電算機的 BEST MUSIC 2019年 (1~10位)

太っ腹なCoachella配信のお陰で、それをきっかけに今年は世界中の音楽を堪能することができた。音楽から多様な文化や価値観も学んだ。無意識のうちに自国や身の回りの価値観に自分を合わせ、抑え込んだり無理をしていた気持ちにも気が付くことができた。

①Hoàng Thuỳ Linh - Để Mị Nói Cho Mà Nghe (ベトナム

韓国で人気芸能人がネットいじめを苦に自殺したり、10年経過しても状況は良くなっていない。何の非もなかったLinhが、復活をかけ若い才能を結集した作品。ベトナムの伝統や歴史文学作品をモチーフにするという芸術作品でありながら、ティーンをも虜にした。年齢性別かかわらず、衣装や振り付けを真似て踊り、多くのパロディも生まれた。現時点で8876万回再生を超える。アジア各国の代表歌手が出演するABU TV SONG FESTIVALにベトナム代表として出演、その様子は年末NHK WORLDで放送予定。
未来を奪われた少女の復活 Hoàng Thuỳ Linh - Để Mị Nói Cho Mà Nghe - 電子計算機舞踏音楽

②ROSALÍA - DE AQUÍ NO SALES (スペイン)

El Mal Quererは13世紀の原稿を引用して作られたもので、妻が浮気をしたと思い嫉妬した夫が妻を塔に閉じ込める。一方このMVでは、男性が燃料を被り焼身するが、女性のROSALÍAは冷たい視線を送り、バイクで颯爽と去る。アルバム「El Mal Querer」を最も象徴するMV。ROSALÍAは自動車産業の街で生まれ育ったこともありは車やバイクが好き。車を象徴する大きなエンジンと、ガソリンのような黒い液体に沈む顔、鏡のような水面、個性的な髪形、視覚的な美しさを上げていけばキリがない。ポップではないが音数が少なく、シンプルな分ROSALÍAの力強いカンテ(フラメンコの歌)の実力と、ハンドクラップとバイク音という洗練された組み合わせが引き立つ。ROSALÍA自身もお気に入りの曲。

③ROSALÍA - Aute Cuture (スペイン)

②のDE AQUÍ NO SALESと同じく女性の自由というフェミニズムがテーマだが、音楽と映像は正反対。ポップで明るい。ツインテールや女性らしいファッションも多いが、マスキュリンな服装も取り入れていて、ネイルやキラキラした服装をするのは男性のためではなく女性が楽しむためということを伝えている。
ROSALÍA - Aute Cuture フェミニズムとファッション - 電子計算機舞踏音楽

④ROSALÍA, J Balvin - Con Altura ft. El Guincho (スペイン)

10億回以上再生され、ROSALÍAを世界に知らしめた曲であり、成功を支えたEl Guinchoとのコラボであり、私自身がROSALÍAに最初に興味を持った思い出の曲。
ROSALÍA, J Balvin - Con Altura 歌って踊れる敏腕プロデューサー

⑤Yo Yo Honey Singh, Ashok Mastie & Jyotica Tangri - Khadke Glassy (インド)

ボリウッド映画『Jabariya Jodi』のサントラ。インドも掘ってみたが、ローカル色が強く民謡調かユーロビートみたいなものが多く、インド色は残しつつポップで展開もしっかりしているのはこの曲と次の6位の曲だけだった。ボリウッドは俳優と歌手は分業なので歌の部分は口パク。歌手は見た目ではなく歌で評価される。ボリウッドらしく大人数で踊るが、他のボリウッドMVと比べて色が淡くlo-fiで、振り付けは西洋風で独創的。MVは紙吹雪・煙・液体も使って空間も彩られていて、スローモーションによってより躍動感が強調されている。映画自体の評価でMVやサントラの順位が影響されるのでインドでトップではなかったが、音楽・ダンス・演出、インドの中ではこの曲が突出している。
YouTube Music Charts 地球で踊る

⑥Jyotica Tangri, Vishal Mishra - Macchardani (インド)

⑤と同じ映画のサントラ。インド要素は残しつつポップな音楽と振り付け。数々の女性のサリーが美しくてときめく。サリーといってもこれほどに種類がある。

⑦MONATIK - Каждый раз (ウクライナ

 改めてベストに選んだ曲と並べて聴き比べてみて、AメロBメロ展開みたいな構成やキューバ風のアレンジ、音楽としてしっかりしてるんじゃないかと。レゲトンはだいたい似ているしカバーも多い、K-POPはダンスはかっこいいけど音楽は20年前くらいの歌謡曲感がある。ウクライナ語のハンデはあるけれど、アルバム「LOVE IT ритм」は音楽的に名盤だと思う。
【嵐の夜に2】 スペインの忍者、ウクライナのダンス
成功は最大の復讐 ウクライナのスーパーマルチタレント MONATIK
ウクライナの音楽産業 家族を殺した国でのライブ

⑧MONATIK & Надя Дорофеева - Глубоко... (ウクライナ

⑦と同じくアルバム「LOVE IT ритм」から。

⑨Powder - New Tribe (日本)

PitchforkのBest New Musicに選ばれ、Gilles Petersonも次世代を担うDJとして注目しているDJで音楽プロデューサーのPowder。今年ワールドツアーを成功させた。ストーリーとAC部が手掛けた映像も含めて。
まさかの桃子だから桃 Powder - New Tribe

⑩LITTLE BIG — I'M OK (ロシア)

ロシアやウクライナでは長期間上位を維持していたが、別のMVがグローバルチャートでもランクインしていた。言語や文化的な文脈の理解を必要としない、万国共通のコミカルさは強い。MVには太っている人もお年寄りも出てくるが、容姿や年齢はいじらない。野良犬のMVは、ペットを捨てないでというメッセージで作られたもの。世代や国を越えて楽しめるのが魅力。
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