Billie EilishのGQのインタビューから、取材や自殺報道を考える

6月5日に発出されたBillie Eilishの最新のインタビュー記事。
ビリー・アイリッシュ:10代のスーパースターの告白
Billie Eilish: Confessions of a Teenage Superstar by Jonathan Heaf
Billie Eilish: “Sometimes I feel trapped by this persona” | British GQ

The 1975のMatty Healyに対して、「"ジェンダー比率についてコミットしたフェスのみプレイするという条件"を(契約に)追加して。」と呼びかけたGuardian musicの副編集者Laura Snapes。

その彼女が、このインタビューに関してコメントしていた。

10代の少女にインタビューするために大人の男性を送ることは、禁じられているはずです。特に、大人の男性が自殺未遂について話すように頼んだり、彼氏ができて子供がほしいかどうか尋ねるときには。

10代の少女(に対して)は言うまでもなく、命を奪おうと思った日のことを誰かに尋ねたり、さりげなく因果関係を示して投げかけたりしてはなりません。 Samaritans Media Guidelinesから:

 Samaritans Media Guidelines
(Samaritansは、イギリスとアイルランドの自殺予防を支援する慈善団体)
Best practice suicide reporting tips | Samaritans

「自殺とそれに続く調査についての報道は、報道機関にとって難しい場合があります。ジャーナリストとして、私たちは国民に情報を提供し続けることを保証しながら、経緯を慎重に報道しなければなりません。」
Jonathan Grun, Editor, The Press Association

<すべきこと、してはいけないこと>
1.視聴者に対する報道の影響について考える
2.自殺の方法と状況に言及する場合は注意が必要
・あまり詳細を与えないでください。
・通常とは異なる方法または以前は知られていない方法が使用された場合の事実を報告するときは、特に注意してください。
・「過度な同一化」により、模倣行為のリスクがあることを忘れないでください。
・方法が迅速、簡単、無痛、または確実に死に至るとは決して言いません。
3.過度に単純化しない
・自殺の原因または知覚された「トリガー」の過度の単純化は誤解を招く可能性があり、自殺の複雑さを正確に反映する可能性は低いです。
4.自殺またはその余波のメロドラマ的な描写を避ける
5.慎重でセンセーショナルではない報道を目指す
・場所を「ホットスポット」としてラベル付けしたり、特定の場所または特定のグループでの自殺の増加の可能性を「流行病」として言及したりしないでください。
・自殺が結果をもたらすという考えを促進しないように注意してください。
・見出しを書くときは、内容と影響する可能性について慎重に検討してください。
・死を「committed suicide(自殺した)」と表現するなど、不適切な表現が使用されていないことを確認します。「died by suicide(自殺によって亡くなる)」などの代替案を試みて下さい。
・自殺メモの内容を報道することは避けてください。
6.レポートの配置とイラストを注意深く検討する
・自殺の中にはマスコミの厳しい目を引くものもあります。
・自殺に関するレポートにリンクされている画像の選択と配置には特に注意してください。
・オンラインギャラリーなどで、故人の画像を繰り返し使用しないようにしてください。
・岸壁の上に立っている人など、劇的または感情的な画像や映像は避けてください。
7.教育とお知らせ
・可能な限り、アルコールの乱用、メンタルヘルスの問題、貧困といったリスク要因など、自殺に関連する幅広い問題を参照するようにしてください。

このガイドライン、日本でも必要なのでは。
コロナで営業自粛要請が出たときに、経営が苦しくなり自殺者が増えるぞ/死人が出るぞと、自殺を持ち出して補償を要求していたことに対して、なんとなく感じていた懸念はこれだ。「コロナ禍では自殺者は増えなかったが、貯蓄が底をつくこれからが」とSNSで発言することに対してもそう。自殺する人の状況やトリガーは、全て異なる。一括りにして、コロナ禍の経済苦と結びつけてはいけない。亡くなった一人一人の方に、とても失礼だと思う。人の死は、個人的なものでセンシティブなものだ。今現在、追い詰められている人もいるのに、その人に死ぬことを考えさせてはいけない。リアリティーショーに出演者されていた方についても、たとえ批判されていても、自殺したら許してもらえる、「かわいそう」と言ってもらえる事例にしては絶対ダメだ。死ぬ必要なんてない、死ななくても守ってもらえる、大事にされることを伝えるべきだ。そう信じてもらえる社会にしないといけない。George Floydさんの件でも思うのだけど、人が死なないと、物事が動かない、変わらない、興味さえもってもらえないことに物凄く憤りを感じている。

インタビュー記事も読んだ。

服装は前にあるムチと合っています。Eilishは、全て真っ黒の服で身を包んでいます。特大の黒のパーカー、だぶだぶの黒いトラックスーツのボトム、黒い炎が縁を舐めるようにセルフカスタマイズされたようなもので装飾されたトレーナー。対照的に、アイリッシュの肌は輝き、洗濯したてのシーツのように白いです。彼女の髪は、肩の長さで、根元のミュータントグリーンの衝撃を除けば真っ黒です。彼女の外見は、Grand Theft Auto(1997年)を経て、クエンティン・タランティーノによって改造されたAkiraです。

顔をくしゃくしゃにしてEilishは笑うと、パーカーの袖で半分隠れた磁器の手で隠します。彼女は、最初はくくっていて、今はある種爆発した緑と黒のアニメのパンのようにアレンジされた太い髪に指を通します。「Lana (Del Rey) が獲得すべきでした。したはずです。Ariana (Grande) が獲得すべきでした。彼ら全員が獲得すべきでした...」

 すごい違和感。モデルではなく音楽アーティストのインタビューで、しかも外見を揶揄される苦しみについて、インタビューの中でも語っているのに「洗濯したてのシーツのように白い(肌)」「磁器の手」と文章で表現する必要ある?髪型やファッションについてならまだしも、肌の色やパーツについて。男性誌GQの紙媒体の読者層は、平均年齢35歳とのこと。例えば、中年の女性インタビュアーが、10代の少年である男性音楽アーティストのことを、インタビュー記事で「彼は透き通る細い指で、艶やかな髪をかきあげた。」と書いたらどうだろう。変な感じがするのでは。

音楽カテゴリーの話は良かった。

そして、その夜、Best Rap Albumを受賞した直後のTyler, The Creatorは、挑発的な発言でカテゴリー化に関する質問に答え、さりげなく伝えました。 彼は後ろ手を組んでバックステージで記者団に語りました。 「私が作ったものが、このような世界で認められることをとても感謝しています。しかし、やはり、私たち、つまり私のような人たちが、ジャンルを超えたあらゆることをするときはいつも、常にrapまたはurbanカテゴリに分類されます。urbanという言葉は好きではありません。それは、私にとっては、Nワード(黒人の蔑称)を政治的に正しく言う方法でしかありません。どうして私たちは、単にpopに入ることができないのですか?

Tylerのコメントに対する彼女の反応を尋ねると、Eilishは「私はずっとカテゴリーが大嫌いです。」と同意します。 音楽業界で重役会議の大部分を占めている年配の白人男性は、彼女が歌う歌・着ている服・監督するビデオ、何であろうと、Eilish独自のイメージと彼女のクリエイティブなアウトプットの両方を、ジャンルやタイプで常に固定しようとしました。 あごをなでる音楽評論家は、彼女のアウトプットをStreambaitやSpotify-coreと言った用語で言いふらしました。

見た目や服装で、アーティストを判断しないでください。あの(グラミー賞の)夜、Lizzoは、Best R&Bのカテゴリーにいなかったのではないですか?つまり、彼女は私よりもpopです。
「ほら、もし私が白人でなければ、おそらくrapにいるでしょう。 どうして? 彼らは、見え方や知っていることで、判断します。 おかしいと思います。 世界は箱に入れたがっています。私のキャリアにおいて、ずっとそうでした。私が白人の10代の女性だからというだけで、私はpopです。私のどこがpopですか?私の音楽のどの部分がpopのように聴こえますか?

 これ以上引用するのは気が引けるので、是非元の記事を。
Billie Eilish: “Sometimes I feel trapped by this persona” | British GQ

Copyright © 電子計算機舞踏音楽 All Rights Reserved.