無意識の差別 Unconscious bias、目の前の差別にNoと言えるか

(本文に、事例として差別表現が出てきます。)

出自・家庭環境

今年の初め書いたジェンダーギャップについて書いたブログに対し、水上はる子氏がSNS上で発した言葉を読んでしまったとき、非常にショックだった。今でも目にするたび、心拍数が上がる。あまりに辛く、まともに直視して明確に抗議もできず、受け流す余裕のあるフリをした。毎日のように、差別や親による子の虐待のニュースを目にする。目の前の差別を見て見ぬふりすべきでないと散々書いておきながら、自分が受けた差別に対し、あの対応で良かったのかと思い悩んでいた。

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プロ中のプロが、趣味でやっている人を捕まえて「12歳くらいの知能」だと批判するのは、趣味で遊んでいる素人をプロボクサーが殴るみたいなもの。12歳でも大人を唸らす文章を書く人はいる。知能と年齢は比例しないから、12歳に失礼。ご自身の基準に照らし合わせ稚拙だと判断するの勝手だが、知能が低いと蔑むことも差別だ。

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例え家父長制の考えの強い家庭に私が生まれていたとして、その出自を理由に蔑むのは、ひどい差別だ。「どうせ、虐待されて育ったんだろう。」「ろくな教育を受けなかったのだろう。」といったたぐいの家庭環境による差別が、いかに人を傷つけるか。
子供は親を選べない。小学校は公立に通っていた。様々な家庭の子どもがいた。虐待まではされていなかったと信じたいが、服は汚れてお風呂も毎日入っていないような同級生がいて、朝起きれず学校に来ないときもあった。養育放棄に近かったのだと思う。小学生だった自分は、母親が起こしてくれなくても、自分で起きてパンを焼いて牛乳を飲んで登校していたので、なぜそれくらい自分でできないのか理解できなかった。今はわかる。毎日当たり前に仕事に行ったり家事をしたりする親の元に生まれ育ったから、自分はできたのだと。
血筋・家庭環境・教育、本人に選択肢がなかったことを挙げて、蔑む。これだけ差別が問題になっている時代になってもなお、このような差別を受けるとは思いもよらなかった。なぜ人を、国籍・性別・年齢で差別をしてはいけないのか、理解されていないのではないだろうか。女性差別について書いたブログに対する批判に、そのような差別を含めてしまうなんて驚愕した。
私もまだまだUnconscious biasがあるが、世代・国籍・文化の異なるアーティストの音楽に親しむ中で気付かされることも多く、日々学ばせてもらっている。長年音楽や文化に触れ、文章を書くことを生業とし第一線で発信してきた方が、なんの疑問も持たず、平気で出自で差別してしまうことが信じられない。そもそも、私がどういう親や家庭で育ったかも全く知らずに決めつけることからして偏見だ。発言当初は辛過ぎてスクショもできなかったが、多くの方が賛同してファボっており、差別を指摘するどころか発言が支持されていたことに非常にも驚いた。馬鹿にするわけではないが、本当にイノセントのままここまで来てしまわれたのか、神格化されて誰も指摘できなくなってしまった結果なのか。

知識マウント

教育格差
概して、お金をかければより質の高い教育が受けられる。裕福な家の子供ほど、よりより教育を受ける機会がある。学力を伸ばせる可能性も高くなる。高校生でアルバイトをして下の子の面倒をみなければいけない子もいれば、母親が家事をして送り迎えをして体に良い夜食まで作ってくれる家もある。学習時間の差は、入れる大学にも結び付く。進学せず社会に出て家計を助けなければいけない家庭もまだまだある。教育に理解がなく、女性は大学や大学院まで出なくて良いという親もいる。
アメリカに本社がある日本の外資で働いていたとき、会社で受けたワークショップ形式の教育プログラムを受けたことで、Unconscious biasについて知った。具体的な事例とディスカッションを組み合わせた、非常に良いプログラムだった。それがきっかけで、理解を深めることができた。就職後も教育の格差は開いていく。

知識
知識文化人が簡単に偽科学を信じてしまう例もよく見かける、逆に、科学者が非論理的な発言をしている例もある。人それぞれが詳しい分野、得意/不得意分野がある。本を読むのが苦手でも、図式や映像ならなんなく理解できる人もいる。会社の机にびっしりと本が並んでいるのに、その知識を全く生かせていない人もたくさん見てきた。無知や本を読まないことを蔑むのは差別だと思うようになった。もちろん、例えば大臣など、専門性を必要とする責任ある職位につきながら、その知識が欠けている場合は、批判されるべきなのは言うまでもない。
女性よりも男性が、本を何冊読んだとか、論文を何本読んだとか、何万文字書いたとマウントしているのを散見する。知識量を示す数字が知識に比例することもあるが、個人的な経験からすると、数字を主張する人に限って質が伴わない。

「教養がない」という批判の仕方も、単に自分の得意分野の知識が相手にないことや、自分と価値基準が異なる場合に使われてしまっている。

ある批判に対する、浅沼優子さんの反論。私も嫌というほど見た目や先入観で判断されてきたので、非常にスカッとした。見事なほどにUnconscious biasの事例。だがその一方、学歴のない人が同様の反論をしたときに、同じように受け止められだろうかを考えてしまった。

持田さんはそれを読んだ本の数や学位、職種、(性別も関係しているかもしれません)で判断されるようです。私は「専門家ではない」と書きましたが、勉強していないわけではありません。持田さんが講師を務めていらっしゃる慶應義塾大学の法学部政治学科、大学院法学研究科の修士課程を修了しています。学部の卒論のテーマは主にルワンダの虐殺を事例にした民族紛争についてで、修士論文のテーマはエスニシティアイデンティティ・ポリティクスです。

#BlackLivesMatter と人種差別問題の理解を深めるために(モチダヨウヘイさんへの返答)|浅沼優子|note

・なぜ私のたった一つの投稿を見ただけで、私が「勉強していない」と決めつけたのか?そして専門家ではない私(だけ)が人を啓蒙したり批判すべきではないのか?

#BlackLivesMatter と人種差別問題の理解を深めるために(モチダヨウヘイさんへの返答)|浅沼優子|note

例えば、バンクシーの解釈にしても。

 BBCも日本のメディアと同じ解釈をしていている。

無知

f:id:senotic:20200920004341j:plainROOTSYさんは、恐らく「無知」の意味で「白痴」を使っておられるのでないかと推測する。日頃から他の方の文章表現も厳しく批判されており、ナタリーの編集長もされて、文章を書く本まで出されているのだから、職務上も差別用語についても知っておかれるべき立場なのでは。実際、ROOTSYさんに影響され、フォローしている若者が「白痴」という言葉を使いだしたのも目撃した。影響力のある人は、差別用語についての知識を持ち、特に気を付けるべき。

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不快・差別用語の考え方

「かたわ」「つんぼ」「めくら」等が使われることはほとんどなく、若い方は言葉の存在も知らない。高齢者には、実際そのような言葉で差別を受けてきた人がいる。たとえ意味を知らず意図しないとしても、その言葉を耳にすると、差別されてきた人は辛い思いをする。人を差別するのに使われた言葉は、意図が違ったとしても使うべきではない。

英語の発音

まずもって日本の英語教育が悪いのだが、私自身も、口には出さないものの、心の中では英語の発音が上手くない人を低く見ていた。発音は、音の違いが聞き取れるかどうかも関係するので、音の違いを認識するのが苦手な人は、ネイティブの発音に近づけるのも難しいのだろうと理解するようになった。

イギリス・アメリカ・カナダ・オーストラリアでも、英語の表現や発音は異なる。シンガポールは、英語が公用語なので外国語ではなく、シンガポール英語がある。スペイン語も、国によって違う。「矯正」の「矯」は曲がったものをまっすぐに正すという意味。アメリカ英語が正しい英語の基準ではない。アメリカ人の発音に近づけることを、「矯正」と表現されることに違和感を感じた。
というのも、最近ウイグルのニュースをよく見かけるようになり、最近いつも頭の片隅にある。(香港出身Got7のJackson Wang王嘉爾と彼の中国寄りの発言については、ブログに書くつもりで、情報を集めているところ。)ウイグルの人たちは言語も文化も奪われて、中国に「矯正」されている。それを連想してしまい、嫌な感じがした。

最近文化の盗用について少し勉強してから意識するようになったのは、持っている人が持っていない人に対して言うことは、より強い意味を持ってしまうということ。白人、当たり前に高い教育を受けることができた人、お金持ち、能力の高い人、それらの人がそうでない人に対して言う言葉は、受け手の身になって配慮が必要だ。

国や国の文化に貴賤はないし、イギリス訛りが英国に留学していた教養の証という時代でもないんじゃない?

 先日、「マツコ会議」というテレビ番組にJ.Y.Parkが出演していて、日本人ネイティブの発音ではなかったが、発音を馬鹿にする人はほとんどおらず、話す内容が絶賛されていた。数年前なら、真似をしていじられていたのではないだろうか。

 言葉が通じないことで、業務や意思疎通に支障があるなら、得意な人にお願いすればよい。近藤麻理恵さんが英語を話さないと馬鹿にした人もいたようだが、英語を話す必要はなく優秀な通訳を通せばよいだけ。
ブログでもしつこく書いてきたように、BTSが日本語で歌った歌がグローバルチャートの上位と取ったり、海外進出に英語で歌う必要はなくなってきている。地球上英語が母国語でない人の方が多く、Billboardでさえ集計方法を変えた。桑田佳祐のように英語っぽく歌う日本語の歌が人気だったり、外国人アーティストが外国語訛りの日本語で歌うのが魅力だったりもする。当時Billboard Hot 100で7週連続1位を獲得し、去年Daddy Yankeeのカバーで再び大ヒットしたSnow『Informer』も、彼は白人だが強いジャマイカアクセントで歌っている。

このチャートには、何年も前の古いMVも上がるし、人口の多い、スペイン語ヒンディ語の音楽が有利。2位のBTSの曲はなんと、日本語。BTSは世界的に人気なので、日本人だけがチャートを押し上げているのではなく、コメント欄も英語ばかり。韓国の人口は日本の半分以下で、それだけ話者も少ない。それでも、韓国語のMVがチャートインしている。何度もしつこいけれど、英語でなくても世界進出できる。

YouTube Top Music Video Chart (6月26日-7月2日)100曲中14曲が韓国 - 電子計算機舞踏音楽

目の前の差別

少しずつだが、日本人の差別意識も変わりつつあると思うが、単に好きなものが悪く言われて怒っているだけの人もまだ多い。韓国人が好きだから韓国人差別に反対する、ブラックミュージックに救われたからBlack Lives Matterに声を上げる。自分に利害関係がないところで声を上げるのは簡単だ。問われるのは、自分の評価権限を持った上司のセクハラを指摘できるか、大好きなアーティスが障がい者殺害事件をネタにしたときに批判できるかどうか。

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