私が見ていたNight Tempo

2016年の10月にパソコン音楽クラブを知ってからすぐ、パ音とコラボしたり同じイベントに出たりして交流のあったNight Tempoも知った。Future Funkは、昔聞いていたディスコやファンクが変身して目の前に現れた感覚で新鮮だった。ディスコのありがちな音を切り出して再構成した感じ、くぐもったlo-fi感。Night Tempo、MACROSS 82-99、Yung Bae界隈、片っ端から聴いた。

Night TempoはTwitchでDJの配信もしていた。次々かかる80年代、90年代の女性アイドル歌謡に、大盛り上がりのコメント欄。目にもとまらぬ速さで、外国語のコメントが流れていたのを覚えている。休日の朝起きたら3時間ほど前にDJ配信が始まっていて、さすがにもう終わっただろうと思ったが念のため開いてみたら、まだやっていた。「4時間近くも。どんだけ曲を知ってるんだよ。」と思ったし、目利きで曲を選び、これだけ多くの外国人を熱狂させていることに驚いた。自分はアイドル歌謡はダサいと思って聴いてこなかったが、Niht Tempoの選曲により、知らない良い曲があることに気付かされた。
インスタライブでは、女性アイドル歌謡のカセットテープやセーラームーンのフィギアのコレクションを見せてくれた。きれいに棚に収められたそれらを、一つ一つ愛おしそうに取り出して見せびらかす様子は、本当に純粋なオタクだった。山下達郎はどうだったかな、角松敏生のカセットも見せてくれた気がする。SONYのウォークマンや、同時代のラジカセも持っていて、ウォークマンを修理する様子を配信してくれた。丁寧に小さなネジを外していく様子は瞼に残っている。こんなにもウォークマンを愛し世界に発信してきたNight Tempo、過去のウォークマンが一堂に展示されたIt's a Sony展でライブをしてほしかったなと思うし、跡地のGinza Sony Parkで一番ライブをしてほしい人だ。

一時期どっぷりとはまったFuture Funkだったが、1年経たずに冷めてしまった。ボーカルの高い声、繰り返し、タタッタタッとつまるようなリズム、同じような曲調。過去の名曲のボーカルをそのままパクり、原曲について言及することなくかわいいカセットにして売る。二次創作というのか、サンプリング同様今や当たり前なのか知らないが、あまりにもリスペクトがないように感じた。先に挙げた4曲も、Future Funkだからではなく、オリジナリティがあって良い曲だから気に入ったのだと思う。

例えばこの曲の元ネタは今井美樹「雨にキッスの花束を」。日本人で古い音楽もディグする人は知っているかもしれないが、元ネタがあることも知らずに聴いたり買ったりする人がたくさんいるだろう。「Future Funk 元ネタ」でググると他にも山のように出てくる。曲なんてすぐにできるというけれど、メロディパクったら、そりゃすぐにできる。Future Funkはあまりにも雑な作りのものが多いように感じ、鍛錬したプロが歌い演奏しお金かけてレコーディングした元ネタの音楽を聴く方が良くなってしまった。

Future Funkの音楽やイベントからは離れていたが、Night TempoのWinkの公式リエディット、FUJI ROCK FESTIVAL'19への出演決定のニュース。そしてThe Japan Timesにインタビュー記事が。

どのようにして誰もが山下（達郎）や竹内（まりや）が知るようになったかが注目されるが、Winkや他の女性パフォーマーはまだ知られていない。彼はまだディグする感覚を育てたいと思っている。

最新のリリースShowa Idol's Grooveの曲名は、元ネタ曲の女性アーティストの（フルネームではなく）下の名前になっていて、ヒントはあるが調べるのにひと手間かかるようにしてある。繰り返し聴いたり調べたりすることで、当時に日本のポップカルチャーにも触れることを狙っているようだ。オタクだからこそわかる匙加減。

オタクはみんなそういうものです。彼らが愛するものをみんなと共有したい。一緒に宝物を見つけることができる。

これを読んで嬉しかった。彼はこれだけ売れても、元ネタの音楽やカルチャーに対するリスペクトと愛は失っていなかったし、さらに広まるように考えて活動してくれている。自分の成功だけではなく。

宝の山を持ちながら、価値や利用の仕方がわからず、音楽ビジネスでは鎖国し、今も機会損失し続けている。竹内まりやのPlastic Love諸々の解禁も遅すぎた。食べごろで売れないビジネス環境がもどかしい。

（DJ終わりにもらった、ホログラムステッカー）