしまうと、最初に認識しなくてはいけません。」

今後、長期的な変化が必要であることは明らかです。 特に、箱は、人種差別主義者と性差別主義者のセキュリティとスタッフの報告にある黒人やLGBTQIA +の人々に対する敵意を小さくする役割を担っています。「ある晩パーティを開いていて問題があったのは、ニューヨークのとある箱でした。私は別のギグのため箱を離れなければなりませんでした。戻ったとき、バウンサーからトランス女性としての見た目と体裁の批判を失礼にも口にされ、私が彼らにとって魅力的でないと言って、再度中に入れてくれませんでした。この種のことは一連の出来事へと巻き上がりましたが、この種の扱いはずっとありました。」

黒人のトランス女性という私の見た目であることを中心として、多くの問題が起きます。黒人ではないかもしれない他のトランス女性は、多くの場面で異なった扱いを受けるので、注意してみると本当に面白いです。」とJasmineは付け加えました。

Carlos Souffrontはベルリンで出くわしたことを思い起こします。「私はBerghainでDJできるのに、客として行こうとして、私だけが有色人種の列に並び、なぜ拒否されたのですか?やはりAbout Blankへの列では有色人種は私だけで、私が選ばれ、セキュリティに嫌がらせされたのはなぜですか?」

ブラジルのBatekooパーティーのレジデントであるØníricaと、カンパラを拠点とするアーティストAuthentically Plasticは、Unsoundチャット中に他の解決策を申し出ました。「私たちのパーティでは、黒人とトランス女性をセキュリティとして雇わなければいけないです。」とØníricaは言い、セキュリティ全体がトランスの女性で構成されていたサンパウロのフェスについて説明しました。 「この場所に入った誰もが、自分たちは安全だとわかりました。」

Authentically Plasticも同様の話を共有しました。 「私たちがしていることは、性別非適合の人(従来の性別の概念に当てはまらない人)をドアに置くということです。人々がパーティーに来たとき、誰を入れるか入れないかは、ドアにいる人との対話によります。簡単なやり取りで、スペースにおいては、それが他の全ての標準的でない人々とどう作用するかで、あなたを評価することができます。

Authentically Plasticは、こう続けます。「ヨーロッパやその他、セーフ スペースと断言するパーティに行くといつも、非常にワイルドです。シス男性のセキュリティガードが誰を入れるかコントロールしているのがわかります。」

よりアクセスしやすくなるよう、業界として具体的に何をすべきか、今、多くの人が考えています。 デッキの裏・舞台裏・ダンスフロアにいたBIPOCを表に出すことを増やすことは、現在検討されているソリューションの1つです。

ロンドンのパーティークルー、Unbound Eventsの創設者であるCharles Olisanekwuは、こう述べます。 「表に出ることは、非常に重要です。私たちのイベントの黒人の人々は、我々がPOCアーティストをより多くブッキングしているから来たと私に話しました。我々のアーティスト選定の多様性は、人混みのより多様化を意味します。我々のギグでの黒人の人々は、ほぼ白人の人混みのクラブより自由でオープンに感じるとよく言っています。」

特に、割り当ては、ラインナップのBIPOCの数を増やすために広く議論されている方法です。 Odd Fantasticの名簿にいるアーティストEris Drewは、6月下旬にこれに反対しました。 「トランスの人として、私の見方はこうです。ラインナップはほんの始まりに過ぎず、深いレベルにあるアンチブラックネスと本当に戦うため、組織再構築にプレッシャーをかける必要があります。」と彼女は述べました。

Anuも同様の考えを共有しました。「音楽業界のキーパーソンは、この業界がマイノリティにとってよりアクセスできるようにすることを考え始める前に、プライベートや仕事での自身の振る舞いを確認することから始める必要があります。この点において教育が、踏み出す必要がある最も重要なステップだと、私は考えます。あなた自身とあなたの幅広いネットワークを教育しなければ、割り当ては無駄にみえます。

UnboundのCharlesは、こう言います。「私はこれについて楽観的で冷ややかです。ラインナップのPOCの増加は、形だけの平等主義として始まるかもしれませんが、最終的には自然に感じる大企業のスタンダードな慣習になる可能性があります。」

長期的なトレーニングプログラムも、表に出ること全体に対して不可欠だと考えられます。過去数か月の間に、何人かのタレントが、その趣旨で、メンターシップイニシアチブを立ち上げました。 ドラムンベース伝説DJ Flight、オランダのプロデューサーMartyn、Mary Anne Hobbs、Rhythm Section International 、Livin' ProofのRaji Ragsなども参加しています。

これらのコミュニティを阻んできたシステムに対する根深い欲求不満が、BIPOCが自分たちのインフラに投資するように呼びかける声を高めています。2018年、DiscwomanのFrankie Decaiza Hutchinsonは、ニューヨークで黒人の才能を称えるフェスティバル、Dwellerを立ち上げました。今年の5月、Gobstopper Recordsは、黒人のエレクトロニックアーティストによる音楽のみをリリースすることを発表しました。

アムステルダムのクリエイティブエージェンシーとプラットフォームのBureau Puntの創設者であるGhamte Schmidtは、次のように述べています。 「手助けにならないと私は考えている、形だけの平等主義の危険が、すぐそこに潜んでいます。なので、我々が必要としているのは、黒人のプロを助けることができる、より多くの黒人の機関です。これらは、黒人が所有するインフラと影響力の重要性を理解している人なら、誰でも利用できます。」

「余裕のある黒人アーティストは、仲介者を削減し、私たち自身の構造を作るためにより多くの資金を投入すべきです。」とCrystallmessは付け加えました。

Carlosはこの考えに賛成だと言いましたが、どうこの業界での分断と分離を加速し得るかについても指摘しました。「それでも、人種に基づいて切り離し、ネットワークを形成することが、唯一の解決策になるかもしれない。」と彼は言いました。

和訳は、以上。
最後わかるなぁ。私も、ある程度規模の大きなところを批判したりもしたけれど、変わるのを待ってなんかいられないし、自分で作ってやってるしかない。結局、「そうなるよねー、そうするしかないよねー。」と共感した。

日本も、音楽業界、音楽批評家・ライター業界、インディーズやクラブ業界、みんな狭くて閉鎖的。人気のある人が、力と権力を持ってしまう。おかしいと声を上げれば、仕事ができなくなる。アップリンクやカオス*ラウンジでのパワハラテラスハウス。ハラスメントを見て見ぬふりや、カリスマに意見を言えない雰囲気は、どこにでも多かれ少なかれあるはず。

UPLINK Workers' Voices Against Harassment
https://twitter.com/UWVAH

カオス*ラウンジ » Blog Archive » 弊社代表社員によるパワーハラスメントについて

日本は、好きなものだったら全肯定してしまうオタク文化アイドル文化が強く、問題を切り分けて冷静に判断するようなガバナンスが働きにくくなり、それがカリスマ性を後押ししているように感じる。つまり、間接的に、信者のようなファンも加担していると思う。例えば、テラスハウスも、過激さを望む視聴者、それによりビジネスが成立することが、制作の背後にあったはず。
最近よく言われていることだが、差別が何かわからない人は、恵まれた人生を送ってきた人だと思う。目の前で起こっている差別に気が付かない人、黒人の方やフェミニストが何を怒っているのか、何と戦っているかがわからない人。差別について繰り返しになるが、目の前で起こっている差別を認識できて、それに向き合って自分の行動を変えなければ、差別はなくならない。日本で起きているハラスメントについても、単なる個人間や特定の組織の中の問題として片づけてしまったら、議論をして理解を深める貴重な機会を失っている。

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