par 『천재음악(天才音楽)』 フォロワー115人の音楽

最後にアルバムを通して聴いていたのはいつだろう。どのアルバムだったかも思い出せない。久しぶりに、アルバムとして楽しめる作品に出会えた。それがまた、Soundcloudのほぼ無名のアーティストの作品だなんて。Soundcloudはもうお終いみたいなブログを書いたばかりなのに。

par 『천재음악(天才音楽)』

1. 벌레(虫)

2. CYBERAINBOW(サイバーレインボー)

3. 쓰레기음악(ゴミ音楽)

この次のリード曲が一番人気のようだけど、私はこの曲も同じくらい好き。音楽はSoundcloudミュージックというか、よくあるDTM曲。あえてそうしたのかもしれない、ゴミ音楽を表現するために。最初は、中国語のような一言一言区切った歌い方。歌詞がまた良いんですわ。
"インディーズ=ゴミみたいな
自慰(自己満足)のためだけの
ゴミ音楽
さぁ続けよう"
そこから一転、ラップがめちゃくちゃかっこいい。クールさとは裏腹なリリックが面白い。
"私はなんか英語でしゃべってる
君はドープを見出すに違いない
この歌のスタイル
やり易くする
ラップやドラッグ(又はセックス)を
俺はbetというフレーズをよく使う
問題ある?
全く意味のないまま
なぜ気にする?
それがフックさ
それだけ"
クールだと思って聞いてるだろうけど、実はなんか適当に英語でラップしてるだけやねんでという、皮肉と受け取れる。
これだけのクオリティの音楽を作れる人だから、価値が理解されないもどかしさを感じていて、適当にやってもどうせわからへんのやろみたいな、ちょっとやけになったトーンも入れつつ、結局しっかり手の込んだ曲作ってしまう。そういう性格が表れている曲のような気がした。

4. i saw a devil and she said i'm cool

先行して3か月前にリリースされた、恐らくリードシングルのような曲。Moogシンセのようなプオーン鳴るシンセが奏でるキーボードのソロパートと、ハモるコーラスがエモい。
歌詞は、「彼女は俺のことクールだって言うけど、自分には悪魔が見えていて、リスカもしている。彼女も、彼も、『お前は大丈夫だ』と言う。わかったんだ、僕が悪魔で、君がクールだと。君が同じように感じてくれたら。君に同じように感じてほしい。」というような内容だった。彼女や友達からの自分の見え方と、自分が見えているもののギャップ。客観的にそのギャップを受け止めつつ、やはり自分のことをわかってほしい、同じように見てほしいと切望している。
抑鬱とした気持ちを、美しいメロディに乗せ作品へと作り上げるのは尊いことだと思った。

5. 어른의 밤(大人の夜)

80年代のようなレトロなシンセ曲。アルバム全体として、抑揚を抑え静かに歌うパートが多いので、この曲の歌い上げる箇所は印象に残る。何もしていないときに思い出したりする。

6. 나는 내 음악이 아냐(私は私の音楽ではない)

自分は大人なんだから、自分の作る音楽と自分は別だと分けて考えないといけないと、自分に言い聞かせるような歌詞。実際思っていることの裏返しで、作る音楽は自分の体の一部なんだろう。

7. 3D 보이(三次元ボーイ)

ヴァーチャルな世界の愛を失い、リアルな愛を求める歌。後半の抑揚をつけたコーラスは、くどさがなく透明感がある。個性ばかりに気をとられていたが、普通に歌も上手い。
"どこにも見えない
あなたがここに置いていった愛情と心
私が持っていたもの
27インチのモニターで
残りたった28GBの世界で
あなたが行くと決めたなら私は独りぼっち
黒いスクリーンは、ロンリーなまま
準備ができていない
置いていかないで
三次元ボーイ
あなたの三次元の愛はどこ?
あなたの三次元の愛はどこ?
三次元ボーイ
あなたの三次元のガールはどこ?
あなたの三次元のガールはどこ?"

8. 나와 세계(私と世界)

クロージングらしく物静かな曲。弾き語りをしているかのような生音っぽいピアノ。周りの人々が忙しくしている中で、自分一人が取り残され、夢を諦めきれず藻掻いている、そんな歌詞だった。悲しみに暮れる様子が、少ない音で歌い方とピアノでも表現されている。最後遠くに聴こえるコーラスが切なくも美しい。

アルバム全体から、世間からは理解されない自分の内面、割り切って世間のマジョリティに合わせ楽しむことができない苦しみを感じ取った。曲毎に違ったテイストがあり、アルバムを通して聴くと、それぞれの個性が引き立つ。打ち込みの人とは違うピアノの表現、コーラスのハモり、厚みと透明感のある声質の良さ、個性的な歌詞、Soundcloudのフォロワー115人の人が作ったとは思えない。音大生でもない普通の10代20代がこんな音楽作るのかと、1曲単位では何度も驚かされたことがあるが、アルバム単位では初めてだ。韓国のインディーズ、競争はかなり激しいけど、その分面白くなっていそう。

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