2020年最新 多様なラテンポップ(ブラジル・ベネズエラ・アルゼンチン・キューバ・ドミニカ共和国・プエルトリコ)
ラジオでラテンポップ特集をやるというので聴いてみたら、嫌な予感はしていたが、ほぼレゲトンの話で終わってしまった。全然、ポップじゃない。
ジャンル名について。本稿で紹介する音楽は、基本的にレゲトンとラテン・トラップだ。
タイトルにはわかりやすさを優先して〈ラテン・ポップ〉と掲げたものの、一般的にラテン・ポップ(Latin pop)とされる音楽は、シャキーラやリッキー・マーティンのようなアーティストに代表される、欧米のポップ・ミュージック寄りのもの。なので、厳密にはちょっとちがう、ということを確認しておきたい(もちろん、ラテン・ポップを包括的なカテゴリーとして捉える向きもある)。
ラテン・ポップは、主としてラテンアメリカ及びイベリア半島のポピュラー音楽のことで、それを総称したものである。
主としてスペイン語およびポルトガル語で歌われるものが多いが、それらの影響を受けたものであれば英語などの言語で歌われたものも含まれる。また、非スペイン語圏のアーティストでもスペイン語で歌われるものであれば含まれることが多い。またイタリア語のものを含む場合もある。音楽的には、ラテン音楽を融合させたロック・ポップ調のものから、欧米のポップスと変わらないようなものまであり、幅広い。
ラテンポップとはレゲトンのことだと思われたら嫌なので、電算機お薦め最新のラテンポップアーティストを紹介。
- Pabllo Vittar feat. POCAH - BANDID*(ブラジル)
- Gloria Groove - Coisa Boa (ブラジル)
- Arca - Mequetrefe (ベネズエラ)
- Nicki Nicole - Colocao (アルゼンチン)
- ROSALÍA & Travis Scott - TKN (スペイン)
- Luna Ki & Kenya Racaile - RIVOTRIL (キューバ)
- YEИDRY - Nena (ドミニカ共和国)
- Daddy Yankee & Snow - Con Calma (プエルトリコ)
Pabllo Vittar feat. POCAH - BANDID*(ブラジル)
Pabllo Vittarは、ドラアグクィーンとして初めてラテングラミーにノミネートされたアーティスト。女性的な衣装だが、トランス女性ではなく同性愛者。Charli XCXともコラボしている。高い声が特徴。
Pabllo Vittar ft. Charli XCX - Flash Pose
Gloria Groove - Coisa Boa (ブラジル)
同じくブラジルのドラアグクィーン。ダンス、ラップ、太い声を生かしたR&Bも得意。
Arca - Mequetrefe (ベネズエラ)
ビジュアルに頼っちゃってと一蹴していたが、ふと思い出して聴いてみたら、ポップだし、展開も面白くて良かった。ラテンの要素もしっかり入っている。Mequetrefeは男性を蔑んで言う言葉だが、カミングアウトについて理解している立場から、恥ずかしがらずに告白することを応援する優しさ、自信と勇気についての歌。映像も多様性を表している。
Nicki Nicole - Colocao (アルゼンチン)
ブログを読んで下さっている方にはおなじみの電算機イチオシアーティスト、20歳のアルゼンチンギャルNicki Nicole。R&Bやトラップ寄りのポップミュージック。くせの強い声が特徴。
ROSALÍA & Travis Scott - TKN (スペイン)
2019年のラテングラミー 4部門受賞アーティストROSALÍA。『TKN』は、2020年ラテングラミー Best Short Form Music Video受賞作品。ROSALÍAはスペイン人(カタロニア人)なので、ラテンではないと毎年批判を受けている。ラテンポップの定義では、スペインやフランスなどラテン言語で歌う歌も含まれる。『TKN』は、日本のゲーム『鉄拳』の略だという説が有力。マフィアの結束力を例に、家族の絆についての歌ではないかと推測される。
Luna Ki & Kenya Racaile - RIVOTRIL (キューバ)
日本文化が好きな21歳のキューバ系スペイン人。しゃがれた声が特徴。タイトルのリボトリールは、抗不安薬の名前で、過剰摂取が問題となっている。
YEИDRY - Nena (ドミニカ共和国)
ドミニカ共和国生まれ、イタリア育ち、スペイン語で歌うSSW。母親が聴くサルサ・バチャータメレンゲ・非常に古い伝統的なラテン音楽と、父親が聴くビージーズ、マイケルジャクソン、バーブラストライサンド、ジョージマイケルを聴いて育った。フラメンコ調の歌も歌う。
Daddy Yankee & Snow - Con Calma (プエルトリコ)
2019年世界中で最も再生されたMV一位。日本でも大ヒットした、白人ラッパーがジャマイカ訛りで歌うSnow『Informer』(1992年)のカバー。ラテンポップではなく、レゲトン。
Daddy Yankee, Stormzy and Billie Eilish are YouTube's most-watched of 2019 - BBC News
Aya Nakamuraもイタリア語で歌うので広義のラテンポップではと思ったが、彼女のルーツであるアフリカのポップ、アフロポップに分類されているようだ。
移民によって文化がミックスされたり、海外の曲を簡単に聴けるようになり、多様な文化の影響を受けたラテンアーティストが、斬新な曲を作っている。ラテンの人々は、日本のアニメが大好き。日本のアニソンはラテン国で大人気で、古いアニソンでさえ未だ根強い人気がある。Z世代も日本のアニメを見て育っているので、日本語やアニメのキャラクターに親しみともってくれている。そういう彼らの作品も面白い。
今話題の雑誌『ラティーナ』は、ジャズ中心+民族音楽だったらしい。なるほど私が聴いている範囲とは被らない訳だ。あと、日本でワールドミュージックって、民族音楽のことを指していることが多い気がする。CDショップのワールドミュージックのコーナーは、そんな感じだった。イメージが古いままであることも、ラテンの曲が聴かれていない原因だと思うので、諸々アップデートされてほしい。