アニメで女の子がDJに憧れるのか、クラブに来てくれるのか
D4DJのターゲットは団塊ジュニア
DJのアニメが話題になっており、第一話はYouTubeで観れるので観てみた。DJ WILDPARTYさんや秋葉原のアニソンクラブMOGRAも協力していて、Pioneer DJの機材で曲の繋ぎ方を教える場面もある。
TVアニメ「D4DJ First Mix」第1話
このアニメを観て女の子がDJを始めたりクラブに来てくれるようになったらと、誰かが言っていた。そうなったら良いのにね。そもそもこういうアニメって、女の子が観るものなんだろうかという疑問が湧いた。私が中高一貫教育の女子校生だったのは遠い昔で、時代も価値化も大きく変化したとは言え、こういう現実とはかけはなれたファンタジーの女子校のストーリーを観るのだろうか。私の場合、退屈な毎日がましに見えるドロドロとした悲惨なドラマとかを観ていたような記憶がある。
アニメ「D4DJ First Mix」エンディングテーマは、小室哲哉のWOW WAR TONIGHTのカバー。なんと、D4DJは小室ファミリー。いや、これやっぱり、30代40代狙いじゃないのと思って調べてみた。すると、日経トレンドに記事があった。
ところが、20代は層が薄いのです。20代と40代の人口を比べると40代が1.4倍です。しかも40代の約4分の1は独身で、20代の2倍以上の金額をエンタメに使っていると言われます。トータルで考えると、20代と40代のマーケットサイズは1対4ということになる。
結局のところは30代後半から40代、団塊ジュニアに受けたものしかビジネス的に大ヒットしていないということです。
――「D4DJ」のアニメやライブ、ゲームで扱う曲は、『タッチ』や『銀河鉄道999』といったアニメ主題歌、中森明菜の『DESIRE -情熱-』、相川七瀬の『夢見る少女じゃいられない』といった懐かしの曲から、『徹子の部屋』や『警部補・古畑任三郎のテーマ』『ルパン三世のテーマ』のような人気番組のテーマ曲まで多彩です。
団塊ジュニア世代狙いと正直に書いてあって驚き。絵のスタイルが古いというコメントもあって、30代後半から40代を狙ってあえてそうしているのかも。アニクラも高齢化している印象があるし。
男性の女性アニメ消費
ついでに、大人の男性が女の子のアニメを消費することに関して思い出したこと。同じ価値観の人に囲まれていると、ズレや異なる価値観があることに気が付かないという話。
「大きなお友だち」が立派なダッドになるとき|ニュー・ダッド あたらしい時代のあたらしいおっさん|木津毅|cakes(ケイクス)
無料で読めるときに全文を読んだ。所謂オタクで女児アニメが好きなお父さんと小さい娘さんがプリキュアを楽しむ話。娘さんが大人になったとき、お父さんの友達がその娘さんに、"「きみのお父さんは、きみとプリキュアを観るのを本当に楽しんでいたよ」と伝えたい"といった締めくくってあった。多くの共感を呼んでいたが、私はものすごい違和感があった。いくら女児アニメオタクのお父さんがピュアに作品を楽しんでいたとしても、幼い女の子の娘さんとでは、作品の解釈や楽しみ方は違うはず。良い話だから娘さんも喜ぶに違いないと信じて疑わず、娘さんが大きくなったら伝えてあげようというのは、相手側の価値観を理解しようとせず押し付けていて、気持ちが悪かった。「大きなお友だち」の大半が、女児向けアニメを純粋な気持ちでファンであったとしても、全員がそうではない。子育てを経験し子どもが十分成長したくらいの年齢になればまだしも、18歳の時に50歳おじさんに、「お父さんは心からプリキュアを楽しんでいたよ。」と言われたら、よほど偏見のない達観した女子大生でなければ、良い話として喜んであげられないと思う。例えば、18歳の男子大学生が、50歳のお母さんの友達のおばさんに、「あなたのお母さんは、あなたが小さい頃、戦隊ヒーローの映画を心から一緒に楽しんでいたわよ。」と言われたら、男子大学生も困惑すると思う。虫が苦手で大嫌いなのに、息子のカブトムシ獲りに無理して付き合っていた話とかなら、感動するけど。(息子さんの机の引き出しの中でカマキリが孵化して、引き出しを開けたらカマキリの赤ちゃんがわんさか出てきて腰を抜かしそうになったという話を聞かされ、微笑ましく思ったことはある。)新しいおじさんの形を探るコンテンツのはずなのに、偏った視点しかなく、とても残念に思った。「ニュー」でも新しくもない。
女の子が行きたくなるクラブ
2000年代の振り返りのエントリで書いたように、今のクラブは普通の女子大生・女性会社員が週末楽しむ場所の気がしない。アニクラやHIPHOP勢が強くて、モッシュもあるからお気に入りの服を着ていくのを躊躇う。若い女性にクラブに来てもらうためにやることは、女性のエントランスやフードを無料にしたり、トイレに生理用品置くとかじゃないと思う。DJ HASEBEさんの配信は女性リスナーが多いらしく、選曲からもそれがわかる。YOSA & TAARさんのMODERN DISCOも女性が多かったらしく、それも(女性の私には)なんとなくわかる。クラブで女性な好きな曲がかからないのも一因ではないだろうか。女性が来なくて男性のお客さんが多いから、男性ウケする選曲に寄せるんですよと言われてしまったら、まぁそれまでなんだけど。YouTuberのアバンティーズがクラブイベントに出演したときは女の子の服装がみんな似たような服だといじられていたり(普段クラブに来ない層の女の子のファッションを見慣れないからだろう。)、SIRUPさん目当ての女の子が踊らなくて棒立ちだったと某女性DJがSNSで非難したり、空音さんのHugが好きな女の子を自称HIPHOP通が嫌ったり、普通の女の子は歓迎されていない空気を感じる。
女性は機械が苦手というバイアス
女の子が初めてDTMしようつってんのに、707と303持って来られるの、高校生が面倒なバンドマン爺にヴィンテージギターとロックンロールの長話されるのに近い気がしてちょっと申し訳なさある
— にしやま (@scoscoscosty) 2020年10月13日
せっかく良い企画なんだから、女の子にはビンテージ機材は難しいからかわいそうというバイアスはなくしてほしいな。年齢関係なく、機械やパソコンが超苦手な男性はたくさんいる。車の運転が苦手な男性もいる。女性がDJに向かないとか、機材が苦手ということはない。取るに足りない些細なバイアスだったとしても、それが積み重なって男性の価値観で作られた"常識"によって、女性が少しでも苦手に感じたり失敗したりすると「やっぱり(女性には)向かない」からだと思われ諦めてしまう。せめて、子どもが聴くポケモンの歌を作るお兄さんや、若年層の音楽教育に携わる人たちには、そういう無意識のバイアス(決めつけ)を取り除いてほしい。