フリー ライド

どなたかが保存費用をかけ、代々守ってくれた建築物を外から堪能しているし、手入れされた他人の家の庭に、毎年咲く花を楽しませてもらっている。誰かの努力や私財で守られたものを、日々フリー ライドして享受している。政治には興味を持とうとしているけれど、調べることに使える時間は有限で、政治や行政を監視してくれているオンブズマン的な人には、とても感謝している。コロナウイルスで影響を受けた国民への支援も、声を上げてくれた人のおかげで、和牛券が、一部の人に30万円になり、一律10万円になるかもしれない。

安倍首相が星野源『うちで踊ろう』動画を使ったことについては、のんびりしていることに腹は立つけれど、彼が頑張って動いたところで、他の国のリーダーのような対応がとれる訳ではない。政権に問題はあると思うが、誰もが許されているものを、安倍首相だけがダメだと言っていいものだろうか。改憲キャンペーンに使えばプロパガンダだが、出来が悪くとも、人命を守るためのStay Homeのキャンペーンなのだから、許されて良いと考える。

これを機に、星野源さんに、政治的スタンスを明らかにして発言してほしかった人も少なくなかったようだ。最近ブログでもよく書いている通り、発言力が強い人に言わせて乗っかる風潮に、疑問を感じている。

石野卓球さんは悪くないが、瀧さんの件で、マスコミというよりワイドショーが嫌いな人がたくさん集まってきて、卓球さんがマスコミにズバズバと言うことで、スカッとしている様子が見られた。「親分、マスコミがこんなこと言ってますぜ。ガツンといわしちゃって下さい。」みたいな。年初にバズった私のブログも、「こんな生意気なやつがいますぜ。」といった、大御所や影響力のある人への告げ口が散見された。いくら一人で声を上げて頑張っても、世の中ちっとも良くならなくて馬鹿らしくなるから、一声で物事を動かせるインフルエンサーに頼りたくなる気持ちは理解できる。インフルエンサーは「人気」という報酬を得るのかもしれないけど、インフルエンサーに言わせて物事を変えさせるのも、ある種のフリー ライドなのでは。

説明になってないけど、結局、どういう意味だったんだろうな。安倍首相がハミングで『陰謀論』を口ずさみながら、陰謀論ダンス踊ってSNSに上げたら、tofubeatsさんはどういう対応をされるのかしら。

tofubeatsさんは政治的な発言はせず距離をおいていて、『朝が来るまで終わる事の無いダンスを』がアンチ風営法ソングのように使われたことを嫌がり、シンポジウムへの登壇も断った。でも、風営法改正後、特定遊興の許可を得たクラブでプレイし、利益を享受している。(別に深夜のイベントは出たくないけれど、クラブ業界に貢献するために、仕方なく出てあげているだけの可能性も排除できないが。)クラブ業界の人はとびきり個性や主張の強くて、風営法改正では、その人たちをまとめようと、手弁当で労力を惜しまず動いた人がいる。改正の活動に参加せず、改正後に恩恵を受けている人もまた、フリー ライドだと思う。やりがい搾取に近いかな。

DJやクラブ関係の人は、いつもは集客やギャラ、ブッキングの話で賑わい、何でもありのレイヴやドラッグカルチャーの自由に憧れている。こんなときだけベルリンのクラブカルチャーを例に持ち出して、クラブが文化施設ヅラしている。マイノリティが安心していられるクラブイベントなんて、ごく僅か。コロナウイルスは、高齢者だけ重症化するから、人口ピラミッドの不均衡を是正するために、活動してウイルスを撒き散らせという人も何人もいた。誰もそれについて、指摘も議論もしなかった。小箱の文化的価値を示す例としてよく取り上げられているBar bonobo、クラウドファンディングのリターンは、お色気ガールズのプロマイド多様性とは程遠い。ベルリンの人たちが、闘い・守り・築き上げてきたクラブカルチャーのフリー ライド。文化の盗用みたいなもの。

コロナウイルスは割と等しく各国に影響を与えていて、国の危機管理対応能力の差が、露わとなった。国民が今までどういう政治家を選び、何に税金を投じさせ、どういう国にしてきたのか、今、成績表となって出ている。(sabuさんのブログで、クラブやライブハウスのクラウドファンディングの話を読んで、そう思った。)海外のリーダーは安倍首相とは違う、国民への生活支援も手厚い、アーティストを大切にする。でも勝手にそうなったのではなく、苦労して闘って手に入れている。調べれば調べるほどに、それが理解できる。時間も手間もかけず、政治は詳しい人に任せ乗っかって、フリーライドしてきた結果が今の日本の状況ではないだろうか。

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