海外進出するためのミュージックビデオを考える

海外、非英語圏の音楽がめちゃくちゃ面白い。音楽だけというよりミュージックビデオも含めて。言わば、外国人としてその国の音楽を満喫している。言葉はわからなくても、映像と(言葉の響きを含む)音を楽しんでいる。おそらく音楽だけを聴いた場合通り過ぎてしまうような音楽も、MVによって立ち止まらせることができる。ようやく日本の大物アーティストもサブスクやSNSを解禁し出したが、外国人として楽しんできた立場から、諸々もどかしい。

外国人としての音楽の探し方

YouTubeのチャートやリコメンドの中から、サムネを眺めて気になるMVを選ぶ。
(さすがに全部は聴けないので、経験からサムネの画像で絞り込む。)
②以下の点で気になるMVで立ち止まってじっくり聴く。
 ・(言語の響きも含め)音やメロディが心地よいもの
 ・映像だけで歌の内容やストーリーが推測できて面白いもの
 ・衣装や振り付けが美しい又は面白い
 ・表情を含む演技やダンス等の身体表現レベルが高い
 ・アーティスト本人が出演している
 ・ロケーションが美しい
 ・日本にはない文化(服装、民謡、楽器、街並み、食べ物)
③歌詞の内容を調べる。
④アーティストのことを調べる。

②の時点でやばいと思ったMVは、④でアーティストのことを調べたときに高確率で、こちらの想像を上回る興味深いご本人のストーリーやこだわりの話が出てくる。

日本人アーティストが海外進出するときのMVの作り方

・(言葉での説明無しに)映像だけで伝わる
・(言葉の意味を知らなくても)言葉の響きが面白い
・真似したくなる振り付けや衣装
・日本らしさ、個性、独自性
・歌詞と字幕(広告と重ならない)
・売れたい国に対するカスタマイズ
英語で歌えなくても海外に受け入れられるが、日本で成功したら海外で通用するのではない。むしろ日本と海外は流行やニーズが異なるので、日本では評価されなかったアーティストが海外で評価されることも多い。言葉は通じなくても大丈夫だが、逆に音楽だけで評価される。その上で、最近は歌詞もYouTubeの説明欄に貼ってあることが多い。どうせオーディエンスは歌詞サイトに飛び、歌詞サイトのPVを上げるだけなことがわかったからだろう。歌詞が文字にさえなっていれば、自動翻訳の精度は上がっているので、海外の人もだいたいの意味は取れる。海外のMVに、日本モチーフは相当な頻度で出てくる。日本語の漢字(中国語ではない)、カタカナ、日本風アニメ、刀、アニメに出てくるような近未来、ヤクザ、芸者など。世界のアーティストが日本を憧れの目で見ていることを実感する。逆に自分も、各国のMVを楽しむときにその国らしさを求めてる。宗教やその国の歴史によって、様々なタブーがある。若者人口が多く経済成長中のインドネシアをターゲットにするなら、イスラム教のことも知って言葉や服装、ジェスチャーに気を配る。バラードが好きな国、ダンスナンバーが好きな国、チャートを見ていると国毎の好みは意外とわかりやすく読み取れる。韓国のMVチャートに入った日本人アーティストは、米津玄師、神山羊、ヨルシカ、RADWIMPSの「愛にできることはまだあるかい」。なんとなくわかる気がするよね。自分たちの音楽がウケそうな国をターゲットにして、研究しカスタマイズしてみてもよいかも。どの国にもない、今までにない独自性がある場合、どこの国にウケるかの予測は難しいが。BLACK PINKがCoachella出演の際にたくさんインタビューを受けていたが、アメリカ人が「トゥルトゥルトゥルっていうのが良いよね。」と言っていた。音が印象的で、面白い振付がついていると、マネしたくなる。マネする人が増えると広まる。音と振付が面白いのは、子供がマネをする。子供や学生の拡散力は大人より大きい。

具体的に海外進出と受け取れる日本のMVを見てみる。

ARASHI - Turning Up

アイドルは通らなかったけど「A・RA・SHI」だけはめっちゃ聴いてた。新曲は流行りの要素はないけれど、ARASHIの独自性があって、過去曲とも似ていなくて良い曲。私もよく聴いてる。ただ、MVが。最初のニュース仕立てにしていたところはすっ飛ばしていたから気が付かなかったけど、「ARASHIを見た市民が突然踊りだしている」、それを気象学者が解説するって何?字幕読まないし、日本語英語っぽいし、そもそも歌のところから再生するので読まない。ARASHIに関係ない人が踊ってるのどういう意味かな?って思ってた。MVなんだから言葉で説明せずに、映像で伝えないと。説明には英語字幕つけたのに、肝心の歌に字幕ついてない。この歌の場合、歌詞大事でしょ。「閉ざされたドア開く」「Hey, everybody. お待たせ。もうシームレス。あの空まで。」、MV公開もSNSもやっとできるようになったよという喜びの歌詞に解釈できて、ARASHIのファンでないけどちょっと泣きそうになった。トップアイドルだから新しい観光名所SHIBUYA SKYをオープン前に使える、ARASHIがMV撮ったところとして名所を宣伝したい、狙いはわかる。でも海外の人は、日本オリジナルを求めてる。築地とか秋葉原とか。和装で浅草寺で踊ってもやり過ぎではなくちょうどいいくらい。それかAKIRAとかGANTZの世界観。海外のMVから好みを推測するとそんな感じ。あえて古臭さを狙ったのかもしれないけど、ハリウッドかぁ。

星野源 – Same Thing (feat. Superorganism)


アイディアのある方だから、やりたいことたくさんあったのに、制約があってできなかったのだろうな。求められる星野源像もあっただろうし。
"I've got somothing to say. To everybody, fuck you. It's been on my mind."
抑圧された日本を離れ、解放されて自由になって、外国人に囲まれて、「ずっと"fuck you"って言いたかったんだよね。」って。えっ?何?気持ちはわかる気はするけど、星野源の音楽に初めて触れる人が、「日本は息苦しくてさ、ずっと"fuck you"って言いたかったんだよね。」って言われてもね。「ああそうですか、知らんがな。」って感じにならないのかな。「侘び寂び、めちゃくちゃにしよう」。海外は侵略の歴史もあって、自国の文化やルーツを大事にする人が多いから違和感があるかも。アジア人が海外にロケにきて英語で歌ってると受け取られるのでは。JPOPのメロディと振り付けでアピールできる「SUN」「恋」、日本の地下鉄が舞台で制服で踊る「時よ」とかだと、日本語がわからなくても楽しめるしダンスをコピれる。「時よ」が「Tokiyo」に表示変更されてる。「時よ」のままにしておいてくれると、外国人で興味もった人がそのまま検索かけて調べられる。「Tokiyo」で検索しても情報が出てきにくい。キリル文字は全く読めないが、ウクライナ語のタイトルをコピペして検索かけて、出てきたウクライナ語の記事を翻訳かけて私は読んでる。このタイミングで過去のMVも、間にプロモーション挟まないフルバージョンで公開したらいいのに。いいところで日本語のよくわからない会話始まって、何だってなるんじゃない?

もどかしく感じていたことを書いてすっきり。海外で再生数の多いMVのセオリーを踏襲できてる、よくできている日本のMVもある。次回はそれをセット紹介したい。

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