音楽におけるインターネットの公平性と友達経済/○○ファミリー/お友達内閣

最近考えている、音楽が生まれる場所、育つ場所、ビジネスになる場所について。

日本人が韓国のトップチャートに

YouTubeSoundcloudのリコメンドに従っていたら偏るので、ヒットチャートもチェックしている。SNSは、自分や友達の音楽の宣伝ばかりになって、良い音楽情報は流れてこなくなった。数字は嘘をつかない。ヒットチャートの方が、良い音楽を教えてくれる。
YouTube Music Charts 韓国 (8月21~27日)で、ツユ『泥の分際で私だけの大切を奪おうだなんて』が、BTSに挟まれて51位。韓国はグローバルチャートにも食い込むアーティストが多数いるので、その中で51位はなかなか。YouTube music chartsf:id:senotic:20200903212655j:plain

日本人は、お墨付きやブランドで安心したがる。安いワインがおいしいって言ったら恥ずかしいみたいな。歌ってる動画をネットに上げたらバズってデビューというケースが、海外より少ない気がする。
テレビや音楽メディアも、本当に危機感あるのなら、実際に人気があるアーティスト取り上げようよ。

韓国の学生音楽仲間

また個性が強くて面白そうな方を見つけた。特に、2つ目の動画。

恐らく過去にインタビューさせてもらったUyeon(Nahae)、sukiee、lokidの音楽仲間の方。Uyeonが最近大学を卒業されたみたいだから、大学生の音楽仲間だろうと推測している。Uyeonさんを始め、新曲をバカスカ出している。2016年の日本のネットレーベルやパソコン音楽クラブ界隈を彷彿とさせる。苦しんで生み出しているようには見えなくて、楽しそう。やっぱり楽しんで作る方が、良い音楽が生まれ易い気がする。もちろん、苦しんで苦労して作った曲が素晴らしいことも多々あるのだけど。
学生の間に驚くような良い曲をリリースしていたSSWやプロデューサーも、就職するとパタリと途絶えてしまう。仕事大変だもんね。モラトリアム期間や、ベーシックインカムが導入されたら、良い作品が増えたりするだろうか。

星野源ANN ゲスト米津玄師

9月1日『星野源オールナイトニッポン(ANN)』、ゲストは米津玄師さん。米津玄師さんはネットで人気になった人という認識はあったが、ご本人の声で説明を聞けた。
ボーカロイド曲の前から自分で歌った動画をニコニコ動画に上げていた。当時高校生で、誰かに聴いてもらいたいと強く思っていたが、ニコニコ動画以外に他に世に出す方法がなかった。当時は、オリジナル曲を動画サイトに投稿する人はほとんどいなかった。今はそれがごく当たり前のことになって、すごく感慨深い。長く中にいたのであまり客観視できていなかったが、離れて見てみると、(ニコニコ動画は)閉鎖された大きな島で、独特の文化だった。
ルーツとも言える、影響を受けたアーティストは、Bump of Chicken藤原基央さん。小学校高学年から中学校頭くらいのころ、ネットでフラッシュアニメが流行っていて、Bump of Chickenの曲が勝手に使われていた。影響を受けて音楽を始めた。出会ってなければ、今の自分はない。
以上が米津さんのお話。今はストリーミングがあるから、月1スタバ1回分以下の値段で、音楽が聴き放題。だから合法的に聴こうよと思うが、過去、違法な遊びの中から生まれた文化や音楽があるのは事実なんだろう。ニコニコ動画はほとんど使ったことがないが、TM NETWORKGet Wild』と吉幾三俺ら東京さ行ぐだ』のマッシュアップは、今でも定期的に見てしまうもの。

コミュニティとカルチャーは別

2016年後半からネットレーベル界隈を見てきて、数字で示すのは難しいが、リリースや話題となる作品が減ってきている気がして仕方ない。2016年2017年当時、Soundcloud状に次々にあっと驚く作品がリリースされ、どんどん新しいものが出てくる勢いを感じていた。

2016年、2017年に感動するようなプレイをしていたDJも、今は友達の曲をかけて場を盛り上げる。繋ぎが雑なまま、一向に上手くならない。自分の耳が肥えたせいかと思ったが、昔のDJミックス聴いても感動するので、そういうことではない。どこで切っても繋げるような単調な繰り返しの曲ばかりかけるDJ。ディガーでもDJ技術が高いわけでもない、音楽プロデューサーがDJとして出演する。知名度や仲の良さで選ばれるブッキング。ビジュアルの良いDJが、TOP40やEDMで盛り上げるチャラ箱と同じやん、と思ってしまう。お客さんは喜び、小箱も潤って、経済も回しているのだから、全く問題はない。クラブや小箱には、人が集まるコミュニティは確かにあると思う。経済よりも大事な、かけがえのないもの。だけど、そこに娯楽ではなくカルチャーと言えるものがあるのか、育つ場所なのかは疑問。

〇〇ファミリー

その昔、小室ファミリーというものがあった。知名度のある人と、その人がフックアップしたり仕事を回してあげることで成り立っている経済圏を、私は勝手に「〇〇ファミリー」と心の中で呼んでいる。「界隈」は、同じくらいの人気・知名度の人々の互助会のような意味で使っている。一旦そのファミリーに入れば安泰。仕事やブッキングは回ってくるし、上手くなったり、ヒットを出さなくても追い出させることはない。競争がない。半面、才能ある人が出てきても参入できない。VJ、レーザー、ジャケット、グッズデザインも同じ人ばかり。お友達内閣に似たものも感じる。能力ではなく知名度で当選する議員、そして総理大臣は、お友達を優遇したり順番に大臣にしてあげる。

インターネットは公平だが

米津玄師さんのハチ名義時代ののニコニコ動画の人気、Soundcloud、ツユの海外でのヒット、インターネットは公平だ。2016年、地方にメジャーにも劣らない音楽を作っている人が多数いることを知り、その人たちが音楽で食べていけたら夢があるなと思っていた。ネットやローカルから出てきて、売れている人はたくさんいる。しかし、そこまでのヒットがないアーティストは、ファミリーや友達経済の中でやっていかないと、音楽だけでは食べていけないんだろう。厳しい世界だ。

それでも、ミュージシャンにとって、サラリーマンより音楽で食べていける方が良いに決まっている。私個人が、執拗に公平性にこだわる理由と経緯についても書きたかったが、長くなったので別のエントリで。

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