Behind the Scene #2 榎本幹朗 テクノロジーと音楽ビジネスの歴史 | 中国韓国 K-popのファンカルチャー

テクノロジーと音楽ビジネスの歴史

小熊俊哉氏と若林恵氏の番組、榎本幹朗氏を迎え、テクノロジーと音楽ビジネスのお話。質問したり、自分の考えを引き出してくれるとても刺激になるトークだった。自分は、アカデミックなことよりも、ビジネスやドキュメンタリーに興奮する人間だと自覚もできた。

Behind the Scene #2 榎本幹朗「音楽の最先端からビジネスと社会の未来を見通す」

個人的に興味深かった点のメモ。

22:27 ラジオの普及によりレコードが売れなくなった
36:52 パソコンは仕事をするもの、遊びは携帯電話
          パソコンはGoogleYouTubeなど無料、携帯電話なら課金する
          着うた、LISMO
41:05 小型ラジオ、白人の子どもは黒人のロックを聴きたかった
          ラジオはレコード禁止、基本ライブ
          戦地向けレコードをかけるラジオ
49:34 エンジニア主導からユーザー主体へ
          女子供、イノベーション
          業務連絡用だったポケベルを女子高生がコミュニケーションツールにした
          コンテンツからコミュニケーションへ
55:57 iPodマーケティング、性別で戦略を分ける
59:50 中国のサブスクリプション投げ銭
          テンセント
          著作権管理の緩さ、カラオケ動画に投げ銭、ソーシャルカラオケ
          ギフティング、投げ銭の上限200万円
          中高年の女性の娯楽 公園のダンス カラオケ
01:14:47 中国 ストリーミング配信前の先行ダウンロード販売成功
01:53:30 二次創作や翻訳など、参加型
               音楽の良さを文字でなく表現やシェアする方法はないのか
02:00:44 音楽が人を結び付ける 音楽のmixiのようなコミュニティ
               音楽は通貨

トークに刺激を受けて考えたこと

トークの内容に刺激を受け、様々なことが頭に浮かんだ。

Bandcamp

ギフティングや投げ銭の話で、Bandcampが出てこなかった。Bandcampは、価格を自由に上乗せできる。キュレーションもやっているし、ライブ配信も始めた。

中国の公園ダンス

以前、調べて和訳したことがあったので、該当部分を。

どの公園や広場でもダンスが行われていて、広場ダンスとしても知られる廣場舞は、中国で1億人以上の人々、特に退職した中年の女性が練習しています。.TAGから家までの10分の移動で、エアロビダンスをしている女性グループや、太極拳や剣を用いた第三の格闘技の練習をしている別の群衆のそばを通り過ぎました。麻雀をしている男性、老夫婦、旗を振って歌っている人々がたくさんいる人民公園を散歩することで、活動・コミュニティ・純粋な楽しみを目にして感じるのは、西洋のメディアが描く冷たく抑圧された中国のイメージとは正反対ということです。

四川省成都のクラブ『.TAG』38歳女性経営者 Ellen Zhangの奮闘 - 電子計算機舞踏音楽

勝ち抜き番組

中国『青春有你2』『说唱新世代』、韓国『Show Me the Money』など、アジアのオーディションや勝ち抜き音楽番組が、レベルの高いアーティストを生んでいる。オーディション番組自体は観たことがなく、注目の新人アーティストを調べると、各番組の出身者だったというケースが最近多い。プロデューサーや審査員が若いことが、良い方向に作用しているように思う。K-pop人気により、K-pop以外のアジアの音楽番組や新人も注目されている。
紅白歌合戦は何十年もヒット曲を出していない歌手が出演したり、Mステはジャニーズがある程度の割合を占めている。ASAYANのような勝ち抜き番組、ベストテンのようなランキング番組がない。オーディション番組やランキングなどフラットに勝負すると、大手事務所が困るのだろうかと勘ぐってしまう。

日本の音楽を海外に売る

私のブログ記事のアクセス数からも、日本の音楽関係者が知りたいのは、日本の音楽をどうやって海外に売るかだと思う。しかし、海外の音楽事情や文化を知ろうとしている人は多くないように見える。売るためには、まず相手をよく理解することでは。

音楽は通貨

レコードやCDは、希少性で価値が上がることもある。亡くなった作曲家の未公開音源なども。将来有望な無名新人の原盤権の買取は投資になる。

音楽を贈る

昔は友達に歌詞に意味を込めてCDをプレゼントしたり、子供の頃は好きな曲を好みの順番で並べたミックステープを作って、友達にあげたりもらったりした。基本的に自分の好みの押し付けだから、うざかったと思う。今はプレイリストを勝手に見てもらうだけなので気が楽。テープは、曲順も入れ替えられないし、テープの長さにちょうど収まるように曲の長さや間隔を計算しないといけなかった。通学や海までのドライブ、その行程に合うよう曲順を組む。DJに通じるところがある、面白い遊びだった。子どもの時に体験できて良かった。カセットケースに入っている紙にプレイリストを手書きし、シールでデコレーションなんかもした。カラフルでキラキラしたカセットテープやケースもあった。
今の子どもは、誰もが当たり前のように、音楽に振り付けや表情を付けて動画を取り、その動画を編集できるから凄い。大人になってもそのスキルを活かした遊びができるんだろうなと羨ましい。

K-popのファンカルチャー

若林恵氏が少し触れていたK-popファンの音楽の楽しみ方は、自分たちとは違うんじゃないかという話。必ずしも全K-popグループファンに共通することではないが、K-popグループのことを調べ始めてカルチャーショックだったことをピックアップ。感情的というより、ロジカルで合理的だと思う。

《組織的に順位を上げる》
データで状況を可視化し、データや順位はグラフ化され、ファンの間で共有される。最適なタイミングで一斉に購入や投票をする。
《手段を択ばず》
海外での順位を上げたり、その国限定のサービスにアクセスするため、VPN接続も使いこなす。
《布教》
あまた存在するK-popグループの中で、推しのグループの魅力を伝え覚えてもらうため、コンサル顔負けの販促パワポ資料を作る人がいる。(多ジャンルと比較した個人的感想として、)ファンを増やすことが目的なので、新米ファンにも寛容で古参アピールでマウントしたりしない。
《貪欲》
歌詞の内容からニュースまで、文字でなくても画像からも自動翻訳できるアプリを使って、何としても知ろうとする。韓国語も勉強する。振付師や作曲者まで、すぐ調べる。例えば、アイドルが作業している動画から、BGMとして部屋で小さな流れている曲を聴き取って曲名を特定し、そのリストが共有されたりもする。
《搾取》
アーティストへの愛から、事務所の搾取に厳しい。グループによっては、メンバーの平等な扱いも求める。SNS上でタグを使ってトレンド入りさせ、事務所に抗議する。
《団結と助け合い》
推しを布教し、順位を上げ、推しを守るために団結する。出来る人がデータ集計や翻訳をボランティアで行い、それが困難な人を助ける。
《動画編集スキル》
ライブで歌えるように翻訳歌詞動画がすぐに上がる。そのパートを歌っているアイドルの写真と名前がハイライトされ、誰が歌っているかわかるようになっている。K-popに限らず、ジャニーズファンもだが、推しの名場面を集めた総集編など、動画編集スキルが高い。
《偏見がない》
「どの国か/どの言語か/実績があるか/評価されているか」はあまり気にせず、自分が好きなもの、かっこいいと思うものを追求する。政治情勢や人種とアーティスト自身を分けて捉える。偉い人がどう評価しているかは、自分が選ぶ基準にならない。(日本の音楽評論家は、K-popを高く評価してこなかったのだから。)
男性は「海外で売れている流行っている/権威のある人が褒めている/今知っておけば後々早耳だと自慢できる/演奏技術が高い」といったお墨付きやマウントできるかに弱い傾向があると思う。「〇〇なんか聴かずに、××聴けよ。」と男性から言われたことがあるし、よく見かける。女性からは、お薦めはされるが、「〇〇なんか聴かずに」とは言われたことがない。バイアスのない男性もたくさんいらっしゃるが、「こういう難しい音楽の良さ理解できる俺かっこいい。」とか、読んでいる本で人を評価したりマウントしたりするのは、女性より男性に多い傾向にあると思う。

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