韓国ナイトクラブでのCOVID-19クラスター、性的マイノリティーに配慮した匿名検査

CDC(米国疾病予防管理センター)のジャーナル。特別な方法は紹介されていないが、クラブやライブハウスの関係者の方がこれを読み、ある程度事前に想定しておけば、万が一のときに多少なりとも冷静な対応が取れるように思う。国やマスコミの批判、経済の話ばかりではなく、この種の情報も共有する人も増えてほしい。

以下、和訳。

『韓国ナイトクラブでのコロナウイルス感染症暴露と拡散』

要旨
少なくとも246のコロナウイルス感染症(COVID-19)症例が、韓国ソウルのナイトクラブに関連しました。4月30日から5月5日の連休中、全国からソウルのナイトクラブを訪れた若者がCOVID-19に感染し、全国的に広めました。COVID-19の拡散を抑えるため、ナイトクラブは一時的に閉鎖されました。

韓国では、2020年5月4日までに10,801人のコロナウイルス感染症(COVID-19)の確定症例がありました。累積症例数の流行曲線は4月には落ち着いていました。4月30日から5月5日のゴールデンウィーク休暇を前に、社会的遠距離政策の一環として、(それまで)閉鎖されていたナイトクラブが4月30日に再開しました。休暇期間中、ソウルの中心部にある梨泰院(イテウォン)地区には、全国から多くの人が訪れました。梨泰院は多様性のある街として知られており、米軍基地や複数の大使館、有名なナイトクラブなどがあります。

5月6日を皮切りに、連休中に梨泰院のナイトクラブを訪れた人からCOVID-19の感染が複数確認されました。梨泰院のナイトクラブに関連した症例患者からの二次感染が、全国各地でのCOVID-19の地方での感染に繋がっています。5月9日、ソウル市は感染拡大源をコントロールするため、ソウル市内のすべてのナイトクラブの無期限閉鎖を発表しました。その後、いくつかの地域では集団での集会が禁止されました。

ソウル市と龍山区庁は、ソウル市警察庁と協力して、4月30日から5月6日までの間に梨泰院の5大ナイトクラブを訪問した人の接触追跡を実施しました。携帯電話の位置情報、クレジットカードの記録、ナイトクラブ訪問者リストなどを利用して5,517人を特定し、そのうち1,257人を積極的に検査しました。さらに、携帯電話の位置情報から判明したナイトクラブの周辺で30分以上滞在したことのある57,536人には、検査を受けるように促すショートメールが送られました。

感染拡大の源となった箱が、ゲイのナイトクラブであることがメディアで報道された後、COVID-19の発生源はゲイの男性だという噂が広まりました。当局は、この噂がナイトクラブの訪問者の検査への意欲に悪影響を及ぼすのではないかと懸念しました。同性愛に対する偏見により、韓国の同性愛者は、差別や偏見を経験しており、自分の性的アイデンティティを明かそうとしないことが多いのです。そこで、ソウル市はセクシュアル・マイノリティ団体に相談し、同性愛者に検査を促す方法を検討しました。その結果、セクシュアル・マイノリティ団体は匿名での検査を推奨しました。その結果、ソウル市は匿名検査を導入し、患者に連絡を取るための携帯電話の番号を提供するだけでよいことにしました。レズビアン、ゲイ、バイセクシャルトランスジェンダーのコミュニティを通じて、保健所のスクリーニングクリニックがCOVID-19の匿名検査を実施していることを通知し、マスメディアを通じても匿名検査を宣伝しました。

梨泰院のナイトクラブを訪問した人を対象に、積極的に症例を発見するため大規模な検査を実施しました。検査前に現場にて患者の携帯電話番号を確認しました。また、陽性者に連絡を取り、陽性者層のデータも取得しました。5月25日までに実施された検査総数41,612件のうち、梨泰院のナイトクラブを訪れた人を対象に実施された検査は35,827件(86.1%)、梨泰院のナイトクラブに関連する患者への接触者を対象に実施された検査は5,785件(13.9%)、匿名の人を対象に実施された検査は1,627件(3.9%)でした。COVID-19の陽性率は、ナイトクラブ訪問者では0.19%(67/35,827)、接触者では0.88%(51/5,785)、匿名者では0.06%(1/1,627)でした。

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5月25日現在、ナイトクラブ関連の確定症例は246例報告されており、そのうち96例(39%)が一次症例、150例(61%)が二次症例でした。また、ナイトクラブ訪問者の推定発症率は1.74%(96/5,517)でした。ソウル在住の陽性患者118人(47.9%)のうち、一次感染者67人(56.8%)、二次感染者32人(27.1%)、三次感染者7人(5.9%)、四次感染者4人(3.4%)、五次感染者4人(3.4%)、六次感染者4人(3.4%)が確認されました。ソウルでは,9つの職場(複数の企業,陸軍基地,病院)と6つの複合施設(パブ,コインカラオケ,フィットネスセンター)でCOVID-19症例が確認されました。さらに、家庭内感染も7例確認しました。

要約、ソウルのナイトクラブ再開に関連したCOVID-19症例246例が確認されました。この感染拡大の接触者追跡を行うために、モバイルデバイスからの位置情報、クレジットカードの支払い履歴、地理的位置情報サービスのデータ、医薬品使用状況調査、公共交通機関での移動通過記録、オフラインのビデオ映像など、複数の形態の高度な情報技術を使用しました。パンデミックピーク後のCOVID-19発生率が低かったにもかかわらず、ソウルのナイトクラブへの訪問に関連したスーパー・スプレッドは、韓国での症例の復活に拍車をかける可能性がありました。

Kangさんは、ソウル市衛生局公衆衛生官で、主な研究テーマは感染症の疫学です。

和訳は以上。

積極的な検査と隔離を重視し、個人に配慮して柔軟に対応する。そのための費用は惜しまない。再発防止のため、フラットなデータに基づいた事実を公表する。当たり前のことだが、それがなされている。対策を怠ることはよくないが、感染が起きてしまったら、なかったことにはできない。目的は感染拡大を抑えることであるというのが、国やソウル市の対処法に表れている。日本では、未だにスムースに検査が受けられなかったり、保健所が濃厚接触者を絞り込んでいるようだが、感染拡大を収束させるという大きな目的を見失っているかのようだ。

日本でも大阪や東京のライブハウス、東京の舞台でもクラスターが発生したのだから、何が問題でどうすれば防げたのか、ケーススタディーができる。日本は失敗が許されない減点法だが、アメリカのような国では、どう防いでもインシデントは起きてしまう前提で、そこからどうリカバリーしたかも評価される。

「自分たちの箱や舞台からは、絶対に感染者を出さない。」というのは聞こえは良いが、結局それは自分視点なんだと思う。箱に来てくれたお客さんをコロナウイルスに感染させてしまって、命の危険にさらしたり後遺症が残してしまうことより、感染者を出して批判されることを恐れている。

「気を引き締めよう」とか「マスクはつけたままにしよう」ではなく、「叩かれるから写真や動画のアップはやめよう」なんだね。 

病気や感染防止について、自分たちにとって都合の悪い情報も含め、最大限の情報収集をして学んで、正しいと判断したなら、何を恐れることがあるのだろう。叩かれるとか同調圧力とか、関係ない世間一般の人に批判されたからって何なんだ。自分たちの大事な人の信頼と健康を損なわないでさえいれば、お店は守れるのでは。

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