Agust D 『대취타』”欧米並み”の終焉

悠長にブログなんか書いている場合では、全くなくなってしまった。生きていくのは大変やね。後からその時の印象や感動を書くのは難しいので、息抜きがてらに。

グローバルだけではなく、様々な国のトップ100にも入っているAgust D 『대취타』。KPOPに疎く、ググった結果、BTSの人がプロデュースしている新人と理解したが、そうではなくBTSのメンバーの方の別名義だった。子供の頃からアイドルやジャニーズが苦手で、KPOPアイドルのメイクもそうで興味がなかった。色気は感じないのだが、映像とラップのクオリティに、すっかり感心してしまった。

西洋の真似事、欧米並み

今までずっと感じてきた、アジア人が西洋の音楽を頑張ってやってる感がない。日本のポップスやダンスミュージックは、黒人や白人に憧れて、本場に近づけるようにやってきた部分が多いのではないか。(RIRIの育て方、売り出し方を見ていると悲しくなる。)この作品は、韓国語で韓国のアイデンティティで勝負していて、欧米並みというのとは違う。世界の(若い)人々が「韓国人が、かっこいい」と思うのが、これを観てすっと腑に落ちた。(ちなみに私は、国籍で人を差別はしないけれど、韓国人と仕事をしたり、韓国に住んでいる韓国人と話し、ソウルから釜山まで旅行もした上で、韓国の問題点や悪いところも知っているし、何でもかんでも韓国を見習え、教えてもらえというのは違うと思ってる。)

ラップ

私が音楽を好きになる基準は、メロディ。ラップは、よほどリリックに個性があれば。もちろん韓国語はわからず、リリックの内容を知る前だったらが、ラップがかっこいいと初めて思えた。英語や日本語のラッパーの私が思っているラップとは、別物に感じた。ラップって、こんなに表現豊かなものだったのかと。力強く速いだけではない、豊かなバリエーションによる表現力。ヒットメーカーに作ってもらったリリックを、ラップの上手なイケメンがラップしているのではなく、本人から溢れ出る自信が体の外に飛び出している。例えば、BLACK PINKなんかだと、スタイルもよくて歌やダンスのトレーニングもしていて上手いのだけど、インタビューを聞くと中身とは乖離がある。実際Agust D(SUGA)さんがどういう人か、どうやって作り上げたかは、知らないのだが。
英語やスペイン語である必要なんてないことを証明している。海外進出のために英語とか発音を良くしないととか、未だにそんなアドバイスをする人は時代遅れの人だから無視。ミュージックビデオのグローバルチャートの言語の割合を見たことあるのか。若い日本人は、日本を恥ずかしく思い、愛国=差別と認識している人が多いように思う。ルーツやアイデンティに誇りを持つことは、悪いことではないんだけどなぁ。

カメラワーク

これは本当に、ジャニーズも日本の音楽業界も、もっともっと研究してほしいところ。BTSだから予算も莫大なんだろう。でも、ベトナムのダンスコレクティブでも、動きのある撮り方はしている。ダンス寄りの音楽のミュージックビデオは、大胆な寄りと引きが入っている。

(カメラはクレーンかと思っていたら、人力でびっくり)

日本のアイドルのミュージックビデオは、遠くからで小さく見えるものが多い気がする。そして、焦点となる中心がずれない。例えば左右に動く映像でも、主役が真ん中からずれない。だからカメラの動きが早くても酔わない。Stray Kids 『神메뉴』のカメラワークと振り付けも感心したので、そこで詳しく。

振付、動きの大きさ

CochellaでのPerfumeのダンスが動きが小さいなどと言われたが、KPOPの動きが大きく、それが基準になってきているからじゃないかだろうか。お寺の前の石畳で踊っているのすごいよね。あんなに飛ぶのね。太極拳の剣術ような動きは、顔が暗くてご本人かわからないが、安定してきれいな型をしている。

日本のこと

神社仏閣、仏像、着物、和食、和楽器、これだけ日本独自の豊かな文化があって、ダンスを愛好し上手い人もいて、なぜこういうの作品ができなかったのかと歯がゆい。良くも悪くも、激しい韓国内の競争が、強くしてきたということなのかな。それと、ここまで世界的なブームで、クオリティも高いのに、日本の中ではKPOPや韓流アイドルというカテゴリに押し込めてしまっていること。このあたりを把握し紹介しないで、何がPOPLIFEだよ。日本の音楽批評家やライターにあまり取り上げられていないのは、KPOPカテゴリで分けてしまっているからではないだろうか。グラミー賞の部門名が変更になるが、単に名称の変更という話ではなく、音楽の捉え方にも関係する。ROSALÍA & Travis Scott 『TKN』だって、リリースの時には話題になったものの、まともな記事がないのは、スペイン語の情報まで収集しないと詳しく書けないからかと推測するが、それがネックになって日本で十分に紹介されないのはおかしくない?世界の音楽や音楽メディアに、簡単に無料でアクセスできるようになって、音楽メディアを含めた日本の音楽業界が鎖国状態なのを、すごく感じる。ガラパゴス化して、すごく特異な独自性のある音楽はできるかもしれないけれど、どんどん置いて行かれるデメリットも大きい。

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