Dorian Electra - Edgelord (feat. Rebecca Black) ネット荒らしの言い分、無敵の人

Dorian Electraの最新作『My Agenda』はアルバムではなく、プロジェクト。インターネット音楽に見せかけて、ユーモアをもって現代の社会や政治問題に深く切り込んでいる。

Rebecca Blackとは

Rebecca Blackが13歳のときにリリースした『Friday』は、音楽批評家から酷評されたことで、逆にインターネットで話題となる。2011年3月東日本大震災が発生した週にも関わらず、それを押さえTwitterのトレンド1位に。
Who is Rebecca Black? And is she really bigger than Japan?

米タイム(Time)誌は、この曲は「大失敗」であり、ビデオについては「笑ってしまうほど恐ろしい」と評した。

酷評の中、レベッカさんはABCの番組「グッドモーニングアメリカ(Good Morning America)に出演し、心境を語った。
「こういった意地悪なコメントを初めて読んだときは泣いたわ。すべて私のせいだと思った。こんなこと、すべきじゃなかった、全部私が悪いんだって」

「史上最低」と酷評された曲、ユーチューブで大ヒット 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

現在は、Twitterのフォロワー数114万人の有名人。4月にクィアであることをカミングアウトしている。

ネット炎上やネット荒らし

Dorian Electraは、音楽誌American Songwriterのインタビューの中で、この作品とRebecca Blackとのコラボについて以下のように語っている。

そして、もちろん、Rebecca Black。 彼女とのこのコラボレーションにとても興奮しています。 『Edgelord(ネットを荒らす人)』という歌には、アイディアがありました。それは、領主と使用人のような中世の雰囲気に合うだけでなく、インターネットカルチャーと荒らし(ネットで炎上させたり嫌がらせをする行為)という今日の文脈にぴったりです。Trumpの選挙や我々が今いる文化的風土といったことにおいて、インターネットの荒らしやその他のオンラインの闇スペースが果たした役割を見ても、政治的です。
このプロジェクトの多くの歌で、私が本当に取り組みたかったことです。それら多くは非常に政治的であり、背後にあるコンセプトやテーマを練るのに多くの時間を費やしています。 同時に、楽しめる音楽を単に作りたかったのです。 それぞれ異なったレベルで動けるのは素晴らしいことです。

Dorian Electra Proclaims Their Agenda « American Songwriter

edgelordは、インターネットフォーラムにおいて、クールまたは尖っているように見せるため、わざと他のユーザーにショックを与えるような攻撃的で物議を醸すタブーやニヒルなことを話す人のこと。
edgelord | Dictionary.com

歌詞和訳

俺はお前を炎上させる奴だ
俺はお前を炎上させる奴だ
とても尖っている
俺を邪険にしたいのか?
わかった、俺がする
俺をまっすぐ端へ押しやるお前なんか必要ない

(注釈:「お前を炎上させる奴(エッジロード)」、「尖っている(エッジ―)」、「端(エッジ)」でかけてある。)

俺たちは社会に住んでいてる
いつだって俺みたいな奴を非難する
俺を端へ押しやる そうだろ
ぜってぇ、ぜってぇ、ぜってぇ、落ちるつもりはねぇ

1つ質問、なんでそんなに真面目なんだ?
俺がお前を怒らせたか?俺はとても好奇心が強い
俺の正体は謎に包まれている
ぜってぇ、ぜってぇ、ぜってぇ、落ちるつもりはねぇ

俺はお前を炎上させる奴だ
俺はお前を炎上させる奴だ
とても尖っている
俺を邪険にしたいのか?
わかった、俺がする
俺をまっすぐ端へ押しやるお前なんか必要ない

俺はお前を炎上させる奴だ
俺はお前を炎上させる奴だ
今端にいる
正に飛び降りようとしている
俺が飛び降りるのを見ろ
俺をまっすぐ端へ押しやるお前を道連れに
ハハハ(ひきつった笑い)

Rebecca Blackのパート)
ゲームに加わって6、7、8、9年
見せかけの涙の中をさらりと泳ぎ切る
最上席で優越感を感じている
あなたのちっぽけなゴミみたいなレッテルは吹き飛ばせるって言ったでしょ

尖った人生、ウキウキするくらい簡単
間違いなく幼稚園からこうしてきた
私があなたのお気に入りのファックボーイをシンプ(女性に尽くす男性)に変える前に
ちょっとでも見れたのはラッキーだと思ってね

(繰り返し)

ジョーカーの居場所

Dorian Electraはミュージックビデオの中で、映画『Joker』のメイクアップをし、ジョーカーのひきっつった笑い声真似て歌にしている。Edgelordは、ネット荒らしをする嫌われものではあるが、別の側面から見れば、世間から疎外され居場所がなく、自暴自棄になり「無敵の人」になったのかもしれない。Edgelord側の言い分が歌詞になっていて、それに気付かせてくれる。
Edgelord側だけでなく、ネットの嫌がらせをされる方の視点でも歌詞が書かれている。Rebecca Blackのパートの歌詞は、13歳で厳しい批評と誹謗中傷を受け、今やTwitterのフォロワー数114万人の人気者になった彼女の声を表している。今ネットの誹謗中傷を受けている10代に勇気や希望を与えるのでは。経験者が語ると説得力がある。
有難いことに私のブログも多くの人に読んでもらうようになり、一丁前にアンチの人も出来た。ブログの内容が明らかに間違っていて根拠を示して指摘されるのは全く問題ないが、書き方が気に入らないとか、書いてある内容と違う意味や意図で受け取られ、ある程度の数が一気に来られると、匿名でやってても身構える。誹謗中傷しているように見える人も、本人は嫌がらせのつもりはなく、正論を言って良いことをやっていると信じているからややこしい。バズらせる意図はないのに誤解されて悲しかったとブログに書けば、「悲しいのか」と喜んでいる人がいた。泣かせたり困らせたりすることに興奮する性癖は理解するが、生身の人間に対しナチュラルにやってしまっているマズさに気が付いていない。そういったことを実際に経験した今、「無視したらええやん。気にせんとき。」とは、気軽にもう言えない。炎上ネタはすぐに忘れられるけど、受けた傷は癒えない。

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