ひきこもり ディープテクノ (Save Your Atoll、Aaron J、Laura BCR、Qmico)

「quarantine(隔離)」という単語を、見ない日はない。感染者の隔離や、外出禁止で自宅から配信するDJも、自らの状態を表すのに使っている。「quaranta」はイタリア語で数字の40を意味し、ペスト患者を40日隔離したことが「quarantine(隔離)」語源だそう。

新しい音楽を探すのに飽きてしまって、3月は古い音楽を聴いていた。一番古い曲で1960年代から、好きな曲や知っている曲をリストアップしてみたら800曲ほどになった。私はDJではないから、こういう整理はしたことがない。邦楽を聴いてきた意識はなかったのに、自分が知っている曲の多さに驚いた。そのリストから年代順に、5年毎の自分のベストを選んでみるつもりだった。

3月中旬から、ウイルス関連のニュース、箱やDJの切実な叫びを目にするようになり、身の丈にあった課金くらいしかできなくて、もっと何かしなければならないような負い目や焦りを、ずっと感じている。心境の変化が影響するのか、歌ものやディスコなどの明るい音楽が入ってこない。なんか上手く聴けなくなってしまった。有名アーティストの過去のライブ映像が特別配信されたりしているのに、もったいないことしている。

オンラインDJの楽しさをわかってもらいたくて、特徴があって一般受けしそうなDJ配信動画を選んで紹介したが、実際は、暗くて地味なディープテクノ系のミックスを聴き続けている。ニュースを読んで心がザワザワしていても、和らげてくれる。

物語付きミックス
sakumaさんのDJを聴いて物語が浮かんだのだが、DJ自らが、物語やポエムを添えているミックスがある。物語とDJミックス、どちらが先だったのだろう。ただ、写真や映像ではなく、物語という言葉を組み合わせたDJには、親しみを感じる。

Save Your Atoll

イタリアのDJ。物語付きミックスシリーズを12話リリースしていて、その11番目。

"空っぽの部屋、黒い壁。
なんとなく、遠くの声に私は反応しました。
私は立ち上がって、道を探し始めました。
空っぽの部屋の黒い壁。
なんとなく、遠くの声に私を反応しました。
私は立ち上がって、道を探し始めました。
思考のジャングルの中で、私はドアをイメージしました。
まばたきすると、私は外にいて、周りは霧になりました。
私がどうイメージしたかではなく、私は考えようとしました。
別のドア、まばたきすると、私は外にいました。
もう一度試してみました。
私はいくつかのドアを通り抜けると、必ずいつも人気のない空っぽの場所に戻って来てしまいます。
何度も挑戦しようとし、遠くではなく高いところへ行くことにしました。
まばたきすると、私は外にいて、光に包まれました。
そして、私は自分の手が照らされているのを見ました。見下ろすと、自分の足と足の下の床が見えました。床のタイルそれぞれが、下の世界を映していました。
何十億もの人々が、もの悲しいシナリオを通して、歩いてドアを抜け、彷徨いました。
彼らの心は壊れていましたが、私たちはそれを知りませんでした。
誰がこのメンタルエンジニアリングの責任を負いますか?
私が想像していたものではありませんでした。
一瞬の光、私は外にいました。
私は先に進み続けるのではなく、戻って何枚ものドアを通り抜けました。他の人を探して、彼らに上に上がるように伝えるために。"

Aaron J

sakumaさんもミックスを提供されていた韓国のレーベルOslated。podcastシリーズも、シェアしてくれる曲も、気に入っている。ディープテクノ/アンビエント/エクスペリメンタルみたいな感じかな。そのシリーズに参加していたアメリカ ボストンのAaron J。

"Aaronは、イベント『Sure Thing』とポッドキャストシリーズを立ち上げ、エクスペリメンタルで境界を越えたエレクトロニックミュージックのオーディエンスをアメリカ中で育てる上で、重要な役割を果たしてきました。
Aaronは、キュレーターとDJという長年の経験を活かし、パフォーマーとして、テクノやテクノを超えた新しいサウンドで、催眠の旅を紡ぎます。彼のスタイルは、繊細なレイヤー・忍耐・細かいミキシングに重点を置いていて、リスナーをすっかり虜にし、完全に音楽へと溶け込ませます。"

 Laura BCR

先に紹介したAaron Jと彼の『Sure Thing』で紹介してくれるミックス、これがまた良い。そのうちの1つ。Laura BCRは、フランス出身で、今はドイツ拠点の女性DJ。これもポエムのような物語が付いている。

"使った時間
離れた地層
表す言葉もない
残されたものから逃げている
とても小さなささやき
物語を通して"

レーベル『Silent Season』のキャンプファイヤーシリーズにも、ミックスに物語が付いている。

"『Silent Season』は、カナダのブリティッシュコロンビアの自然に影響を受けたレーベルです。 『Silent Season』のサウンドは、深く幻想的な音楽と苔むした熱帯雨林のようなバンクーバー島の繋がりから生まれました。 世界で最もきらめく聴いて麗しいサウンドトラック。
世界中のアーティストファミリーと視界を共有し、耳にしたものをお楽しみ下さい。
くつろいで、目を閉じて、聴いてください。"

Qmico

日本人DJ Qmicoさん、DOMMUNEでプレイを拝見し、それからフォローしている。おじさんが「ぐーるぐるー」と言っているような曲と、最後夜明けを表現した選曲がお気に入り。

以上、私の愛する、地味で暗いひきこもりミックスの紹介でした。この類のミックスを、家ではなく箱で流すとき、オーディエンスの皆さんがどうやって聴いているか興味がある。音やそのミックスの世界に引き込むという説明がされているから、瞑想する感じで静かに聴いているんですかね。人としゃべっていると、静かな音楽は耳に入ってこなくなっちゃうもんね。物語だから、途中聴いていないと、ストーリー全体が解釈できないし。

需要は多くない音楽、でも私には必要。多様な音楽、音楽の選択肢があるって素晴らしい。一人でStay Homeでも、好きな音楽が傍にいてくれる。

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