Bizarrap Lollapalooza Argentina 2022 フェスにおけるスペイン語ラップでの踊らせ方

本ブログではおなじみ、アルゼンチンのプロデューサーBizarrap。地元アルゼンチンで開催のLollapalooza Argentina 2022に出演していた。

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自分の曲をかけるDJスタイルでのパフォーマンス。remix/edit加減や自分の曲のかけ方は正に「トラックメーカーのライブ」、間に挟む他人の曲のチョイスも唸らせるもので、増々好きになった。こだわりを感じさせるしっかり下準備されたセットリストで、大規模フェスのオーディエンスを踊らせた。

1:10 - NATHY PELUSO || BZRP Music Sessions #36 (スペイン)

つかみの1曲目は、BZRP Music Sessionsシリーズ最大のヒット曲、NATHY PELUSOとの曲で、一気に会場の温度を上げる。シンセ4台を配置している割に、ヤマハ音楽教室程度しか弾かない小室哲哉スタイル。フェス仕様にしっかりアレンジされている。皆歌詞を覚えていて大合唱。VJもまた素晴らしく、歌詞だけでなくリップシンクまでしっかり合わせてくる。

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4:20 -  El Alfa "El Jefe" x CJ x El Cherry Scom - La Mamá de la Mamá(ドミニカ共和国

5:15 - L-Gante || BZRP Music Sessions #38(アルゼンチン)

8:11 -  DILLOM || BZRP Music Sessions #9(アルゼンチン)

10:00 - FRIJO || BZRP Music Sessions #10(アルゼンチン)

NATHY PELUSOで盛り上がったムードを維持したまま、『La Mamá de la Mamá』のサビを短くかけることで燃料を投下し、会場全体に縦ノリの波を起こす。そこから一転、地元アルゼンチンのスロートラップへ繋げる。YouTubeで単独で聴いたときは、DILLOM || BZRP Music Sessions #9などは聴けたものじゃなかったが、フェスだとロックのシャウトみたいな感じで妙にしっくりときた。

11:49 - PTAZETA || BZRP Music Sessions #45(スペイン)

14:27 - Eladio Carrión || BZRP Music Sessions #40(プエルトリコ

16:45 - Chucky73 || BZRP Music Sessions #43(ドミニカ共和国

ここから、PTAZETA・Eladio Carrión・Chucky73と、踊れる早いスペイン語ラップが続く。トラップとEDMの両方を股にかけ、スローなレゲトン・デンボウ・トラップとは違う、EDMのDJが取り入れやすいようなスペイン語ラップを作り、流行らせたのがBizarrapの革新的なところ。PTAZETAとChucky73のラップは元から早口だが、さらにベースミュージックアレンジされた早回し加減が絶妙。

17:50 - RESIDENTE || BZRP Music Sessions #49(プエルトリコ

RESIDENTE || BZRP Music Sessions #49は、音楽的にあまり好みではなく、この酔っ払いおじさんは誰なのかなと調べもせずにいたが、グラミーをいくつも受賞している上、社会貢献活動人権活動もがっつり行っている活動家でもあった。Childish Gambino『This Is America』をもじった『This is Not America』が話題となっている。年齢・性別・有名無名に関係なくコラボ相手を選び、きっちりヒットさせるところが、Bizarrapの尊敬できる点の1つ。

Residente sobre "This is Not America": "Estados Unidos ha adoctrinado a mucha gente para que crean que es América" - BBC News Mundo

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RESIDENTEの口元の映像と音のリップシンクもバチッと決まった。J Balvinをディスる最新のヒット作、RESIDENTE || BZRP Music Sessions #49が始まるかと思わせ、聴かせるのはサビだけで次へと繋ぐ。

18:44 - Prezioso & Marvin - The Riddle (Radio Edit)(イタリア)

19:17 - DANI || BZRP Music Sessions #24(アルゼンチン)

21:13 - NATHY PELUSO || BZRP Music Sessions #36(スペイン)

21:40 - Snow Tha Product || BZRP Music Sessions #39(アメリカ、両親がメキシコ人)

口笛繋ぎのPrezioso & Marvin - The Riddle (Radio Edit)は、2009年のイタロディスコ。この選曲センスよ。しかし、これも長くはかけず、DANIのラップを重ねて次に繋ぐ。音が少なくミニマルな分、ラップのリズムのバラエティーが引き立つ曲。後半はフェスらしく音を足して盛り上げていく。そして、NATHY PELUSOとの曲のサビをサンプリングして散りばめ煽る。オーディエンスの高揚を高め切ったところで一気に音を引き、静かに始まるSnow Tha Productのラスボス感。Bizarrapの女性ラッパーの曲は、女性のラッパーのラップスキルや肝が据わったかっこよさを引き立てる。Bizarrap自身が作った曲とは言え、DJでの使い方も上手い。これだけ女性ラッパーの曲を組み込んだセットを作れるDJも他にいないのでは。

23:58 - NICKI NICOLE || BZRP Music Sessions #13(アルゼンチン)

25:30 - Trueno, Nicki Nicole, Bizarrap - MAMICHULA(アルゼンチン)

27:13 - Bizarrap x Duki x Nicki Nicole - YaMeFui(アルゼンチン)

初期ヒット作の1つ、NICKI NICOLE || BZRP Music Sessions #13。オーディエンスが歌えているのを確認すると、ボーカルにフィルターをかけて音を絞る。これもフルではかけず1番を聴かせたところで、ジャングルをかぶせてリミックス。ここから次の2曲は、Nicki Nicole繋ぎ。これも大ヒットしたNicki NicoleとTruenoのMAMICHULAに繋げるが、これはエレクトロミックス。3曲目は、Dukiとの曲。Trueno『MAMICHULA」でのラップに呼応するかのようにDUKI『YaMeFui』のイントロボーカルをシームレスに重ね繋げる。

29:38 - Nicky Jam || BZRP Music Sessions #41(コロンビア)

31:40 - TIAGO PZK || BZRP Music Sessions #48(アルゼンチン)

34:16 - Los Redondos - JIJIJI(アルゼンチン)

TIAGO PZK || BZRP Music Sessions #48をかけ終わったところで、いきなり生ロックバンドの演奏が始まる。Los Redondos - JIJIJIは1986年リリースの曲で今までの流れとは異なるが、意外と盛り上がっていた。

39:53 - DUKI - Malbec x Bizarrap (アルゼンチン)と Avicii - Waiting For Love マッシュアップ

最後はDUKIとの曲『Malbec』とAvicii『Waiting For Love』のマッシュアップ。Avicii『Waiting For Love』から単音のシンセとピアノ部分を抜き出して使っている。小室哲哉スタイルで、ピローと単音シンセを鳴らしていた意図がわかった。Aviciiのこの感じを取り入れていたのね。全体を通して、今まで断片的に見てきたBizarrapが繋がるような腹落ちできるセット内容・パフォーマンスだった。

日本で今、ラテンはそんなに流行らないよねと諦めているが、
4月8日に渋谷のVISIONで、アルゼンチン発祥のラテンイベントBRESHが開催されていたらしい。外に行列ができるほど人が入っていたようで意外だった。Bad BunnyやRosalíaだけでなく、NATHY PELUSOやTruenoまでかかっていた。

 
 
 
 
 
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どうやって集客したのか、それとも潜在的にクラブラテンミュージックで踊りたい人は結構いるということなのか。その昔、日本でもレゲエとかランバダとか、そんなに音楽好きでない人たちにも浸透するくらい、広く聴かれていたと思う。私もレゲエはそんなに好きじゃなかったけど、C.J. LewisとSnowはめちゃくちゃ聴いてたし。インバウンド観光客が戻ってきたら、BRESHみたいなパーティをやってみたら、意外と人が入るかも。

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