DJ Mayu Amano #tsubakifm 伝統の音を斬新に編み込み、ジャズの思い込みを打ち砕く②

 Amanoさんの選曲は、どの曲も調べるほどに興味深い。日本でCDが売られていないからか、日本語での情報は無い。こういうジャズを紹介してくれる人がいたら、もう少し好きになっていたかもしれない。どうも日本で一般的に広く紹介されているジャズは、技巧的で華やかさや個性がないように感じてしまう。もしかして、Amanoさんが選ぶジャズは、ジャズの中の特定のジャンルなのかもしれないが、まだ調べきれていない。ただ、こういったジャズを見つけ出し魅力的にプレゼンテーションできる、Amanoさんの高いキュレーション力が果たす役割は大きい。

Tubakifm主催のMidori Aoyamaさんは、考え方は共感できないことも多いが、キャリア年数が短い若い女性DJであるAmanoさんを、対等に扱い、Nabihah Iqbalさんに繋げたりされているのは、なかなかできないことだと思う。女性や若手を評価していますよとドヤ顔でアピールするのではなく、自然と。本来、性別・経験年数・年齢ではなくDJの実力で評価するのは当たり前のことではあるが、日本の男性、特に日本のクラブ業界やDJ業界では、残念ながらとても珍しく、またそれによって評価もされない。

前置きが長くなってしまったが、さっそく前回からの続き。

・Anticueca - Ayotzinapa (En Vivo) (2017年 チリ)
・Dewa Budjana - Suniakala (2016年 インドネシア)
・OP3 - Please, Exit Now (2020年 ギリシャ)
・不明
・Lund Quartet - Sequoia (2011年 イギリス)
・Mischa Blanos - Am Wired (2019年 ルーマニア
・Paradise Cinema - Casamance(2020年 セネガル)

・Pan Afrikan Peoples Arkestra - Nyjah's Theme(2020年 アメリカ、アフリカ)
・Rob Mazurek/Exploding Star Orchestra - A Wrinkle In Time Sets Concentric Circles Reeling(2020年 アメリカ)
・Aratita Electronik Jazz Quintet - Fables of the Solar Gods(2020年 イギリス)
・EABS - The Lady with the Golden Stockings (The Golden Lady)(2020年 ポーランド
・Rymden & Bugge Wesseltoft & Magnus Öström - The Life and Death of Hugo Drax (2020年 ノルウェー
・Mino Cinelu & Nils Petter Molvær – Indianala (2020年 ノルウェー、カリブ)
・Girls In Airports - Randall's Island(2015年 デンマーク
・Sonata Islands Kommandoh - Prima Lamentazione (2018年 イタリア)

Black String - Sureña (2019年 韓国)

日本の琴に似たお箸のような棒で弾く楽器は、韓国の伝統楽器コムンゴ(거문고・玄琴・玄鶴琴)。ベースを指で弾いたときのような、柔らかくも力強い低音。弦の押さえ方、振るわせ方は日本の琴と共通点がある。爪ではじくのではなく、棒で弾くことの優位性もあり、津軽三味線のようなメロディもある。横笛は、尺八に似た音からフルートのような高音まで、出る音が幅広い。今回のミックスの中で、特にお気に入りの曲。

Okay Temiz & Johnny Dyani - Gece | The Night(1976年 南アフリカ・トルコ)

1976年イスタンブールでの南アフリカジャズのセッション。当時トルコで1000部しかリリースされなかったものを、リマスター。下記のリンク先から、当時の楽器を演奏しているスタジオ?の写真がある。いかにもトルコらしい石造りの部屋。

Ilhan Ersahin - WONDERLAND - Karşı Yaka (Live at Yakup 2 Restaurant Teras)(2014年 トルコ)

アラブ色が強いトルコクラリネットが主役。Hüsnü Şenlendiriciは、祖父と父親もクラリネットとトランペット奏者で、5歳から習い始めたトルコで有名なクラリネット奏者。クラリネットに重なるビンテージっぽいキーボードの音が良い。動画はイスタンブールのレストランのバルコニーで収録されたもの。

Open Source Trio - Metal Jazz (2014年 ブルガリアキュラソー・ドイツ)

ジャズ・クラシック・ファンク・ラテン・民族音楽・ロック・電子音楽などに様々な音楽に影響を受けたバックグラウンドの異なるブルガリアキュラソー・ドイツ出身者によるジャズトリオ。

Yinon Muallem - Back Home (イスラエル

トルコの楽器ウード奏者、Yinon Muallem。イラク出身の両親の元、イスラエルで生まれ育つ。テルアビブ大学を卒業後、音楽の道へ。中東のパーカッションから始め、オスマントルコ音楽の美しさに触れたことでウードを学び、自身の音楽を作曲し始めた。ギリシャアメリカ・アゼルバイジャン・インドなど多様な国籍のアーティストとコラボしている。
Yinon Muallem - The Center for the Humanities

ウードとピアノが同じメロディを順番に奏でて、対話するように掛け合いをしている。同じメロディの繰り返しが、ハウスミュージックようで、体が動く。

Shubh Saran - Slip (2017年 アメリカ、カナダ、バングラディシュ、メキシコ)

6か国で育ったShubh Saranが組む多国籍なバンド。音楽は、モダンジャズ・ネオソウル・ロック・クラシック・現代インド音楽を融合させている。

Mino Cinelu & Nils Petter Molvær - SulaMadiana (For Manu Dibango)(2020年 ノルウェー、カリブ)

Mino Cineluは、父親がカリブ海マルティニーク出身のフランス人アーティスト。Nils Petter Molværはノルウェーのトランペット奏者。タイトルの『SulaMadiana』は、Nils Petter MolværのルーツがあるノルウェーのSula(スーラ)島とMartinique(マルティニーク)島の名前を繋げたも。Cineluはこの作品について、「私たちはお互いの文化を知っています。私たちは橋や交差点を見つけ、この道を歩くとき同じ方向へ導かれます。」と述べている。
Cineluの声にも癒されるが、トランペットがこういう包み込むような柔らかい音が出せるとはあまり認識できていなかった。

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