和の音を魅せるDJ EUREKA(Negative Cloud) 、Masaki Tamura(DoitJAZZ!)

(田村さんのDJのファンにはこんな若手DJがいること、EUREKAさんのファンにはかっこいいジャズ兄貴がいること、例え一人でも知ってもらえたら嬉しいので1つのエントリにまとめた。)

EUREKA (Negative Cloud)
太鼓の音がえらいかっこいい曲だなとShazamしたら、鼓童の『焔の火 Honoka』と出る。鼓童?念のため聴き比べたがあってる。
インタビュー記事の最後に貼り付けるために録られた気合のmix。前半は極限まで音数が少ないがスカスカには感じず、むしろ音の空白がいい味を出している。何回Shazamしてもひっかからないから、1曲なのか重ねているのかわからないが、変化があって話の続きが読みたくなるような面白さ。6:00あたりに鳥の声、8:00あたりに人々の歓声が遠くに聞こえる不思議な曲。やっとShazamできた曲Move D『Sandmann』、元のBPMが速くて笑っちゃった。がっつり遅くしてるのに、こっちの方が踊り易い。そこから鼓童『焔の火 Honoka』、和太鼓だけのシンプルな音を40分のDJセットの中4分弱も。それなのに全く長さを感じさせない。もし私がDJができたなら、歌舞伎『棒しばり』のクライマックスで床を踏み鳴らすところを取り込んでみたいと思ってた。和太鼓だけの曲をテクノセットの真ん中にドンっと配置し、かっこよくかけられるDJがいることに驚いた。マッシュアップさせながらTzusing 『日出東方 唯我不敗』に繋ぐ。最後はPowder 『New Tribe』で締め。どこで繋いでいるかわからないほど、繋ぎもきれい。
感動して思わずツイートしたら、鼓童の和太鼓がメインで、その前はメインに繋ぐための前座だと、DJご本人が教えて下さった。確かに、前半で太鼓に似た音を含むテクノが流れ、テクノとして認識する耳ができた。その状態で聴くのと、いきなり鼓童の和太鼓だけを聴くのとは印象が違う。DJミックスの中ではあんなに輝いて聴こえたのに、単体だと「あれっ?こんな曲だったっけ?」とがっかりすることがある。そういう作用だったのか。
どうしてもかけたい曲があって、それをよく聴かせるために前後のDJセットを組む。そこまで考えて組んでいるDJがどれだけいるだろう。考えることができたとして、それを聴き手に伝えるだけの技量があるDJは。テクノやハウスは歌詞がない。でも、しっかりと構想が練られていれば、言葉で捕捉しなくともDJだけでもちゃんと伝わる。それを実体験する貴重な機会をもらって感謝。込められた意味や価値がわかるように、もっと聴く耳を養おう。
Move D『Sandmann』
Tzusing 『4 Floors of Whores』
鼓童『焔の火 Honoka』
Tzusing 『日出東方 唯我不敗』
Powder 『New Tribe』

Masaki Tamura(田村正樹)DoitJAZZ!
神戸はジャズの街で、三宮の山側にはジャズクラブもあって、駅前の広場でジャズミュージシャンがよく路上でライブをしてた。でもジャズってなんか面倒だった。ライブは高くて敷居も高いし、ジャズ警察やジャズおじさんが小難しいこと語って喜んでる。日本のジャズは技巧に走ってダメになったとよく耳にしたけれど、その通りだと感じていて聴いてもつまらなかった。
ジャズDJの田村さんがかける曲をShazamしてもジャンルはディスコだったりして、「ほらやっぱりね。(ジャズを良いと思うはずない。)」と納得していた。たくさん検索していくうちにジャズも出てきて「あれ、おかしいな。そんなはずは。」となり、『DJの聴き方楽しみ方』でも事例に出した井上和洋さんの和ジャズmixこれまた最高で、好きなジャズが存在すること認めざるを得なくなった。
そんな田村さんの新たな試み、和ジャズ/フュージョン/YMOミックス。田村さんのDJが特別なのは、音楽に対して偏見やバイアスがないところ。名盤とか希少性、既存の評価、流行や時代関係なく、埋もれている良い曲を見つけ出してかけてくれる。技術や文脈よりも、聴いて「ええわぁ。」と思える曲。単体で聴いてもわからなかったであろう曲が、田村さんのDJの中だと良さがわかる。DJの力量を見せつけようとか、踊らせようとせず、粛々と良い曲を丁寧にかける。生音ジャズ縛りVinyl onlyも続けるけれど、デジタル配信しかない良い曲もあるからUSBでもDJをする。音楽を作るのに人柄は関係ないかもしれない。ことDJに関しては、日頃から音楽と向き合い集めなければできないし、音楽に対する姿勢がDJに反映されると思う。

<Hideo Shiraki(白木 秀雄)『In Fiesta』(1961年)>
筝曲「六段の調」のアレンジから始まる、祭囃子のメロディを取り入れた和ジャズ。ピアノ・フルート・サックス・トランペット、何よりドラム、音の一つ一つが繊細で磨き上げられた工芸品のよう。それでいてグルーブもあり、厳か且つ熱気のある日本の祭りが表現されている。ドラムのソロがあまりにかっこよくて、思わず前のめりに。鼓(つづみ)や和太鼓の音は柔らかくて出せる音の表情が豊かだけど、ドラムの音は乾いて尖っていて耳へのあたりがきつく、厚みがなくて好きじゃなかった。この白木氏のドラムを聴いて、いかに繊細な音が出せるか、どれだけ幅広い表現ができるかがよく理解できた。打ち込みでは絶対に表現できない。和洋折衷でこんなにおしゃれな曲はいつ頃のかしらと調べたら、白木氏は昭和一桁生まれで、リリースは昭和36年(1961年)。素人ながらに演奏技術の格の違いを感じるし、音楽は独創的で洗練されていて、天才はどの時代にもいるんだけどちょっと勝てる気がしない。この時代の芸能界はクリーンではなくて、苦労も良くないこともあったはずだけれども、江利チエミとか勢いがあって飛びぬけた才能を持った人がたくさんいて、日本の音楽シーンが豊かだったように思える。
<Yutaka Yokokura(横倉裕)『Breath Of Night』(1978年)>
和ジャズからフュージョン、年代が違っても和楽器繋がり良い流れ。繋ぎもさすが。フルートのような尺八、ギターのような三味線、異人館を作る日本の木造建築技術のよう。単に真似るのではなく、和洋折衷(まさにフュージョン)や日本の技術の良さがにじみ出てる。
<Osamu Kitajima(喜多嶋修)『Dragon King』(1981年)>
繋ぎがきれい過ぎて、この曲に変わってるのに気が付かなかった。筝・尺八・琵琶の掛け合い、低い音はベース?琵琶は、日本らしさよりもシタールのようなオリエンタルなメロディを奏でてる。筝のソロ、映像がみたいな。音がうねるところは、絃を指で押し下げてるのでは。
この3曲、リバイバルもあったそうでジャズ好きには認知されているのだろうけれど、私は知らなかった。良い曲なら流行ってもなくてもかけてくれる、田村さんのおかげで出会うことができた。この後も、鈴木茂や東海林修など良い曲ばかり、きりがないので個別に書くのはここまで。リストだけ貼っておく。日本の素晴らしい音楽が、多くの場所で聴かれますように。

1 白木秀雄 Hideo Shiraki In Fiesta
2 横倉裕 Yutaka Yokokura Breath Of Night
3 喜多嶋 修 Osamu Kitajima  Dragon King
4 Yellow Magic Orchestra Simoon
5 坂本龍一 黄土高原
6 ? ?
7 西木栄二 Eiji Nishiki 突然UPSIDE DOWN - 星へ行く船
8 真鍋ちえみ うんととおく
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10 矢野顕子/渡辺香津美 I'll Be There - KYLYN
11 鈴木茂 On the Coast
12 桑名晴子 You're Young
13 森園勝敏 Space traveller
14 鈴木さえ子 Come Wonder With Me
15 ? ?
16 大貫 妙子 幻惑
17 坂本龍一 Ballet Mecanique
18 ? ?
19 大橋純子 Dancin'
20 DJ KAWASAKI Don't Put My Heart Down
21 越美晴 カルディアの海
22 Yellow Magic Orchestra Firecracker 
23 東海林修 Osamu Shoji Airport in South Islands
24 ? ?

超名盤らしい渡辺香津美のアルバム『KYLYN』の中の『I'll Be There』、ロンドンのMidnight Riotが、bandcampでそっくりそのまま別の名前で販売してた。Mixcloudではそっちのが検索されて表示されてしまってる。権利関係どうなってるんだろう。正しい作曲者や演奏者認知され、評価されてほしい。
Akasaka - Water Ways

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