Dorian Electra 『Monk Mode (feat. Gaylord)』 マスキュリズム(反男性差別思想)とインセル(不本意の禁欲主義者)

テーマ

この歌のテーマは、マスキュリズム(反男性差別思想)。つまりフェミニズムの対極。

Dorian Electraはもちろんフェミニズムにも理解があり、ミソジニーインセルもこのプロジェクトのテーマではあるが、インタビューの中で以下のようにも答えている。

私たちは、反対側の人々がどのように感じているかを認識し、彼らとより上手くコミュニケーションする方法を学ぶ必要があります。

私をインセルに本当に惹かれたことの1つ、長い顎鬚の美学は、中世とファンタジーの側面です。 剣やドラゴンや物の全て。 騎士道に重点を置き、建前上恐らくフェミニズムが堕落させた伝統的なジェンダーの役割に立ち返ること。

単に男らしさやジェンダーロールについての考え方の歴史を辿るのが大好きです。 ファッションと美学の中において、全くそのまま男らしさやジェンダーロールが表れているのが見て取れます。

Dorian Electra 『My agenda』のテーマとは?(男らしさ・ミソジニー・インセル・オルタナ右翼) - 電子計算機舞踏音楽

歌詞和訳

唯一の方法
安定と不変
犠牲の力
これが僧侶のやり方

またそこにインセルがいます
自ら招いた孤独
もっと強い男になるために
精液で種付けをするのを諦める
きれいなフェミニズムの亡骸をつまんで
パンチ、キック*
要は精神
弱さの陰に自分の亡骸をただ置き去りにして

*ゲーム『パラッパラッパー』のパンチとキック

用語

インセル

Involuntary celibate(不本意の禁欲主義者)、略して「インセル

女性は皆、お金が好きで、ふしだらで、他人を操作しようとするという見方は、インセル掲示板の傾向としてはっきり表れている。ここでは、魅力のある女性たちは「ステイシー」という名前で呼ばれる。

「ステイシー」たちは、欲望と同時に嘲笑の対象でもある。インセルたちは、「ステイシー」たちはいつも、自分たちでなく「チャド」たちの方を選ぶと信じている。

「チャド」とは、性的な面での勝ち組の男たちのことだ。それは単なる性格や自信の程度の比較ではない。多くのインセルたちは、自分たちが遺伝子的に「チャド」たちに劣っていると考えている。

不本意の禁欲主義者――「インセル」たちの知られざる世界 - BBCニュース

Monk Mode(僧侶モード)

「Monk Mode(僧侶モード)」は、一般的に自己隔離を意味しますが、『The Red Pill』等の様々な反フェミニストコミュニティで採用されている、自己啓発のため、マスターベーション、飲酒、そして時にはあらゆる付き合いを断つ期間のことを言います。
「Monk Mode(僧侶モード)」の支持者の中には、それが性的パフォーマンスとデートの「成功」を高めると主張する人もいて、インセル不本意の禁欲主義者)やMGTOW(自分の道を行く男達。女性と付き合うのはコスパが悪いと考え、自己研鑽に専念する男性)の間で人気があります。

Dorian Electra – Monk Mode (Interlude) Lyrics | Genius Lyrics

マスキュリズム(反男性差別主義)映画『The Red Pill』

マスキュリズムとは、男性差別をなくして男女平等を目指す男性運動のこと。フェミニスト男性差別をテーマに取り組んだことで話題となった映画が『The Red Pill』。

Red Pill(赤い薬)とは

マトリックス』の序盤で、主人公のネオはサングラスをかけた男に「青い薬を飲むか、赤い薬を飲むか」の選択を迫られる。青い薬を飲めば、日常の(実は仮想現実の)世界に戻れる。赤い薬を飲めば、つらいけれども真実の世界を知ることができる。ネオは赤い薬を飲み、現実を知ることになる。

男性差別は存在するのか 女性運動家が撮った現実|WOMAN SMART|NIKKEI STYLE

Gaylord クィアブラックメタルアーティスト

この曲でコラボしたGaylordは、反ファシスト、ノンバイナリー、クィアブラックメタルアーティスト。特に保守的なブラックメタル界においては、稀有な存在。ブラックメタル界で、クィアであるとカミングアウトし、音楽活動をすることの大変さについてインタビューで語っている。日本のHIPHOP界にも似たようなものを感じる。

はい、自身の性と性自認は、私が成長で大変苦労してきたことです。 私が若く10代の頃、自分の肌に全く合わないことがわかっていました。自分は女性に生まれるべきだったと常に感じていました。そして今、36歳になって、自分が誰であるかを説明する正しい言葉を見つけたばかりです。今自分はノンバイナリーだと自認しています。私が子どもだった頃は、この用語が存在することすら知りませんでした。私はただ感じていました、違うと。

―特にエクストリームメタルやブラックメタルは、非常に保守的だと思いますか?

自ら建てた刑務所だと思います。 シーンは、カウンターカルチャーに非常に重きを置いて展開しているので、狭く定められたルールの外に出ると、目立ちたがり屋だと見なされます。 (例えば)長い髪にすることは非常にメタルなことですが、私たち全員が長い髪に伸ばすことができるわけではありません。時に、遺伝子・事故・仕事の役職が、髪を長くできるかに影響します。しかし、髪を切るや否や、シーンから目立ちたがり屋だと言われます。こうリフを演奏しないと、こう歌わないと、目立ちたがり屋になります。つまり、とてもしっかりとカウンターカルチャーでいるために、ヘビーメタルは、特にブラックメタルは、保守的な刑務所を建設してしまったのです。

 Unmasking Gaylord, Black Metal's Latest Anti-Fascist Enigma

先日ホモフォビア(同性愛嫌悪)発言をした男性ラッパーさんは、子どものころサウナで男性の同性愛者から性的被害に合ったことがきっかけだと告白していた。性的加害者となる同性愛者はごく一部でしかないことを頭では理解していても、嫌悪してしまうのかもしれない。ツイッターのフォロワーさんに、論理的で常識があって、趣味のセンスも良く、さぞかし女性におモテになるんだろうなという方がいらっしゃる。なのに、発言にちょくちょく女性嫌悪がにじみ出る。クソフェミとか言うのではなく、言葉の端々にさりげなく。その様子を見て、鏡を見るように、自分の中の男性嫌悪に気付くことができた。実は、インセルの気持ちがわかったりもする。男性嫌悪を自認できたことで、少しずつ向き合い、改善できているようは気はしている。ここだけの話、自分のライフスタイルは、宛ら「Monk Mode(僧侶モード)」だ。自分は異性愛者で、異性から愛されない自分は劣っているという考えから解放された今は、随分と生きるのが楽になった。こにブログという場所では、性別年齢見た目を気にせず、愛されようと思って無理して書いていないので、とても楽しい。ブログを通した緩い人との関わりの中で、人の優しさにふれ、人間不信や男性不信は薄らいできている実感がある。男性社会の中でつぶされないように、鎧を着て気を張って生きてきたけれど、自分が思っているよりかは、世の中優しい男性が多くいるのかもしれない。そう思えるようになり始めている。

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