ロシア IC3PEAK 『Плак-Плак (しくしく)』 死や鬱と向き合う

ロシアの音楽ユニットで、オーディオビジュアルアーテイストでもあるIC3PEAK。この記事を書いた後のインタビューで、IC3PEAK本人が作品の解説をしていたので、和訳しました(以下の記事)。合わせて、歌詞和訳もそちらへ移動しました。

以下、本記事で掲載していたインタビューの和訳と感想になります。

インタビュー(2020年5月)の和訳

つい先日、2020年5月27日に出た最新のインタビュー記事で、この曲に関しても触れられていたので、その部分を和訳。

"-「死ぬことは怖くない」と、あなたはミュージックビデオ『Плак-Плак』で歌っています。 死に関するものが多くあります。死人のようなメイク、棺、(墓に供える)花輪などの多くのビジュアル...これは芸術的なイメージですか、それとも個人的なものですか?

Nastya:どのようなイメージがありますか。生と死の違いがわからなくなり、あなたの存在がその境界をさまようとき、死ぬのが怖くなくなるほど人生がとても辛くなります。鬱や絶望なので、死に対するある種のロマンチックな感情ではありません。死や鬱のエピソードは、私個人の人生と関係があります。上手くいけば、ベッドから出て、誰かと話し、どこかに出かけますが、生きる力がなく、自分自身に何かをさせるのが難しいとき、再びこの絶望的な状態に陥ってしまうと最悪です。

- しかし、全部わかっていなければ、死への関心のある10代に向けてだと受け取れます。

Kolya: 私たちのリスナーの平均年齢は20〜25歳です。死などのトピックも含め、反応がとてもしっかりする年齢です。 彼らは実際ティーンエイジャーではありません。 まあ、結局のところ、死は人生に不可欠な部分です。 言うまでもなく、私が死を恐れたくないし、死にたくありません。しかし、自分自身死ぬ運命であることを意識することが、モチベーションとなったり、人生に付加価値を与えます。私にとってはそのようです。

- 若者全般のダウナーなムードや先行き不透明さと、何かしら関係していますか?

Kolya: ダウナーなムードについては、結論を急ぐことはありません。(昔から)ずっとそうでした、もっと悪くさえありました。今はそれについて普通に話せますが、昔は受け入れられませんでした。数世代前は、人々は自分がクソな状態で、自殺願望があり、精神的な地獄に落ちていることを、公に話しませんでした。そしてインターネットはありませんでした。インターネットは、なるだけ民主的です。誰もが、誰に対しても、何でも言うことができます。そして、それについて話せば話すほど、問題は見えてきますが、タブーを恐れるよりいいです。反対も正しいです。より改善されました。鬱はましになっています。

Nastya: 自分を乗り越えて心を開くことはとても難しいですが、やはりそうすれば、とても魅力的なフィードバックが得られます。 私は、IC3PEAKは独りぼっちの人向けの音楽だと思います。たくさんの独りぼっちがいて、全ての人が自立していて、お互い親しくなるのは、益々難しくなっています。"
https://novayagazeta.ru/articles/2020/05/27/85561-ic3peak-igraem-muzyku-dlya-odinokih-lyudey

作品の感想

IC3PEAK - Плак-Плак しくしく(泣いている)


黒・赤・白の色の使い方とそのコントラスト、黒の美しさが引き立つ。赤ではなく白で表現する血だまりは、独自性があって印象的。Windows98のような明るい草原も、不思議と違和感なくなじんでいる。毒の入った小瓶。大人になっても、魔女が配合する毒や、それが入ったアンティークの小瓶みたいなものに、アガるのはなぜだろう。心の中にまだ住んでいる、西洋の怖い物語を読んでドキドキした小さい女の子が顔を出す、そんな感覚だ。暴力やグロテスクな映像を使わないホラーや怖い絵には惹かれる。男性の首が、マネキンの頭部に代わる瞬間も、丁寧に繋がれている。人形だとわかっていても、コメディにならない。演出や小道具のクオリティが高いからだろうか。低予算の手作り感あふれる動画が多い中、こういうデザイン性の高い作品を欲していたことに気付く。

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