海外で独自の進化を遂げる日本文化 Japanese Trap / Luísa Sonza, Pabllo Vittar, Anitta - MODO TURBO

海外、特にラテンアメリカにおける日本文化の人気について度々触れてきた。海外のMVには、海外の人にとっての日本のイメージがよく表れている。実際の日本文化とは異なる、海外の人が勝手にイメージする日本文化が進化を遂げている。それを象徴するかのような作品が、大人気。

ブラジルの人気アーティスト3人がコラボしたポルトガル語の作品。約1か月で5796万回再生。YouTubeのグローバルMVチャートでは、1週目18位で、現在チャートインして5週目。スペイン語ではなくポルトガル語にしては異例。

Luísa Sonza, Pabllo Vittar, Anitta - MODO TURBO

金閣寺の前でお尻を振っていて、最初はなんて下品なのと思った。けれど、ゲーム・セーラームーンツインテール猫耳・手裏剣など日本文化の要素に溢れていて、どれだけ好きかが伝わってきたので受け入れられた。リオのカーニバルのうように、お尻を出すことは、日本とは意味が異なるだろうし。日本人もカレーライス大好きで、自国の食文化みたいに取り込んで独自の進化をさせているから、それと同じと考えればよい。Pabllo Vittarはトランス女性ではなくドラアグクィーンなので、ドラアグ文化にコスプレを取り込んでいると捉えると、今後の進化が楽しみでもある。

前半のビートは、Lofi hip hopから派生したJapanese Trap。海外の方が、和楽器の音を使ってトラップミュージックのビートを作っている。私は子供の頃から和楽器の生音を聴いていたので、音の作り物感や、実際には演奏できない打ち込みの鳴らし方なのがわかってしまって気持ちが悪い。しかし、現実世界では不可能なことをCG上で実現したりするのと同じこと。和楽器の音色自体はこれだけ人気があるのだから、これくらい自由で大胆な使い方をすれば、伝統音楽としてではなくポップミュージックとして通用することを証する良い例。世界で和楽器の音色がこれだけ愛されているのに、お琴や三味線を習いたいと思う子どもなんてほとんどおらず、和楽器業界は衰退の一途を辿っているのがもどかしい。

Japanese Trap作品をキュレーションしているYouTubeチャンネル Mr_MoMo 

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かっこよく感じる日本語の単語や地名を探してタイトルにしているようだ。たまに間違った日本語も混じっていたり、「ください」とかもあるが、ネットで調べることができる時代だからか意外と正しく、ある程度のリスペクトは感じる。

 和楽器や刀を抜くかぶつける音が世界で親しみを持たれているのは、MODO TURBOの映像や上のサムネイルからも見て取れるように、ゲームの影響で間違いないだろう。

White Hanami By Swxr

琴・和太鼓・息を吸う音・刀のシャキーンという音が、ブーンとなるエレクトロなベースと融合して、よく出来たビートだと思う。他のJapanese Trapと違って、リズムや間の取り方まで、邦楽をほどよく参照している点も良い。(音だけ和楽器で、中国風だったり、洋風の曲も多い。MODO TURBOのPabllo Vittarの最初のボーカルパートも、メロディが中国風。)実物のお琴は指で押さえない限り、残音が残ってピタッと消えない。鍵盤ではなく、弦を弾くので、一度に鳴らせる音の数が限られている。隣の弦ではない限り、弦の間を移動する必要がるので、次の音を鳴らすのに間が空く。シンセで鳴らすお琴の音の違和感はそのあたり。

日本文化を好きに取り入れて楽しんでくれたらいいし、それで興味を持って日本に旅行に来てくれたら嬉しい。日本人が海外の方から日本文化について聞かれたときに、最低限の知識があるといいな。日本の音楽プロデューサーや和楽器界の方も、こういった文化を覗いてみたら面白いと思う。

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