リアルよりも人が近いDJ配信パーティ Welcome to my room

DJ HASEBEさんのDJ配信を観ていて感じたのは、他にはないリアルなパーティ感、自分がinvolveされている感覚。これは一体何なんだろうと考えてみた。

①コメント欄で井戸端会議
クラブに遊びに来たお客さん同士が会話しているように、常連さん同士がコメント欄で、DJに関係なく会話をしている。遅れて入ってきた人に挨拶して、温かく迎えられたり。配信前からリアルのパーティで顔見知りだったかもしれないし、HASEBEさんは3月から毎週配信されているそうなので、毎週チャットしているうちに仲良くなったのかもしれない。
②リクエス
課金した人はリクエストできる仕組み。旦那さんの誕生日だからこの曲をかけて下さいといったリクエスト。HASEBEさんが一言お祝いの言葉を付け加え、コメント欄の方々も一斉に祝福している。一体感がある。リアルなパーティでも、奥様がDJにお願いしてかけてもらう様子が頭に浮かぶ。愛されていて羨ましいし、音楽を送るって素敵だな。リクエストは好きではなかったが、こういうのなら有りだと思った。そういえば、リクエストする客をSNSで叱る若手DJがいたな。その方、客が棒立ちで盛り上げないと怒ったりもする人なんだけど。
理由を伝えて思い入れのある曲をリクエストするのは、ラジオっぽいなとも思った。リクエストは、一方通行ではなく、双方向コミュニケーション。
③語り掛け、双方向コミュニケーション
コメント欄のお客さん自体が、リアルの箱に慣れている方々で、雰囲気を作るのが上手いのかもしれない。HASEBEさんは、煽ったり盛り上げようとはされないが、コメント欄で視聴者の反応を見ながらオーガナイズされている。
一方的にではなく、画面越しに知り合いがいるように語り掛ける。二部構成の場合、YouTubeのリンクが変わる。一部から二部に移動するときに、まるで二次会会場に移動するかのように案内する。次の二部の会場で、迷わず来れたかを気遣ったり、ある程度みんなが揃うまで待つ。二部会場に戻ってきた人に、「おかえりなさい」と声をかける。
DJブースの上でスマホを固定して、コメントを読みながらDJをされている。映像は固定だから、視聴者のコメントを見てフフッと微笑む様子も配信されている。DJが、フロアのお客さんの様子を遠目で見守るかのように。コメントを拾って読み上げたり質問に答えなくとも、リアクションする様子がリアルタイムで見られて、繋がりを感じる。そして、時々は、HASEBEさんもコメント欄の会話にもが加わる。これも、まるでフロアで話しているお客さんの輪に、HASEBEさんも混じるように。
コメントを読むときは、名前も読む。ファンの人は名前を読まれると嬉しい。
前のブログでも書いたように、全曲ではないが、流れを邪魔しない程度に、何曲かは曲の説明をしてくれる。DJがわざわざ言葉を選んで説明してくれた曲は、思い出となって、印象に残り易い。そのDJがどんな曲をどのような意図でかけているかで、DJの音楽に対する姿勢を読み取ることができる。

ZEN-LA-ROCKさんがHASEBEさんの家に近いそうで、先日の配信でも遊びに来ていらして、もちろんオフラインでお二人の会話もあるが、基本的には視聴者を置いてけぼりにしない。会話についていけるように補足もしてあげる。
④みんなで作る
権利関係でアーカイブが削除されないようにどうすればよいか等、HASEBEさんが相談したり、試してみたことを報告したり、参加者みんなで作っている。
⑤映像
映像は、HASEBEさんの部屋で固定。手元も見える。DJの手元でも、HASEBEさんでも、見たいものを見れる。見ているところで、パンパン画面が切り替わらない、チカチカした光の点滅、趣味の悪い映像を見なくて済むので、疲れない。

DOMMUNEは、切り替えが早くて落ち着かない。いよいよここからDJの曲の繋ぎという瞬間に、DJの顔や回転しているレコードに切り替える。見たかったら現場に来いよという意味で、あえて意地悪しているのか知らないけど、ものすごいストレス。
コロナ期間中の配信で見る気をなくした別の配信は、権利関係が心配な画像をパワポのスライドのようにワイプで入ってきたり、DJが見えなくなる。ただでさえ画面越しなのに、画像で現場の映像が閉じられると、シャッターを閉じられた気持ちになる。
世界中のナイトクラブがDJ配信をするARTE ConcertのUnited We Streamは、地元イチオシのラインナップや凝った演出でしのぎを削っている。例えば、この配信映像は、DJブースの横で、俳優さんがクラシックな衣装を着て、飲みながらチェスを打っている。ここまでやるかという演出。

日本のVENTも参加すると聞いて、とても期待していた。

砂嵐?表参道では前衛的でおしゃれなのか、「DJなんか見ずに音を聴け」というメッセージなのか知らんが、目がチカチカして観れない。
Contact TokyoのGH STREAMINGも何回かチラッとのぞいたが、すぐ離脱した。カメラに光が当たって、DJが見にくい、まぶしい。家で小さい画面で見る人のことが考えられていない。ちなみに、MCが紹介するDJのこと知らな過ぎて、毎回イラっとした。この程度の情報でブッキングするから、ああいうラインナップになるんだなと思った。

 リアルなパーティに行ったって、一人でいるより孤独だった。リアルとの境界がなくなるくらいバーチャルリアリティ技術の開発が進んでも、人の心の距離は縮まらない。リアルで人の温かみのあるパーティが作ってきた人は、オンラインでだって作れる。リアルの現場でも、フロアの客を見ない、客のせいにする、出番が終わったら内輪で固まるか楽屋に籠るDJは、オンラインでも同じことをする。

 HASEBEさんの配信は、Welcome to my roomの名の通り、HASEBEさんの部屋にお邪魔させてもらっている雰囲気。HASEBEさんは、配信中「ここにいますよ」って言うんだよね。『Welcome to my room』の歌詞を聴いたら、泣きそうになった。「窓の向こうに輝く街明かり」は、一人一人が暮らしている証で、マスではなく人格をもった一人一人に届けようとする配信。そのドアは誰にでも開かれている。

DJ HASEBE ‐ Welcome to my room feat. Ryohu & 土岐麻子

"いつか君だけが開けてくれたドア
開いておくよ"

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